ジョブローテーションとは?導入する目的やメリット・デメリットを徹底解説

ビジネススキル・マナー

ジョブローテーションとは、戦略的に社員の所属する部署を異動によって変更する人事制度のことです。企業がジョブローテーションを導入する目的は、社員のスキル向上や適性の発見、組織全体の活性化など多岐にわたります。

メリットとして、幅広い経験を積めることや社内の連携強化が挙げられますが、一方で専門性が身に付きづらいなどのデメリットも存在します。本記事では、ジョブローテーションの目的やメリット・デメリットを詳しく解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

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1. ジョブローテーションとは

ジョブローテーションとは、「戦略的に部署や職務を変更する人事異動」のことであり、「定期的な人事異動」と言い換えられます。

例えば、営業職の社員が経理事務や人事、カスタマーサポートなど複数部門を経験することなどが挙げられ、その目的は社員のスキル向上や適性の発見、組織の活性化など多岐に渡ります。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構が2017年に公表した「企業における転勤の実態に関する調査」によると、ジョブローテーションを導入している企業は53.1%と過半数を占めていることが明らかになりました。

なお、企業規模が大きくなるにつれて導入している割合が高いとの記載もあります。

【出典】独立行政法人 労働政策研究・研修機構「企業における転勤の実態に関する調査」

1.1. ジョブローテーションの期間はどれくらい?

一般的にジョブローテーションは、3年〜5年ほどの期間で異動を繰り返します

特定業務を3年ほど経験すれば、その分野で自立して活躍できることが期待されるため、多くの企業が3年〜5年を目安としているようです。

1.2. ジョブローテーションは日本だけの制度?

ジョブローテーションは、海外ではほとんど行われていないと言われます。なぜなら、海外では労働者の職務内容を明確に定めて雇用する「ジョブ型雇用」が主流だからです。

ジョブ型雇用の場合、雇用後の職務変更には労働者の同意が必要であり、企業が一方的に転勤や異動を命じることはできないため、ジョブローテーションは行いにくい環境です。

一方、日本では職務や勤務地を限定しない「メンバーシップ型雇用」が主流であり、ジョブローテーションが実施されやすい状況にあります。ただし、近年は終身雇用や年功序列を廃止する企業も多く、日本でもジョブ型雇用が広まると予想されています。

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2. 人事異動や社内公募との違い

ジョブローテーションとよく似た言葉に「人事異動」や「社内公募」があります。社員が部署を異動するという大きな意味は同じですが、配置転換の目的など異なる部分もあります

2.1. 人事異動との違い

人事異動は、組織内で従業員の配置や役職などを変更することを指します。

ジョブローテーションは、主に人材育成を目的としているのに対し、人事異動は組織の活性化や欠員補充のために行われる点が大きな違いです。

なお、人事異動には、部署内異動・昇格・降格・解雇なども含まれます。

2.2. 社内公募との違い

社内公募とは、組織内で必要な役職や職種の条件を公開し、希望者を集めたうえで人事配置を行う制度のことです。

いずれも人事戦略に基づいて行われるため混乱しやすいのですが、人材の選定方法が異なります。

社内公募の場合は、「この業務に挑戦したい」「この役職に就きたい」など公募した希望者のなかから適任と判断された社員が対象となります。

一方、ジョブローテーションは社員の意思に関わらず、適切な人材を選定して異動を命じます

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3. ジョブローテーションの目的

ジョブローテーションはどのような目的で行われるのでしょうか。ここでは、企業側の視点に加え、ジョブローテーション制度が適用されるビジネスパーソン向けに、主な目的を4つ紹介します。

3.1. 属人化を防ぐため

属人化とは、特定の業務における手順や状況、取引先の情報などが担当者にしか把握できていないことを指します。ほかの社員には情報が共有できておらず、どのような仕事をどのように遂行しているのか把握できにくい状態です。

業務の属人化は、担当者が不在になると対応ができない、あるいは部署異動などで担当者が変わると品質に大きな違いが生じるといったトラブルにつながるケースがあります。

ジョブローテーションを行い、社員がさまざまな業務・作業を少しずつ経験していくことで、業務の属人化を防ぐことができます。

3.2. スキルや能力の幅を広げるため

ジョブローテーションによって複数の部署や職種の業務を経験できるため、スキルや能力の幅を広げられる可能性があります。

例を挙げると、人事担当者が営業に関連する仕事をした結果、向いていることが分かり、自分の適性に気づけるケースもあります。

また、ジョブローテーションで得たスキルや知識を持つ社員がいれば、突然、ジョブローテーションでの配属先で欠員が発生した場合にも柔軟に対応することができます

3.3. 適切な人材を適切な場所に配置する

複数の部署で実務を経験することで、自分に適している仕事が明確になる可能性が高くなります。自分の能力を最大限に発揮できる部署が見つかるので、強みを伸ばすことも可能です。

企業側は、従業員が活躍できるポジションを見つけることで、生産性の向上につながるメリットもあります。

とくに、新入社員は入社後に業務の適性を見抜くことが難しいため、適性を見極めるためにジョブローテーション制度を導入する企業もあります。

3.4. 社内コミュニケーションの活性化

ジョブローテーションを行うことで、社内コミュニケーションの活性化につながるといった利点があります。特定の部署に限らず、社内全体で幅広い人間関係を構築できるので、職場の環境や雰囲気も変わってくるでしょう。

また、異なる部署との意思疎通が図りやすくなるので、コミュニケーション不足によるミスも防げます。社員同士が声を掛け合い、様子の変化に気づきやすくなるので離職率の低下にもつながるでしょう。

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4. ジョブローテーションのメリット

ジョブローテーション制度が導入されている会社で働くとどのようなメリットが期待できるのでしょうか。ここでは、ジョブローテーション制度のメリットを7つ紹介します。

4.1. 自身の適性を見極められる

ジョブローテーションによって複数の部署・職種の業務を経験することで、自身の適性を見極めることができます

自分がどのような能力があるのか、どのような仕事が適しているのか分からないまま仕事をしている人も多いのではないでしょうか。例えば、人と会話をすることが好きだから接客業を選んだものの、事務職の仕事の方が自分には向いていたなどというケースも珍しくありません。

希望していた職種とは異なる業務を経験することで、自分の適性や志向を把握し、キャリアパス形成の方向性を明確化できます。

4.2. 企業理解が深まる

部署異動を何度も経験するにつれて、会社全体や業界における理解度が高くなります。

特定の部署の業務をスムーズにこなせる状態であっても、他部署のことを把握できていなければ、企業理解は深まりません

4.3. 業務の役割や流れを知ることができる

ジョブローテーションを通じて、各部署ごとの業務の役割や必要性、流れを把握することができます

例えば、カスタマーサービス部門の担当者が、経理の業務を担い、損益計算書を読み解けるようになれば、自らの顧客サービスが会社の損益に直結することを自覚できるでしょう。

社員一人ひとりが企業や事業を深く理解すれば、業務に向き合う姿勢も変わってくるはずです。

4.4. ジェネラリスト(ゼネラリスト)を目指せる

ジェネラリストとは、総合的に幅広く知識やスキルを身につけている人のことを指します。

ジョブローテーションによって複数の部署に数年間在籍することで、それぞれの職種のスキルや知識を獲得できるでしょう。

複数の角度から物事を判断できるようになることも多いので、企業にとって欠かせない人材になれる可能性もあります。

4.5. 人脈を広げられる

ジョブローテーションを通じて、複数の部署で業務を遂行するため、社内での人脈を広げることができます。

また、企業によって異なりますが、部署異動に伴い取引先も変わるため、社外との関わりも広げられるでしょう。

4.6. 多角的な視点が身につく

複数の部署・職種の業務を経験することで、多角的な視点が身に付きます。業務以外にも、さまざまな人の意見や価値観に触れられるため、視野が広がる可能性があります。

業務を経験して得た新たなスキルや知識を、他部署で活用する応用力が身に付くことも魅力だと言えるでしょう。

4.7. 仕事のモチベーションが維持しやすい

長期間同じ業務を続けると、マンネリ化や飽きが生じやすくなりますが、ジョブローテーションによって定期的に新しい業務に挑戦すれば、常に新鮮な気持ちを保つことができます

また、異なる環境で新たなスキルを習得し、多くの経験を積むことで、自身の成長を実感しやすくなり意欲の向上につながります。さらに、新しい人間関係で従業員一人ひとりが刺激を受け、職場全体の活性化にもつながるでしょう。

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5. ジョブローテーションのデメリット

ジョブローテーションはメリットばかりではなく、デメリットも存在します。ここではジョブローテーション制度のデメリットを3つ紹介します。

5.1. スペシャリストの育成には向いていない

数年置きに部署異動をさせていれば、1つの職種に精通しているスペシャリストを育成することが難しくなります

総合的にスキルや知識を得ているジェネラリストの育成にはつながりますが、特定の業務に長けた人材育成が困難になります。

そのため、ジョブローテーション制度を導入する場合は、社内全体で行うのではなく特定の人材にのみ実施し、スペシャリストとジェネラリストの育成を並行して行うことが賢明かもしれません。

5.2. 人間関係がリセットされてしまう

異動が実施されると、その度に新しい上司や同僚と関係を築く必要があり、慣れるまでは気を遣うことが多くなります

特に、信頼関係を築いた頃の異動は、それまでのつながりがリセットされてしまうので、ストレスを感じやすく仕事への意欲が低下してしまう恐れもあります。

また、頻繁な異動は職場全体に「どうせまたすぐに入れ替わるだろう」という意識を生み、人間関係の深まりを妨げることも考えられます。

5.3. 教育コストがかかる

企業側のデメリットとして、社員の教育コストがかかることが挙げられます。異動が決定すれば、受け入れ先の部署では教育担当者を配置し、業務量を調整しなければなりません。

また、教育時間の確保も必要になり、その分ほかの業務に手が回らなくなってしまう恐れもあります。万が一、異動になった社員が辞めてしまえば、これらのコストは無駄になってしまいます。

6. ジョブローテーションに向いている企業・向いていない企業

ジョブローテーション制度はすべての企業に適しているわけではありません。ここでは、ジョブローテーションに向いている企業・向いていない企業にわけて特徴を紹介します。

6.1. 向いている企業

ジョブローテーション制度の導入に適している企業は、下記のとおりです。

  • 業務が複数の部署でつながっている
  • 人員コストやリソースに余裕がある
  • 業務において幅広い知識を必要としている

複数の部署で業務を連携して行う場合、ジョブローテーション制度を導入することで、社員全員が一連の流れを把握できるのでメリットが大きいでしょう。

また、人員コストやリソースに余裕があれば、受け入れ先の教育担当者を周囲がサポートしながら進められます。

6.2. 向いていない企業

ジョブローテーション制度の導入が向いていない企業の特徴としては、下記のとおりです。

● 専門性が高い
● 長期のプロジェクトに携わっている
● 教育リソースがない

専門的な知識やスキル、技術が必要な業務が多い企業の場合は、ジョブローテーション制度の導入は難しいでしょう。

また、企業によっては5年以上の長期プロジェクトを遂行しているケースもあるので、3〜5年ほどで社員が入れ替わるジョブローテーションは向いていません。

中途採用社員が多い場合は、教育担当者が中途社員のサポートを優先的に行わなければならないので、教育リソースが不足する恐れがあります。

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7. まとめ

ジョブローテーションを通じて、さまざまな業務に携わることで、自分の適性を把握しながら最大限のパフォーマンスを発揮できるようになります。ジョブローテーション制度は、比較的正社員の人数が多い企業が導入する傾向にあることも分かっています。

複数の業務を経験して、自分の適性を知り、能力を伸ばしたい方は、ジョブローテーション制度を導入している企業への転職を検討してみてはいかがでしょうか。

転職エージェントの「マイナビエージェント」では、担当のキャリアアドバイザーからサポートを受けられるため、自分に適した企業を見つけられる可能性が高いです。ジョブローテーション制度を実施している企業への転職を効率的に進めることができるでしょう。

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