「デフォルト」とは?各分野での意味と使い方をわかりやすく解説

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「デフォルト」という言葉は、ビジネスシーンに限らずさまざまな分野で使われる用語です。しかし、分野によって異なった意味で使用されることが多いため、混乱する方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、日常的によく耳に(目に)する「デフォルト」について、分野ごとの意味や使い方を徹底解説します。

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1.デフォルトとは

「デフォルト」というカタカナ語は、英語の「default」から来ています。「default」の元々の意味は、「怠慢」「不履行」などです。

しかし、デフォルトはそこから派生して、使われる分野によりさまざまな意味に変わります。日本語では、標準であることや初めから決まっていることを表す意味合いも強いです。

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2.デフォルトの語源

デフォルトの語源は、「fault」(フォールト、失敗)に意味を強める接頭語「de」がついたものです。つまり、もともとは「大きな失敗」の意味でした。そこから「義務を怠る」「やるべきことをしない」という意味になっていきました。

日本語では「怠慢」「不履行」という意味からさらに転じて、「何も設定していない状態」や「通常の」「定番の」といった意味で使われることもあります。

また、スポーツなどでの棄権では、選手はその大会に出場する権利があるとともに義務もあるという考えから、その義務を履行しない棄権をデフォルトと呼びます。

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3.各分野におけるデフォルトの意味と使い方

日本語でのデフォルトは、分野によってその意味合いが大きく異なる場合があります。そのため、その違いをしっかりと理解し、適切に使えるようになることが大切です。

3.1.デジタル分野:「初期設定」

パソコンなどのデジタルデバイスで使われるデフォルトは「初期設定」の意味です。「標準設定」と呼ばれることもあり、デフォルト設定とは何も設定をいじっていない状態を指します。

例えば、スマートフォンの文字入力では、フリック入力やキーボードによるかな入力、さらには英語、中国語、スペイン語などの入力もできます。しかし、どの文字入力法を使うのかは人によって異なります。

そこで、日本においては、メーカーは多くの人が使うであろうキーボードによるかな入力をデフォルト設定とし、かな入力が使える状態で出荷をすることが多いです。その後、ユーザーは自分の用途に合わせて、自由に設定を変更します。

コンピューターデバイスを個人も買うようになり、メーカーがすべての顧客に対して個別に設定をすることは現実問題としてできません。そこで、ごく一般的と思われる設定のみをしておくという手段が取られるようになりました。

その「(ほとんど)何もしていない」状態を指して、似た意味合いを持つ「デフォルト」が使われています。

【例文】

  • PCの不具合が治らないため、デフォルト設定に戻した
  • 新しいソフトウェアは、デフォルトでは英語が設定されている
  • デフォルトの壁紙は自由に変更することができる

3.2.経済分野:「債務不履行」

経済分野で使われるデフォルトとは、「債務不履行」のことです。債務不履行は、期日までに約束した返済や利払いをしないことを指します。英語の「default」にも不履行の意味があるので、経済分野でのデフォルトはまさにこの原義そのままの使い方です。債権者は、債務不履行が生じると、貸しているお金や投資しているお金を一括で返済してもらうことを要求できる場合があります。

しかし、一括返済というのは現実には難しい事が多く、多くの場合、デフォルトを起こした企業は破綻をして整理することになります。そのため、経営が厳しくなった企業は、いかにして破綻を回避するか、デフォルトを起こさないように資金繰りをするかということに追われるようになります。

なお、債務不履行は国家や自治体も起こすことがありますから、その場合もデフォルトという言葉が報道などで使用されることもあります。

【例文】

  • 信用度が低いと、銀行ローンのデフォルトリスクは高く設定される
  • その企業が発行した債券の多くはデフォルトしそうだ
  • 〇〇国が財政赤字でデフォルトを起こす危険がある

3.3.スポーツ分野:「棄権」

スポーツの世界では棄権をすることをデフォルトと呼びます。ケガなどの致し方ない理由による欠場ではなく、「出場できる権利をあえて放棄した」棄権に対して使われます。

試合に出場することは選手の権利でもあるが義務でもあるという考え方から、試合に出場できるのにも関わらず出場しないことをデフォルトと呼びます。

【例文】

  • 対戦相手のデフォルトでこの試合は不戦勝となった
  • 中心選手のケガなどが重なり、チームはデフォルトとなった
  • あおのチームはデフォルトで敗退したと聞いた

3.4.プログラム開発:「規定値」「初期設定値」

コンピュータープログラムでは、入力すべき入力値がない場合、処理内容によってはエラーが起きてしまうことがあります。そのため、入力値がない場合にあらかじめ決められた規定値を代わりに使うことがあります。この規定値のことを「デフォルト値」と言います。

例えば、会員登録をする時には、氏名や住所、性別、年齢などを入力する必要がありますが、すべてのユーザーがすべての項目を入力してくれるとは限りません。しかし、未入力の項目があるとプログラムは誤作動をしてしまうことがあります。

そこで、年齢の入力がない場合は「-1」というデフォルト値を自動的に使うようにします。これでプログラムの意図しない誤作動は避けられますし、集計をするときも「-1は未入力」と処理をすることができるようになります。

また、地図アプリなどでは、開いた時に現在地が中心になるようにすると使い勝手が高くなります。しかし、地図アプリがスマートフォンの位置情報を利用するには、プライバシーに配慮する観点から、ユーザーに許可を求める必要があります。

そこで、多くの地図アプリでは、東京駅などのデフォルト値を使い、最初は東京駅を中心に表示します。その後、位置情報の使用許可が得られると、現在地が中心に表示されるようになります。

【例文】

  • この項目の値はデフォルトでは「0」になっている
  • ここにはデフォルト値を設定しておかないと正常に作動しない

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3.5.スマートフォンのアプリ:「標準の」「規定の」

スマートフォンなどでChromeなどのブラウザを初めて起動すると「デフォルトとして設定しますか?」と尋ねられることがあります。これはそのスマホで「既定のブラウザにしますか?」という意味です。

メモやテキストに記載されているURLをタップすると、ブラウザが起動し、そのURLのページが表示されます。この時、どのブラウザを使うことにするのかが「デフォルトとして設定する」の意味です。つまりデフォルトのブラウザとは、URLをWebで開く際に常に使用するブラウザということになります。

同様に地図アプリ、メールアプリ、カレンダーなどでもデフォルト設定をして、標準アプリを自分の好きなものに変えることができます。変更できるアプリは機種によって異なるため、設定の「デフォルトのアプリ」などの項目をご参照ください。

【例文】

  • デフォルトのブラウザをSafariからChromeに変更する
  • 社用スマホのデフォルトアプリは会社側で決めておくべきだ

3.6.一般のビジネスシーンや日常会話:「普通の」「定番の」

デフォルトという言葉は、日常用語にもなっています。「デフォ」と略されることもあり、本来の意味を離れて「基本の」「普通の」「定番の」といった意味になります。

「いつもどおりの」「当たり前」といったニュアンスを含んでおり、この意味で使われるデフォルトは和製英語とも言えます。

【例文】

  • 会議では出席者1人ひとりに意見を聞くのが自社のデフォルトになっている
  • あの人の話が長いのはデフォルトだ
  • 休日に遊びに行くならテーマパークがデフォでしょ

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4.デフォルトの関連用語

プログラム開発におけるデフォルトの意味についての解説で「デフォルト値」という言葉が出てきましたが、このようにデフォルトを使った関連用語は複数あります。ここでは、「デフォルト宣言」と「デフォルト効果」の2つを紹介します。

4.1.デフォルト宣言

デフォルト宣言(Default Declaration)におけるデフォルトとは、「債務不履行」の意味です。債務者が支払い義務を果たすことができない旨を自ら宣言することで、これにより公式に債務不履行が認められたことになります。

また、債権者=貸し手がデフォルト宣言を行うこともあります。借り手が債務不履行した場合、デフォルト宣言を行って担保資産を差し押さえる権利を発動するなどします。

4.2.デフォルト効果

人間はいったんデフォルト設定を受け入れてしまうと、それが自分に不都合な部分があっても、コストを支払って変更する作業を避けようとする傾向があることが知られています。これを「デフォルト効果」と言います。マーケティングなどでは、このデフォルト効果を活用する場合があります。

例えば、オンライン会員などの入会時にメールマガジンを購読するかどうかを尋ねる項目があります。この時、「購読する」にあらかじめチェックを入れておき、必要のない人には「購読しない」にチェックを付け替えてもらうようにします。

このようにすると、多くの人が「購読する」のままにするため、メールマガジンの購読率があがります。提供側が期待をする選択肢をあらかじめデフォルト設定にしておくことで、施策を成功に導く手法です。

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5.まとめ

デフォルト(default)という言葉には、使われる分野によりさまざまな意味があります。コンピューターなどのデジタルデバイスの世界では、初期設定、標準設定の意味になります。また、経済の世界では債務不履行の意味になります。

この他、さまざまな分野、文脈でデフォルトという言葉は使われますが、原義は「やるべきことをしない」という意味です。元の意味をしっかり理解した上で細かなニュアンスの違いを知り、適切に使い分けられるようにしましょう。

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原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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