マージンという言葉は「手数料」という意味で用いられるのが一般的ですが、それ以外の意味で使われることも多い言葉です。今回は、出版、小売、卸、投資などビジネスシーンごとの意味・使われ方を中心に解説します。
【関連記事】「【ビジネス用語一覧】厳選110選|基本をマスターするための例文も紹介」
「もしかしたら仕事頑張りすぎ!? 」... そんな方へ
\無料・登録不要/
『仕事どうする!? 診断』を受ける >
1.マージンとは
マージン(margin)とは、余白、余裕、余地、差などの意味を持った言葉です。
ビジネスの現場では、業種によりさまざまなものを指しますが、多くの場合「利益」や「手数料」の意味で使われます。
言い換えると「もうけ」や「利ざや」であり、収益から費用を差し引いたものと言えます。
ビジネスにおいては、マージンをどう設定するかがビジネス交渉の重要なポイントになることも少なくありません。
なお、医療業界では腫瘍切除の際、一緒に取り除く周囲組織のことをマージンと呼ぶことがあります。また、歯科治療においても、詰め物などの人工物と歯の境界を示す言葉としてマージンが使用されています。
【関連記事】「【マネタイズとは】もともとの意味やマネタイズのさまざまな手法を解説」
2.出版・デザイン業界のマージンは「余白」
出版・デザイン業界でのマージンは、余白という意味で使われることが多いです。
2.1.印刷のずれに対応するためのマージン
印刷物は印刷機という機械で印刷をします。
この時、精密に紙面の中央に印刷できるとは限りません。紙送りの際の摩擦などで、印刷面が多少ずれてしまうことも起こります。
その場合でも、印刷物としての用を成すように、あらかじめ印刷面の周囲に余白を設けておきます。
これが余白=マージンです。
現在の印刷機は精密になり、印刷面がずれてしまうようなことは滅多に起こりませんが、この習慣が残り、マージンがあった方が見やすいことから、今日でも印刷物にはマージンを設定するのが一般的です。
2.2.UIとして重要な役割を果たすマージン
また、ウェブページを制作する場合も、CSS(Cascading Style Sheets)で、上下や左右のマージンを設定するのが一般的です。
特に左右のマージンがあることで、左右方向にはもう表示される要素がないことがユーザーに伝わるため、UI(ユーザーインタフェース)としてもマージンは重要な要素になっています。
(ワードなどで書類をつくる時も、文字や図のある部分の外側に空白をつくるのが一般的。この余白部分がマージンと呼ばれる)
2.3.出版・デザイン業界におけるマージンの使用例
余白の意味で使用されることが多い出版・デザイン業界では、以下のような例が挙げられます。
- 配置する要素にあわせたマージンを適用してください
- 四隅のマージンが狭すぎると、窮屈で読みにくい印象を与えてしまいます
- CSSを使用して適切なマージンを設定しましょう
【関連記事】「【パラメーターとは】意味や各分野での使われ方をわかりやすく解説」
3.小売業界のマージンは「粗利」
小売業界でのマージンは、粗利の意味です。
3.1.利益の元になるマージン
粗利とは販売価格から仕入れ価格(または原価)を引いた大雑把な利益のことです。
例えば、40円で仕入れたキャベツを120円で販売したら、
- 120円ー40円=80円
80円がマージン=粗利になります。
ただし、マージン、粗利は「儲け」ではないことに注意をしてください。なぜなら、仕入れ価格の他に、店舗の家賃や光熱費、人件費なども必要だからです。
このような経費が70円かかったとすると、本当の利益は、
- 120円ー40円ー70円=10円
となり、10円が利益となります。
3.2.粗利がマージンと呼ばれる理由
では、なぜ粗利をマージンと呼ぶのでしょうか。
商売で最も重要なことは、経費を抑え、利益を最大化することです。それは企業努力と呼ばれます。
しかし、仕入れ値は自分たちの努力では調整ができにくいです。生産者が努力をして仕入れ値を安く抑えるように交渉をすることはできますが、自分たちの努力で仕入れ値を直接下げることはできにくいです。
一方で、マージン(粗利)の部分は、自分たちの努力で調整が可能です。節電をして光熱費を抑えたり、人員整理や勤務シフトを調整したりして人件費を抑えることができます。
このように、マージンの部分は調整をして、利益を増やすことが可能です。
この企業努力による改善の余地がある部分というニュアンスで、マージンと呼ばれます。
(小売業では、粗利の部分をマージンと呼ぶ。粗利は価格から仕入れ値(原価)を引いた部分で、利益と諸経費を合わせたもの。企業努力をすることで諸経費を小さくすることで、最終的な利益を大きくすることができる)
3.3.小売業界におけるマージンの使用例
粗利の意味で使用されることが多い小売業界では、以下のような例が挙げられます。
- 仕入価格に30%のマージンを上乗せして販売しましょう
- この価格であれば、十分なマージンを取ることができるでしょう
- 円安の影響でマージン率に大きな変化が見られます
【関連記事】「【ODMとは】OEMとの違いやODMの身近な例、メリットとデメリットを解説」
4.卸業界でのマージンは「手数料」
卸業者、生産者、製造者がマージンという用語を使用する際は「手数料」であることが多いです。
4.1.販売マージンとは
販売マージンとは販売手数料のことになります。
先ほどの原価40円の白菜を120円で販売した場合、生産者は40円で出荷し、消費者に120円で売れたことになり、生産者から見ると、差額の80円が販売手数料=販売マージンとなります。
卸業者、生産者、製造者は、各小売店の販売マージンを見て、販売マージンの少ない小売店への出荷数を増やすことで利益を最大化できます。
販売マージンが60円と少ない小売店であれば、白菜は100円で消費者に販売されることになり、多く売れる可能性があるからです。
4.2.流通マージンとは
流通マージンとは流通(卸)の手数料です。
直接小売店に出荷するのではなく、卸業者を通じて、小売店に卸す場合に使われる言葉です。
例えば、卸業者に40円で出荷をし、卸業者は60円で小売店に卸し、小売店は130円で消費者に販売をした場合、卸業者の粗利(60円ー40円=20円)は、生産者、製造者から見た場合、流通マージンと呼ばれます。流通させるのに必要な手数料という意味です。
これも流通マージンが小さい卸業者を探すことで、生産者、製造者は利益を最大化させることができます。
4.3. バックマージンとは
卸業者がある製品を小売店に100円の卸価格で卸していましたが、販売数が落ちてきたため、卸価格を90円に下げたとします。
小売店では、仕入れ価格が下がるため、消費者への販売価格も下げることができ、数が売れるようになります。
家電製品ではこのようなことが頻繁に起こります。新製品の間は高くても売れますが、時間が経って新製品とは言えなくなる頃には価格を安くしないと売れなくなるからです。
しかし、これはメーカーにとって好ましいことだとも言えません。なぜなら、突然価格が大きく下がると製品に何か問題でもあったのではないか、不人気製品だから値引きをするのではないかと誤解をされる可能性があります。
また、価格が高い間に買った消費者からは不満を持たれることになります。メーカーとしては、価格の変動ができるだけ少なく、徐々に価格が下がっていく状態が好ましいのです。
このため、100円で卸した小売店に対し、「あの卸値は高すぎました」と言って、すでに受け取った卸代金を遡って一部を返却します。これがバックマージンです。バックマージンのバックとは時間的に遡って、過去の取引に対して、事後にマージンを支払うという意味です。
これは日本独特の業界慣行となっているため、小売店側では100円で卸してもらう時点から、どの程度のバックマージンが後ほど得られるかはわかっています。このバックマージンも考慮に入れて、新製品の販売価格を決めます。
これにより、新製品は標準価格よりも安く販売することができ、製品の価格は緩やかに推移をしていくことになります。業界によっては、販売奨励金、販売報奨金などの形で、実質的なバックマージンを渡し、値引きを促すこともあります。
4.4.卸業界におけるマージンの使用例
手数料の意味で使用されることが多い卸業界では、以下のような例が挙げられます。
- 利益が少ないのは、マージンを取られ過ぎている可能性があります
- 取引先に出向いて、マージンをもらうための交渉を行いました
- 生産者の利益確保のためには、流通マージンを見直した方がいいでしょう
【関連記事】「【スキームとは】「〇〇スキーム」として使われる際の意味やプランとの違い」
5.投資業界でのマージンは「証拠金」
FX(外国為替証拠金取引)などの取引相場でのマージンは証拠金のことです。
FX取引などでは、証拠金取引という仕組みがあり、持っているお金以上の取引をすることができます。
そのため、すぐに用立てられる資産が少なくても取引をすることができ、利益を得られる可能性があります。
もちろん、失敗した場合には損失を出すことになります。
5.1.証拠金取引とは
証拠金取引とは、業者に証拠金を預け、その額以上の取引が行える仕組みです。
例えば、FX(外国為替証拠金取引)の場合、1万円を持っていて、ドル円相場が1ドル100円だったとすると、銀行などの両替では(手数料を考えないと)、100ドルしか購入することができません。
しかし、現在のFXでは、25倍までの取引が可能です。つまり、1万円しかなくても2,500ドルまで購入することができます。
5.2.証拠金取引の利益とは
ここで1ドルが110円にあがったので、円を買い戻すと利益が発生します。1万円を持っていて銀行で両替した場合は100ドルしか購入できないので、利益は次のようになります。
- 110円×100ドルー1万円=1,000円
1,000円の利益がでます。
一方、25倍の最大レバレッジでFX取引をした場合、利益は次のようになります。
- 110円×2500ドルー1万円=26万5,000円
1万円の元手で、26.5万円の利益を出すことができました。
5.3.強制決済とは
しかし、これはあくまでもうまくいった例で、そうでないことも起こりうるのが取引相場です。
証拠金取引では、小さな元手で大きな利益をねらうことができますが、逆に動くと、小さな元手で大きな損失が出ることになります。
そこで、FX取引では、強制決済(ロスカットルール)という仕組みがあります。
例えば、1ドルが99円に下がったとします。これは投資者にとって損が出ている状態です。
証拠金に基づいて、レバレッジ25倍でドルを購入し、100円×2,500ドル=25万円相当の資産を持っていましたが、これが99円になると、99円×2,500ドル=24万7,500円相当の資産となり、購入時から2,500円分の損が出ています。
もし、この時点で決済(日本円に買い戻す=取引の清算)をすると、証拠金の1万円から損分を支払い、証拠金は7,500円に減ってしまいます。とは言え、証拠金の範囲の中で清算ができます。
しかし、もっと値下がりして1ドル96円になってしまうと、96円×2500ドル=24万円となり、購入時から1万円の損になります。この時点で決済をすると、証拠金はゼロになってしまいます。さらに、これ以上、値下がりをすると証拠金だけでは清算ができなくなってしまいます。
それでも取引を続けられる仕組みであると、投資者は借金を背負うことになり、健全な投資としてはさまざまな問題を引き起こすことになります。
そこで、FXでは、証拠金では精算できないほどの損が出る状況になると、自動的に強制決済させるというルールがあります。
この仕組みがあるために、FX取引は、小さな元手で大きな利益をねらうことができ、悪い方は証拠金を失うことをあきらめれば済むというストッパーがあるため、比較的安全な投資、相場取引として多くの人に利用されるようになっています。
5.4.証拠金がマージンと呼ばれる理由
この証拠金は後から追加をすることができます。1万円を追加して、2万円にすると、1ドルが92円に下がるまで強制決済はされません。92円に下がっても、証拠金の2万円を失うことで清算ができるからです。
このように証拠金が、取引を続けられる幅を決めています。そこで、証拠金がマージンと呼ばれます。
なお、ここで紹介したレバレッジ、強制決済ロスカットルールはあくまでも仕組みを説明するためのもので、実際はより細かいルールが定められています。具体的には各取引業者の説明をご参照ください。
5.5.投資業界におけるマージンの使用例
証拠金の意味で使用されることが多い投資業界では、以下のような例が挙げられます。
- レバレッジをかければ、10万円のマージンで100万円の取引が可能です
- 同じ取引でも、証券会社によってマージンは異なります
- マージンが一定レベルを下回ると、マージンコールが発生します
【関連記事】「【アルゴリズムとは】日常での活用事例や覚えておきたいアルゴリズムを紹介」
スキルアップを目指すなら
まずはプロにご相談ください
マイナビエージェントについて詳しく知る >
6.まとめ
マージンとは、一般的に「余白、余裕、余地、差」などの意味を持った言葉です。
ビジネスシーンでは「利益、利ざや」を指すことが多いものの、「調整可能な部分」といった意味で用いられることもあります。
業界ごとに使い方は大きく異なるため、それぞれの意味を正しく理解したうえで活用することが大切です。
\転職するか迷っていてもOK/
マイナビエージェントに無料登録して
転職サポートを受ける