【エバンジェリストとは】企業での業務や役割、エバンジェリストを置く利点

【エバンジェリストとは】企業での業務や役割、エバンジェリストを置く利点

「エバンジェリスト」という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、詳しくは知らない方もいらっしゃるかと思います。今回は、エバンジェリストの企業での業務や役割、アンバサダーやKOLとの違いなどについて解説します。

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1.エバンジェリストとは

エバンジェリスト(Evangelist)とは、主にIT企業で、自社の製品やサービスを中立的な立場でわかりやすく消費者に伝える職種のことです。元々は伝道師の意味で、大衆に向けて啓蒙普及活動をする人のことを指します。

2.企業での職種としてのエバンジェリストの起源

エバンジェリストという職種が企業で生まれたのは、1984年のアップル社であると言われています。

当時、アップルはパーソナルコンピューターの開発をしていました。しかし、当時は、コンピューターというのは個人が使うものではなく、大学や研究機関が使うものというのが常識でした。

そのため、個人でコンピューターを使うと、どのような素晴らしい世界が拓けてくるのかを伝える業務をするために生まれたのがエバンジェリストという職種です。

このエバンジェリストは、マイクロソフトを始めとする多くのIT企業が採用をしていきました。また、現在では非IT企業でもエバンジェリストに相当する仕組みを導入してマーケティングに活かすようになっています。

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3.エバンジェリストの主な業務

エバンジェリストは、主に次のような業務を行なっています。

(1)セミナーなどでのプレゼンテーション

自社開催、業界開催などのセミナーに演者として積極的に登壇し、自社の製品やサービスの素晴らしさを聴衆に伝えます。

宣伝とは異なりますので、中立的な視点、市場を俯瞰した視点から伝えます。

(2)デモンストレーション

自社の製品やサービスのデモンストレーションを行います。対象は顧客であることもあれば、不特定多数の消費者であることもあります。

異なる対象別に、相手がどのようなことを知りたがっているかを考えて、デモンストレーションのプログラムを考える必要があります。

(3)メディア、SNSなどでの発信

常日頃から、メディア、SNSを使って、消費者に製品やサービスの知識を伝えるのも大きな役目のひとつになっています。

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(4)インナーマーケティング

社内セミナーなどで、製品やサービスに対する啓蒙活動を社員に向けて行います。

社員は製品やサービスに関する専門知識は持っているので、消費者側の視点、社会全体からの視点など、新たな視点をもたらすのがねらいです。

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4.エバンジェリストを置くメリット

エバンジェリストという職種を置くことで、企業には次のようなメリットが生まれます。

(1)消費者の信頼を得ることができる

企業の発信はどこまでいっても企業視点の発信になりがちで、消費者から見れば、企業に都合のいいことしか発信しないのではないか、という疑念が拭いにくいです。

一方、エバンジェリストは中立的視点、俯瞰的視点で情報を発信します。これにより、消費者の信頼を得ることができ、自社の製品やサービスに対する消費者の理解が深まります。

(2)潜在顧客を掘り起こすことができる

企業が宣伝活動、広報活動を行なっても、興味がない人にまでアプローチをすることはできません。しかし、エバンジェリストは俯瞰的な視点で情報を発信します。

例えば、企業向けのITサービスであれば、その宣伝をするのではなく、例えば「中小企業のDXを成功させるポイント」などというプレゼンテーションを行います。

これにより、企業の製品、サービスを知らなくても、知識を得ることを目的にプレゼンテーションを見る人が増え、潜在顧客を掘り起こすことができます。

(3)社員の自社製品に対する理解を深めることができる

社員は、自社の製品やサービスを毎日扱い、深い専門知識を持っていますが、往々にして自分の業務に関わる専門知識に限定されがちです。

そこにエバンジェリストが消費者視点、社会視点でインナーマーケティングを行うことで、盲点となっていた気づきを与えることができます。社員の理解は深く、広くなり、日常の業務にも好影響を与えることができます。

(4)人材採用にもいい効果を与える

エバンジェリストは、聴衆を前にしたプレゼンテーションを行い、メディアにも取り上げられることが多く、いわゆる花形職種のひとつです。

新卒者、転職者に対して、夢のある企業、先進的な取り組みをする企業という印象を与えることができ、採用にもいい影響を与えることができます。

また、自社製品、サービスを深く理解した人が応募をしてくれることも期待できます。

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5.エバンジェリスト設置の課題

エバンジェリストを設置するにあたって、最も難しいのは業績評価の基準を設定しにくいということです。営業であれば売上というわかりやすい評価基準があります。広告であれば広告効果が測定できます。

しかし、エバンジェリストが目的とする啓蒙、理解というのは測定が非常に難しい領域です。そのため、他部門からは常に「不要な職種なのではないか」という疑問を持たれることもあります。

そのようなことにならないように、あらかじめ、営業、広報、広告を含めた企業の情報発信活動の戦略を定めておき、その中でエバンジェリストがどのような働きをすべきなのかという定義を明確にしておく必要があります。

6.営業職、広報職との違い

似た職種に営業職、広報職があり、エバンジェリストは時によりこの2つの職種と混同されることもあります。しかし、視点の置かれている場所=視座が大きく異なっています。

(1)営業職との違い

営業職の視座は顧客にあります。顧客が解決しようとしている課題に対して、自社製品、サービスがどのように貢献ができるかを考え、解決策を提案し、自社製品を販売します。

(2)広報職との違い

広報職の視座は企業にあります。メディアなどを通じて、企業の考え方や製品、サービスの情報を提供します。企業からの発信なので、その内容には大きな責任が発生します。

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(3)中立視点のエバンジェリスト

エバンジェリストの視座は中立です。ライバル製品、サービスとも公平に比較をし、常に業界全体、社会全体を俯瞰した視点で自社製品を語ります。それにより、消費者からの信頼を得ることができます。

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(エバンジェリスト、営業、広報は、向き合う対象が異なっている)

7.アンバサダー、KOL、KOCとの比較

エバンジェリストは中立的な立場から消費者に向けて啓蒙活動をしますが、あくまでも企業からの発信であることに変わりはありません。

そこで、近年では、企業の外部にエバンジェリスト的な役割をしてくれる人を求めるようになってきています。厳密な定義はないのもの、アンバサダー、KOL、KOCなどがあります。

(1)アンバサダー

アンバサダーとは大使のことで、日本語では宣伝大使と訳すとわかりやすくなります。企業の担当者で消費者の間での認知度の高い人、あるいは製品、サービスに関連をする芸能人、評論家などの著名人などを任命し、啓蒙活動を手伝ってもらいます。

また、消費者グループの中のどなたかをアンバサダーに任命し、そのグループ内での啓蒙活動を担ってもらうこともあります。企業はアンバサダーに対して報酬、情報提供などを行います。

(2)KOL

KOLというのはKey Opinion Leader(重要なオピニオンリーダー)のことで、自社の製品、サービスに対する専門知識を持っている評論家、著名人などで、その人の意見が消費者に対して大きな影響力を持っている立場の人です。企業はKOLに対して、報酬、情報提供などを行います。

(3)KOC

KOCというのはKey Opinion Customer(重要なオピニオン顧客)のことで、他の消費者に対して影響力を持っている消費者、顧客のことです。企業はこのような顧客、消費者に情報提供、場合によっては製品提供を行い、SNSなどで発信をしてもらいます。

KOCの影響力は、KOLに比べて小さくなりますが、その一方で深い影響を与えることが可能であることから、近年、注目されている考え方です。企業はKOCに対して、情報提供、活動支援などを行います。

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(エバンジェリスト、KOL、KOCの視点の比較。エバンジェリストは中立または企業と消費者の両方の視点を持つ。アンバサダー、KOLは中立から消費者寄り。KOCは消費者の視点。営業は消費者の視点に立って自社の製品やサービスを販売する)

8.まとめ

エバンジェリストとは、自社の製品やサービスを中立的な立場でわかりやすく消費者に伝える職種です。消費者の理解を深め、潜在消費者を掘り起こすことに貢献できます。

現在では、エバンジェリストだけではなく、より消費者に近いアンバサダー、KOL、KOCなどの情報発信力も合わせて活用する考え方が広がっています。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)
テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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