昨年からメタバースという言葉をあちらこちらで聞くことが多くなったという方もいらっしゃるかと思います。今回は、メタバースとは何か、メタバースが注目されている理由、メタバースの種類や先行事例などについて解説します。
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1.メタバースとは
メタバース(Metaverse)とは、コンピューターやコンピューターネットワークの中に構築された、現実世界とは異なる、多人数が参加できる仮想空間のことです。
Meta(超越した、異次元の)とUniverse(宇宙、世界)をつなげた造語です。
2021年10月に、Facebook社が、社名を「Meta」に変更して、メタバース事業に大規模投資をすると宣言したことから大きな話題になっています。ただし、厳密な定義はなく、メタバースに対する考え方はそれぞれに異なっており、従来のバーチャル空間、サイバースペースもメタバースの一種として考えることができます。
2.メタバースが注目されている理由
メタバースという言葉、概念は決して新しいものではありません。映画や小説、アニメといったフィクションの中ではもはや古典的な舞台設定のひとつであり、すでにメタバースと呼ぶことができるサービスも多数存在します。それが今、注目されているのにはいくつかの理由があります。
(1)Facebook(現Meta)の大型投資
米国の大手プラットフォーム企業であるFacebookが、社名を「Meta」に変更し、メタバース事業に100億ドル(約1.2兆円)の投資をすること発表しました。これにより、各企業がメタバースに関心を示すようになっています。
Facebookは、全世界で30億人以上の利用者を抱えるSNSですが、若者の間での人気が低下する傾向にあると言われています。また、反トラスト法(独禁法)により、政府から厳しい目を向けられているため、以前のように自由に企業買収をして成長することが難しくなっています。
このような課題を乗り越えるために、メタバース事業に進出をし、すでに『Horizon World』という仮想空間の運営を始めています。
また、メタバースを利用する上で必須となるVRヘッドマウントディスプレイメーカーのOculus(オキュラス)も2014年に買収済みです。
(2)新型コロナのパンデミック
2020年から世界中で広がった新型コロナの感染により、リモートワークやリモート会議が定着しました。
しかし、映像と音声だけでは、複雑な会議をすることは難しいことも多くの人が実感しています。国際的な移動の制限が続く中で、よりリッチなリモートコミュニケーションが求められるようになっています。
また、PC、スマートフォン、Wi-Fi、4G/5Gなどのリモートワーク、リモート教育に必要な機材が広く普及していることも追い風になっています。
(3)要素技術の成熟
メタバースをどのように定義するかにもよりますが、没入感のあるメタバースを利用するには、VR(仮想現実)、エッジコンピューティング、NFT(非代替性トークン)などの技術が必要になります。
このような要素技術が一定水準まで成熟し、個人でも気軽に揃えることができるようになってきました。
例えば、VRヘッドセットとして人気のある「Oculus Quest 2」は、単体で動作することができ、4万円を切る価格で購入することができます。
(4)ビジネスフロンティア
インターネットはすでに成熟して、なかなか投資に適した領域、新サービスに適した領域が見つけづらくなっています。こうした閉塞感がある中で、メタバースは未開拓のフロンティアと認識されています。
そこでは人が集まるだけでなく、経済活動や娯楽活動をすることになるので、さまざまなサービスの提供、広告など、新たなビジネスが多く考えられます。
また、アイディア次第で、小さなスタートアップ企業にも、テクノロジーから距離を置いていた企業にもチャンスがあります。このようなことから、業種を問わず、メタバースへの投資、参入が始まっています。
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3.さまざまなメタバースの種類
メタバースは、Metaが運営する『Horizon World』が最も有名になりましたが、定義、構想にはさまざまなものがあり、『Horizon World』だけがメタバースではありません。メタバースには次のような異なる考え方があります。
(1)VR没入型メタバース
VRヘッドセットを使って、没入するタイプの仮想空間です。自分の分身であるアバターが仮想空間の中でさまざまな活動をします。Metaの『Horizon World』が最も有名なものです。
(2)ARメタバース
世界的な人気となったゲーム『ポケモンGO』を運営するNiantic(ナイアンティック)は、現実世界をメタバース化することを構想しています。ポケモンGOのように、現実世界に仮想の要素を重ね合わせることにより、VRメタバースとは異なった世界を構築しようとしています。
具体的などのようなものになるかはこれからですが、すでにNianticはARメタバースを構築するための開発キットLightshipi ARDKを無料公開しています。
(3)ミラーワールド
ミラーワールドは、現実世界と仮想世界を重ね合わせにするという考え方です。例えば、現実世界で学校の宿題をこなして、仮想世界の学校に行って提出をすると、それが現実世界の学校でも宿題を提出したことになっているというものです。
仮想世界では、距離などの物理法則を無視することができ、都合に合わせて、現実世界か仮想世界かを選択して行動することができるようになります。現実世界での対面のよさを失わずに、仮想世界の拡張性を享受しようという考え方のものです。
(4)デジタルツイン
デジタルツインは、現実世界と寸分違わない仮想世界を構築しようという考え方です。例えば、東京と寸分違わない街を仮想空間に構築します。仮想空間であるために、現実世界ではできないような大規模実験が可能になります。
例えば、どのような津波被害が起きるのかを検証したり、新しいビルを建築して景観にどのような影響ができるかを検証したりすることなどができます。不特定多数が参加するコミュニティ空間とは違って、産業応用が主眼に考えられている仮想空間です。
4.先行するメタバース
メタバースという言葉も概念も決して新しいものではありません。そのため、メタバースには先行事例があります。その中でも有名なものが『セカンドライフ』と『あつまれ どうぶつの森』『フォートナイト』などのゲームです。
(1)『セカンドライフ』
2003年からLinden Lab(リンデンラボ)がサービを始めた仮想空間コミュニティです。VR表現ではなく、2次元表現であることを除けば、現在のメタバースと変わるところはありません。
リンデンドルという仮想空間内で使える通貨も用意され、このリンデンドルは現実の通貨に交換できることから、仮想空間内で経済活動ができると、現在のメタバースと同様に多くの企業が参入をするほど話題になりました。
サービスは現在でも続いていて、近年の新型コロナの感染拡大、デバイスの性能アップ、メタバースの話題になどにより盛り返していますが、一時は「閑散としている」と人気の急落ぶりが報じられたこともあるようです。
現在、メタバースに懐疑的な人たちの中には、『セカンドライフ』と同じように、メタバースもブームが去るのではないかと主張する人もいます。
(2)『あつまれ どうぶつの森』
任天堂のゲーム機「スイッチ」用のゲームです。無人島に家などの生活環境をつくって、友人や周囲の人と交流することを楽しむゲームです。箱庭ゲームとSNSをクロスさせたようなゲームです。発売とともに、新型コロナの感染拡大もあり、大人気になりました。
『あつまれ どうぶつの森』をメタバースと呼ぶかどうかにはさまざまな意見があります。しかし、日本では「メタバースとはなにか」を語る時に、例として挙げると伝わりやすくなることから、よく取り上げられます。
(3) 『フォートナイト』
Epic Gamesが開発したバトルロイヤルゲームです。しかし、ただ戦うだけでなく、クエストをクリアするなど、さまざまな楽しみ方ができるようになっています。
特に人気アーティストのアリアナ・グランデがフォートナイト内でコンサートを開催したことが大きな話題となりました。それ以降、フォートナイトの中で、さまざまなアーティストによるパフォーマンスが行われています。
ゲームをベースにしたメタバースを語るときに最も例として挙げられることの多いサービスです。
(『フォートナイト』は本来敵を倒して生き残るバトルロイヤルゲームで、小学生、中学生に高い人気があった。現在では、キャラクターの外観を変えたり、ゲーム空間内でのイベントに人気が集まっている)
(4)『VRChat』
VRChat社が提供するVRチャット空間です。VRヘッドマウントディスプレイを装着して、アバターを介して、他の利用者と会話を楽しめます。現在、『VRChat』内ではさまざまなイベントが開催されるようになっていて、このようなイベントに参加をするのが楽しみ方のひとつとなっています。
アバターは自由に設定することができ、現実とは違った自分になれることが魅力になっています。すでに、KDDI、ディズニー、テレビ東京、松坂屋などが仮想空間内の仮想イベント「Virtula Market」に出店をし、世界最大級の仮想空間内イベントに育っています。
(VRヘッドマウントディスプレイをつけて楽しむチャットサービスだが、空間内でのイベントに人気が集まり、企業のイベント出展が相次ぐようになっている)
5.まとめ
メタバースとは、コンピューターやコンピューターネットワークの中に構築された、現実世界とは異なる、多人数が参加できる仮想空間のことです。
2021年にFacebook社が社名をMetaに変更し、大規模投資をすると宣言したことから大きな話題になっています。すでに先行するメタバースも存在し、企業の投資、参加が始まっています。
しかし、メタバースの定義はまだ曖昧で、これから無数のメタバースサービスが登場して、競争をしていくことになります。