【サステナビリティとは】意味と重視される背景、取り組むメリットと実例

【サステナビリティとは】意味と重視される背景、取り組むメリットと実例

サステナビリティという用語を聞いたことがあるという方がほとんどかと思います。今回はサステナビリティの意味と重視されるにいたった背景SDGsとの関係企業や個人が取り組むメリットと実例などを紹介します。

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1.サステナビリティとは

サステナビリティ(Sustainability)とは、持続可能性を意味する言葉です。

自然環境や社会、健康、経済などが将来にわたって現在の価値を失うことなく続くことを目指す考え方です。

近年では、企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)にとって重要な要素だと考えられるようになり、企業戦略のひとつとしてもサステナビリティが重要になってきています。

「sustain」(保つ、持続する、サステイン)と「-able」(~できる)を合わせた言葉です。

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2.サステナビリティの歴史

2.1.持続可能な開発

サステナビリティという言葉が世界的に注目されるようになったのは、1987年に発表された「環境と開発に関する世界委員会」(WCED=World Comission on Environment and Development)の報告書「Our Common Future」で使われた言葉「持続可能な開発」からです。

この中で、Sustainable Development(持続可能な開発)が次のように定義されています。

「持続可能な開発とは、将来の世代が自らのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在のニーズを満たす開発である」。

ここからサステナビリティが世界中で大きなテーマとなり、議論されることになりました。

2.2.SDGsとの関係

SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)は、2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発のための国際目標であり、具体的な17のテーマと169のターゲットが設定されています。

2016年から2030年までの15年間に達成することを目標としています。SDGsは持続可能な開発の考え方を具体的な目標に落とし込んだものです。

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(SDGsは、サステナビリティの考え方を具体的なゴールに落とし込んだもの。17のカテゴリーと169のターゲットが設定されている(画像出典:日本ユニセフ協会))

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3.サステナビリティの3つのカテゴリ

サステナビリティは、以下の3つのカテゴリに分けて考えるのが一般的です。

3.1.経済開発(Economic Development)

  • サステナブル経営:将来にわたって、パフォーマンスを失わずに健全に利益を出し続ける
  • サステナブルマーケティング:環境のため、社会のためになる行動を打ち出す
  • サステナブル投資:環境や社会に貢献する企業に投資をする


3.2.社会開発(Social Development)

  • サステナブル教育:子どもたちの将来の力になる教育
  • サステナブルツーリズム:旅行先の環境を尊重し、損なうことのない観光業
  • サステナブルファッション:つくり手の労働条件や健康を配慮したアパレル業


3.3.環境保護(Environmental Protection)

  • サステナブルシーフード:海洋の生態系を損なわない手法で調達された海産物
  • サステナブルエネルギー:再生可能なエネルギー
  • サステナブルライフ:環境への負荷を考慮した生活

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4.サステナビリティに取り組む事の企業にとってのメリット

サステナビリティを意識した経営を行うことで、企業にとっては以下のようなメリットが生まれます。

企業自身をサステナブルにすることにもつながります。

4.1.ステークホルダーからの評価向上

ステークホルダーからの評価が向上します。

サステナビリティを意識した経営を行うことで、株主、消費者、取引先などのステークホルダーから「社会的な責任を果たしている企業」という評価を得ることが可能になります。

資金調達が容易になり、売上高が上がり、取引先が拡大する、といった具体的なメリットにもつながります。

また、国や自治体の政策により、税制面などでの優遇措置を得られることもあります。

4.2.従業員のエンゲージメント強化

サステナビリティには「雇用」「労使関係」「労働安全」「研修・教育」「多様性と機会均等」なども含まれています。

労働環境を改善することで、働きやすい職場環境がつくれ、従業員が長く勤め、最大のパフォーマンスを発揮してくれるようになる可能性が高まります。

また、優秀な人材が集まりやすくなることも見込まれるため、採用コストの低減にもつながります。

4.3.事業拡大の可能性

サステナビリティを実現するには、新しいアイディアと新しい技術が必要になります。

このような企画開発、技術開発を行うことで、今まで目を向けることがなかった分野や関わりのなかった分野に目が向くようになりやすく、新たな事業拡大の市場を発見することにつながります。

4.4.他企業との連携

サステナビリティに取り組むには、自社だけでは限界があります。

必要な技術開発が一社の手には余る場合もありますし、業界全体で取り組まないと成果があがらない場合もあります。

このため、サステナビリティに取り組む企業は、関連企業や業界の他企業と連携をするのが一般的です。

そのような連携をすることで、業界全体の成長につながったり、新たな事業の誕生につながったりすることがあります。

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5.サステナビリティの指標

サステナビリティ経営を実行するといっても、漠然とやっていたのでは成果はあがりません。

また、成果が可視化されないと、従業員の意欲も低下していくことになります。

そのため、サステナビリティがどこまで進んだのかを評価指標を導入し、期末、年度末などに評価を行い、自社のサステナビリティ活動がどの程度進んでいることを把握することが大切です。

サステナビリティを測定する指標には次のようなものがあります。

5.1.GRIスタンダード(Global Reporting Initiative)

GRIスタンダードは、2016年に定められた国際指標です。

サステナビリティに関する活動、取り組みを評価し、サステナビリティ報告書を作成することができるフレームワークです。

自社の取り組みを、外部に対して客観的に公開することができます。

5.2.DJIS(The Dow Jones Sustainability Indices)

DJSIは、投資家が企業のサステナビリティ活動を評価するために、米国のS&P Dow Jones Indices社とスイスのRobecoSAM社が共同開発をした指数です。

サステナビリティ活動を指数化し、一定以上の企業をDJSI銘柄として紹介することで、サステナビリティ投資を志向する投資家の判断材料に使ってもらうというものです。

米国では、多くの企業がDJSI銘柄になることを目指しています。

5.3.Sustainable Development Report

持続可能な開発ソリューション・ネットワークとベルステルマン財団が毎年発行している「Sustainable Development Report」では、SDGsの17の目標をどれだけ達成できているかという観点で、国連加盟国193カ国のランキングが掲載されています。

2023年版では、日本は193カ国中21位になっています。欧米各国よりは低い順位ですが、アジアの中では1位になっています。

同レポートでは、日本は「相対的貧困」「女性国会議員の比率」「男女の賃金格差」などの目標が達成できていないとされています。

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6.サステナビリティを重視する企業の実例

6.1.コカ・コーラ社

コカ・コーラでは多様性の尊重地域環境資源という3つのカテゴリを設定し、それぞれに具体的な目標を定め実践しています。

6.1.1.多様性の尊重

2030年までに女性管理職比率を50%にすることを目標にしています。

2021年3月時点で女性管理職比率は32.7%になっています。

6.1.2.地域環境

災害時に飲料提供が可能になるように、地域の公共施設や病院になどに地域貢献型自動販売機を設置しています。

災害時には自動販売機内の飲料が無料提供されるほか、リモートで自動販売機のディスプレイに災害情報を表示することができます。

6.1.3.資源

ペットボトルからラベルを排除したラベルレスペットボトルを導入し、プラスティック資源の使用量を抑制しています。

6.2.IKEA(イケア)

2030年までに再生可能素材またはリサイクル素材で製品を製造する目標を掲げています。

2021年に、再生可能素材は55.8%、リサイクル素材は17.3%を達成しています。

また、充電ができない従来のアルカリ電池の販売を終了し、充電式電池に切り替えています。

6.3.スターバックス コーヒー ジャパン

世界有数のカフェチェーンであるスターバックスでは、フェアトレード認証されたコーヒー豆を調達し、生産者への支援も行なっています。

また、コーヒー豆かすなどのリサイクルにも取り組んでいます。

6.4.THE NORTH FACE(ゴールドウイン)

アウトドアブランド「THE NORTH FACE」を運営するゴールドウインでは、商品のライフサイクルを伸ばす取り組みを行なっています。

成長に合わせてサイズを変えられる子ども服や、変化する体形に合わせて適応できるマタニティウェアなど、長い期間着られる服を開発しています。

また、過去に販売したすべての商品の修理サービスを提供しています。

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7.サステナビリティに取り組む個人の実例

個人でもサステナブルに取り組んでいる人は少なくありません。

特に、世界的な著名人の中には、生活の中で実践できるサステナブルをSNSなどで公開し、世界中の多くの人に影響を与えている人もいます。

7.1.メーガン妃

英国王室のヘンリー王子の配偶者で、サセックス公爵夫人であるメーガン妃はサステナブルなファッションを取り入れています。

メーガン妃が着た服、アイテムはすぐに完売することなどが報じられており、サステナブルに取り組むアパレル企業を間接的に支援することになっています。

7.2.ヴィクトリア・ベッカム氏

英国のサッカー選手の配偶者であるヴィクトリア・ベッカム氏は、自身のアパレルブランドを立ち上げ、デザイナーとしても活躍しています。

リアルファーの使用をしないことで有名で、さらにワニなどの野生生物のレザーも使わないことを宣言しています。

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8.まとめ

サステナビリティとは、持続可能性を意味する言葉です。

自然環境や社会、健康、経済などが将来にわたって現在の価値を失うことなく続くことを目指す考え方です。

特に企業にとっては重要で、サステナビリティ活動に取り組むことで、企業そのものを持続可能にすることができます。

国際的な評価基準であるGRIスタンダードなどを活用して、継続的に取り組みことが大切です。

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原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)
テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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