新卒の初任給は平均どれくらい?手取りの計算方法や控除額も解説

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新社会人として初めて受け取る初任給を、心待ちにしている新卒社員の方も多いでしょう。しかし、実際の手取り額は、税金や保険料が引かれて思ったよりも少なかったという場合もあります。

そこで本記事では、新卒の初任給の平均額について解説し、手取り額の計算方法や控除額についても詳しく説明します。新卒の初任給が手取りでどれくらいになるのかを、あらかじめ知っておきたい方はぜひ最後までご覧ください。

【関連記事】「手取りとは? 年々減っている!? 計算方法や年代別平均額を紹介!」

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1 新卒がもらう初任給の平均額は?

就職活動を行う学生や入社したばかりの新卒社員にとって、初任給の平均額は大変気になる情報です。ここではまず、初任給とは具体的にどんな給料かを解説し、手取り額が支給額のおおよそ何割程度になるのかを説明します。

1.1 そもそも初任給とは

初任給とは、新入社員が最初に受け取る給与のことです。初任給には基本給に加えて、通勤手当や住宅手当などの各種手当が含まれます。初任給の支給日は企業によって異なるものの、入社した月の月末や翌月の月初が一般的です。

1.2 初任給と手取りの違い

初任給から所得税、住民税、社会保険料が差し引かれた後の金額が、実際に受け取る手取り額です。つまり、手取り額は初任給の額よりも少なくなります。

企業が明示した初任給の額に魅力を感じて入社したものの、思った以上に手取り額が低くてがっかりしたというケースも少なくありません。そのため、どの程度の手取り額になるのかを、予め確認しておくことが重要です。

1.3 初任給の手取りは額面の約97%

通常、初任給からは所得税と雇用保険が引かれるため、実際受け取る初任給の手取り額は額面の約97%程度だと言われています。つまり、初任給20万円の手取り額は、約19万4,000円程度になる計算です。

ただし、2か月目の給与からは健康保険料と厚生年金保険料も引かれます。また、2年目からは住民税も引かれるため額面のおよそ75~85%となり、初任給の手取りよりも少なくなる可能性があります。

【関連記事】「新卒のボーナス平均額は?一年目の夏・冬はいくらもらえる?」

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2 【項目別】新卒初任給の手取り平均額

ここからは、令和5年に厚生労働省から公表されたデータを元に、項目別の新卒初任給平均額を紹介します。なお、初任給調査は令和元年をもって終了しているため、ここでは「新規学卒者」または「20~24歳」のデータを参照しています。

また、一般的な初任給の手取り割合である97%で計算したおおよその手取りと、2年目の手取り割合である75~85%で計算した手取りの平均額もまとめたので、ぜひ参考にご覧ください。

【出典】厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

2.1 【学歴別】新卒初任給の手取り平均額

まずは、「新規学卒者」のデータを元に、高卒、専門卒、大卒など学歴別の平均額を紹介します。

最終学歴初任給平均初任給のおおよその手取り平均
(初任給の97%で計算)
2年目のおおよその手取り平均
(初任給の75~85%で計算)
高校 186,800円 181,196円 140,100円~158,780円
専門学校 214,500円 208,065円 160,875円~182,325円
高専・短大 214,600円 208,162円 160,950円~182,410円
大学 237,300円 230,181円 177,975円~201,705円
大学院 276,000円 267,720円 207,000円~234,600円

高卒と大学院卒の初任給を比較すると、約9万円ほどの差があることがわかります。理由として、専門的な知識を身につけているとされる大卒や大学院卒の方は、より責任ある仕事を任される機会が多いことが挙げられます。

2.2 【産業別】新卒初任給の手取り平均額

厚生労働省が公表している16個の産業別に、「20~24歳」のデータを参照して、それぞれの平均額を紹介します。

産業初任給平均初任給のおおよその手取り平均
(初任給の97%で計算)
おおよその手取り平均
(初任給の75~85%で計算)
鉱業,採石業,砂利採取業 243,900円 236,583円 182,925円~207,315円
建設業 233,500円 226,495円 175,125円~198,475円
製造業 207,800円 201,566円 155,850円~176,630円
電気・ガス・ 熱供給・水道業 225,300円 218,541円 168,975円~191,505円
情報通信業 243,100円 235,807円 182,325円~206,635円
運輸業,郵便業 225,000円 218,250円 168,750円~191,250円
卸売業,小売業 232,800円 225,816円 174,600円~197,880円
金融業,保険業 229,700円 222,809円 172,275円~195,245円
不動産業,物品賃貸業 232,500円 225,525円 174,375円~197,625円
学術研究,専門・技術サービス業 233,600円 226,592円 175,200円~198,560円
宿泊業,飲食サービス業 206,500円 200,305円 154,875円~175,525円
生活関連サービス業, 娯楽業 215,700円 209,229円 161,775円~183,345円
教育,学習支援業 224,000円 217,280円 168,000円~190,400円
医療,福祉 232,500円 225,525円 174,375円~197,625円
複合サービス事業 202,600円 196,522円 151,950円~172,210円
サービス業(他に分類されないもの) 221,300円 214,661円 165,975円~188,105円

平均額が最も高いのは「鉱業,採石業,砂利採取業」の24万3,900円、最も低いのは「複合サービス事業」の20万2,600円で、4万円以上の差があります。

2.3 【企業規模別】新卒初任給の手取り平均額

常用労働者1,000人以上を「大企業」、100~999人を「中企業」、10~99人を「小企業」と区分して、それぞれの平均初任給額を紹介します。なお、ここでも「20~24歳」のデータを参照します。

企業規模初任給平均初任給のおおよその手取り平均
(初任給の97%で計算)
おおよその手取り平均
(初任給の75~85%で計算)
大企業 234,000円 226,980円 175,500円~198,900円
中企業 220,900円 214,273円 165,675円~187,765円
小企業 214,700円 208,259円 161,025円~182,495円

事業規模が大きく安定した収益を得やすい大企業は、中小企業よりも初任給が高い傾向です。また、より優秀な人材を集めるために、初任給を高くしている企業もあります。

2.4 【都道府県別】新卒初任給の手取り平均額

初任給は都道府県別に見てもかなりの違いがあります。令和元年に厚生労働者が公表したデータをランキングにすると、上位と下位の都道府県は以下の通りとなります。

順位都道府県初任給平均初任給のおおよその手取り平均
(初任給の97%で計算)
おおよその手取り平均
(初任給の75~85%で計算)
1 東京都 220,500円 213,885円 165,375円~187,425円
2 千葉県 211,700円 205,349円 158,775円~179,945円
3 神奈川県 210,800円 204,476円 158,100円~179,180円
4 埼玉県 210,400円 204,088円 157,800円~178,840円
5 愛知県・大阪府 210,100円 203,797円 157,575円~178,585円
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45 秋田県 190,100円 184,397円 142,575円~161,585円
46 宮崎県 188,000円 182,360円 141,000円~159,800円
47 沖縄県 175,000円 169,750円 131,250円~148,750円

大企業が集まりやすい都市部では、初任給も高い傾向です。また、住宅費などの物価が地方より高いことも、都市部の初任給が高い理由として挙げられます。

【出典】厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」

【関連記事】「年収とは?手取り・所得との違いや確認方法を紹介!」

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3 給与から引かれる項目

ここからは、実際に給与額面から引かれる項目について解説します。初任給からひかれるもの、2か月目からひかれるもの、2年目からひかれるものとそれぞれ異なるため、しっかり確認しておきましょう。

3.1 新卒の初任給から引かれる項目

新卒の初任給からは、基本的に所得税と雇用保険が引かれます。それぞれの内容については以下の通りです。

3.1.1 所得税

所得に対して課される国税です。収入から必要経費や各種控除を差し引いた「課税所得」に基づいて計算されます。日本では累進課税制度を採用しているため、所得が上がるほど高い税率が適用されます。

①課税対象支給額-社会保険料
②給与所得の源泉徴収税額表で、①で出た金額と扶養人数を当てはめて確認する

所得税には2037年まで、基準所得税額の2.1%が復興特別所得税として加算されます。

【出典】国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(令和 6 年分)」
【出典】国税庁「個人の方に係る復興特別所得税のあらまし」

3.1.2 雇用保険料

失業した場合や育児・介護休業を取った場合に、一定の給付金を受給するために支払う保険料です。原則として、週20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みがある方が支払いの対象者です。

額面給与額×雇用保険料率(0.6%)

従業員が負担する令和6年度の雇用保険料率は0.6%です。

【出典】厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率について」

3.2 2ヵ月目の給与から引かれる項目

新卒2か月目の給与からは、上記の所得税と雇用保険に加えて、健康保険料と厚生年金保険料が引かれます。また、企業によっては労働組合費や、社員旅行の積み立て資金が引かれ始める場合もあります。

3.2.1 健康保険料

病気やケガの際に、医療費を一部負担してもらうためのものです。保険料は収入に基づいて計算されますが、保険料率は加入する保険組合によって異なります。会社員の場合は給与から天引きされるのが一般的です。

標準報酬月額×健康保険料率÷2

健康保険料率は保険組合によって異なるため、自分が加入中の保険組合で確認してください。健康保険料は企業と従業員が折半で納付します。

3.2.2 厚生年金保険料

厚生年金保険制度に加入するために支払う保険料です。厚生年金保険とは、老後の生活資金を確保するための重要な社会保険制度の一つであり、強制適用事業所で働く70歳未満の方は、原則として必ず加入しなければなりません。

標準報酬月額×厚生年金保険料率(18.3%)÷2

令和6年度時点の厚生年金保険料率は、18.3%で固定されています。厚生年金保険料も、企業と従業員の折半です。

【出典】日本年金機構「厚生年金保険料額表」

3.2.3 労働組合費や旅行費の積立など 

労働組合が、労働条件の維持や改善を求めて活動を行う際に使われる費用が「労働組合費」です。一部の企業では、毎月決まった額の労働組合費が給与から天引きされる場合もあります。

また、年に1回の社内旅行のための積み立て費用が引かれるケースもあるので、税金や保険料以外に何が引かれるのかを予め確認しておきましょう。

3.3 2年目からは住民税が引かれる

住民税とは都道府県や市区町村などの地方自治体が、個人や法人の所得に対して課す地方税のことです。住民税は前年の所得に基づいて税額計算が行われるため、2年目の給与から引かれ始めます。

課税所得金額×税率10%-税額控除額+均等割5,000円

住民税における均等割とは、一定の収入がある方全員に均等に課せられる税金で、標準額は5,000円です。

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4 初任給の手取り額シミュレーション

ここでは、額面が20万円、25万円、30万円の場合を例に挙げて、初任給の控除額と手取り額がいくらになるのかを紹介します。概算ではありますが、2年目の控除額と手取り額もシミュレーションしたので、一例として参考にしてください。

4.1 額面が20万円の場合

額面が20万円の場合の、おおよその控除額と手取り額は以下の通りです。

【初任給の控除額と手取り額】

月収:200,000円
所得税:3,700円
雇用保険料:1,200円
手取り:195,100円

【2年目の控除額と手取り額】

月収:200,000円
所得税:3,700円
雇用保険料:1,200円
健康保険料:10,000円
厚生年金保険料:18,300円
住民税:7,200円
手取り:159,600円

4.1 初任給が25万円の場合

額面が25万円の場合の、おおよその控除額と手取り額は以下の通りです。

【初任給の控除額と手取り額】

月収:250,000円
所得税:5,200円
雇用保険料:1,500円
手取り:243,300円

【2年目の控除額と手取り額】

月収:250,000円
所得税:5,200円
雇用保険料:1,500円
健康保険料:13,000円
厚生年金保険料:23,790円
住民税:9,800円
手取り:196,710円

4.2 初任給が30万円の場合

額面が30万円の場合の、おおよその控除額と手取り額は以下の通りです。

【初任給の控除額と手取り額】

月収:300,000円
所得税:6,750円
雇用保険料:1,800円
手取り:291,450円

【2年目の控除額と手取り額】

月収:300,000円
所得税:6,750円
雇用保険料:1,800円
健康保険料:15,000円
厚生年金保険料:27,450円
住民税:12,700円
手取り:236,300円

【関連記事】「新入社員の有給はいつ付与される?取得する際のマナーや申請方法も」

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5 手取り額アップを目指すには

初任給の手取り額について解説しましたが、手取り額をアップさせるには具体的に何をすればいいのでしょうか。ここでは、実践しやすい手取り額アップの方法を4つ紹介します。

5.1 スキルアップして昇進・昇給を目指す

これまで日本では、多くの企業が勤続年数や年齢に伴い給与が上がる「年功序列制度」を取り入れていました。しかし、近年は仕事の実力や成績を評価して給与に反映する「評価主義」を採用する企業が多くなっています。

そのため、頑張り次第では入社間もない時期から大きな仕事を任されたり、重要なポジションを担ったりする可能性があります。そうなれば、当然ながら昇給のチャンスも多くなるでしょう。

上を目指すには、スキルアップをして具体的な成果を出すこと、また与えられた仕事を確実にこなし、上司からの信頼を得ることも重要です。

5.2 資格を取得して手当をもらう

企業によっては、資格取得が昇進の条件になっていたり、別途資格手当がもらえたりするケースがあります。また、資格を取得して専門的な業務に挑戦すれば、さらなる年収アップの期待が高まります。

特に、IT関連の資格や士業に関わる資格は、需要が高く自分の市場価値を高めることにも繋がります。そのため、職場での評価を上げるだけでなく、将来転職を考えたときにも有利に働くでしょう。

5.3 転職を視野に入れる

「仕事が合わない」「会社の業績が悪化している」「業界全体の成長が弱まっている」という場合は、転職を検討するのも一つの方法です。

年収アップを目指して転職を考える際は、転職エージェントを利用するのがいいでしょう。転職エージェントは、個人で把握するのが難しい業界や企業の実情を熟知しています。

さらに、企業選定から面接対策まで、専門のアドバイザーが一貫してサポートしてくれるので、理想の転職先に出会える可能性がアップするでしょう。

【関連記事】「仕事を辞めたいと思ったら誰に相談すると良い? 退職を相談する相手や注意点を紹介」

5.4 所得控除を活用する

税金や社会保険料を計算する際に、課税対象となる所得金額から、一定額を差し引いて計算できる制度を「所得控除」といいます。

税金のベースとなる課税所得額を減少させることで、納税者は実際の所得よりも少ない金額に対しての税金を支払うことになり、結果として税負担の軽減と手取り額の増加に繋がります。

年末調整で控除できるものもあれば、「雑損控除」「医療費控除」「寄附金控除」など、自ら確定申告しなければならないものもあるので忘れずに行いましょう。現在認められている所得控除は以下の通りです。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • セルフメディケーション税制
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寄附金控除
  • 寡婦・寡夫控除
  • 勤労学生控除
  • 障害者控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除

【出典】国税庁「所得から差し引かれる金額(所得控除)」

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6 まとめ

新卒初任給の平均額は、学歴、産業、企業規模、都道府県によって差があることがわかりました。また、初任給からは通常、所得税と雇用保険料しか引かれないため、額面の約97%程度が手取りとなる計算です。

しかし、翌月からは健康保険料と厚生年金保険料が引かれ、2年目以降は住民税もかかるため、額面の約75~85%程度になるのが一般的です。企業が提示する初任給は、額面であることがほとんどなので、予め手取りがいくらになるのかを確認しておきましょう。

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