【バレルとは】バレルという単位の意味と由来、原油価格や石油備蓄も解説

【バレルとは】バレルという単位の意味と由来、原油価格や石油備蓄も解説

ロシアのウクライナ侵攻の影響などもあって原油価格が高騰する中、エネルギー市場の安定化を目指すとして、岸田文雄総理大臣は、IAEA(国際エネルギー機関)の加盟国と協調して、国家備蓄と民間備蓄から合わせて1500万バレルを放出することを明らかにしました。

ですが、この「バレル」という単位、どれぐらいの量を指すのか、なぜ石油の量の単位となっているか、詳しく説明できない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、「バレル」という単位の意味と名前の由来、さらに、原油価格や石油備蓄について解説します。

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1.バレルとは

原油関係のニュースで「原油先物価格が1バレル110ドルを突破」などと使われる石油の取引単位バレル。1バレルは158.987リットルです。

一般的な家庭用冷蔵庫が300リットルから400リットルのものが多いので、冷蔵庫1/2個分にあたります。

米国の油田で、昔、樽(バレル)を使って原油が取引されていた名残で、原油を取引するときは今でもバレルという単位が使われています。単位記号はbbl.です。

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2.バレルという単位の由来

バレルという単位が誕生したのは、1859年に米国のペンシルバニアで起きた油田ラッシュからです。問題は採掘された原油をどうやって製油所に運ぶかでした。

身近にあったのは、ニシンを運ぶために使っていた樽やワイン、ウィスキーを運ぶために使っていた樽でした。石油もこのような樽を利用して運ばれたために、バレルという単位が生まれました。

しかし、ニシン樽とワイン樽、ウィスキー樽では容量が異なるため、1866年にニシン樽を基にした現在のバレルに統一をれました。

当初は船で運んでいましたが、揺れなどの影響で1/3は輸送中に漏れ出してしまったと言います。

そこで、1862年に鉄道が敷設をされ、油田から駅までは馬車で運び、そこから鉄道で製油所に運ばれるようになりました。

さらには、1865年には油田から駅までのパイプラインが敷かれるようになり、ほぼ漏れることなく、原油を運べるようになりました。

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3.原油先物取引とは

ものの値段が需要と供給によって上下をするのは当然のことですが、石油の場合は原油先物取引があるため複雑です。「ニューヨーク原油先物取引が、1バレル100ドルを突破する高水準に」というようなニュースをよく耳にします。

このことから、実際の需給状況よりも、利益を狙う相場師のような人たちに原油価格が影響されているような印象を持っている方も多いかもしれません。

しかし、先物取引とは、価格変動が大きな商品を取り扱うには必須のリスクヘッジの仕組みです。

諸説はありますが、先物取引が初めて仕組みとして運用されたのは、日本の大阪にある堂島米会所での米取引であると言われています。

堂島米会所は、各藩が地元で収穫した米を大阪の蔵屋敷に輸送して、それを商人に売却することで、各藩の予算や給与を支払うという場所でした。この堂島米会所で、1730年頃から先物取引が行われるようになります。

各藩で米の収穫があると、収穫量の情報は大阪にすぐに伝わりますが、現物の米を大阪の蔵屋敷に搬入するまでは時間がかかります。

そこで、経営が苦しい藩は、収穫量が判明した時点で米切手を発行して、これを商人に売却します。米切手は、たとえば2ヶ月後に米を受け取れる引換券です。

しかし、いくらで米切手を売買すればいいのかが問題になります。米切手を売買する日の米相場で売り買いをしたとして、2ヶ月後の受け取れる期日がきた時に、米相場が下落をしていたら、商人は大損をすることになります。

扱い量が多いので金額も大きくなり、暴落でもしたら、商人は破産をすることになってしまいます。

このリスクヘッジをするために生まれた工夫が先物取引でした。商人はその日の価格で、2ヶ月後の米切手を購入しますが、同時に「2ヶ月後に今日の相場で米を売る」権利も売ります。

これを買ってくれる人が入れば、この商人は絶対に損をしないことになります。2ヶ月後の米相場がいくらになろうとも、今日の価格で米を受け取り、今日の価格で米を売るだけだからです。

もちろん、この通りにすると利益も出なくなってしまいますが、このような反対売買の米切手をうまく組み合わせて、大きな損が出ないようにするというのがそもそもの目的です。

もちろん、そのような先物相場でお金を儲ける目的で投機をする相場師も現れますが、それは先物相場の副産物のようなもので、目的としているのは、価格変動の大きな商品を関係者が安心をして取引ができるようにするリスクヘッジの工夫です。

現在の、原油先物取引も同じリスクヘッジの目的で運営されています。

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4.原油価格が変動する要因

世界の原油の約4割は中東の石油輸出国機構(OPEC)加盟国によるものです。OPEC加盟国は、自国の利益を守るため、加盟国で協調減産をすることがあります。

原油価格が安くなりすぎると、自国の利益が損なわれるため、減産をして価格を上昇させるのです。

この他、次のような要因で原油価格は変動します。

(1)産油国の生産量

先ほどのOPECのように、原油価格を維持するために、原油国は高い時には増産をし、安い時には減産をします。これにより、原油価格が変動します。

(2)景気動向

世界の景気動向が上向きになると、世界各国で石油の消費量が増えると考えられます。ものが売れるようになりトラック輸送が増え、市民も自動車で動き回るようになるからです。景気がよくなるという見通しがあると、原油価格は上昇します。

(3)円安などの為替相場

これは原油先物取引とは別ですが、円安になると、同じドル建て価格の原油でも、円換算をすると値上げになるため、日本国内での原油、ガソリンなどの石油製品は高くなります。

(4)産油国の情勢

世界で産油量の多い国は、米国、ロシア、サウジアラビア、カナダ、イラクの順になります。このような産油国の情勢が不安になると、それまで通りの石油が生産されなくなる可能性があり、先行き不安から原油価格は上昇することになります。

(5)米国の原油在庫状況

米国は世界最大の産油国でありながら、世界最大の消費国になっています。そのため、米国の原油在庫が少なくなるということは、生産が減少し、消費が増加している可能性があり、米国の原油在庫量が原油価格を変動させるきっかけになります。

具体的には毎週水曜日に米国エネルギー情報局(EIA)が発表する原油在庫統計が、専門家の予想よりも下回ると原油価格が上昇します。

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(世界の産油国のランキング。米国が最大の産油国だが、消費量も多い。ロシア、サウジアラビア、イラクなどの情勢不安があると原油価格は上昇することになる。グローバルノートの統計より引用)

5.日本の石油備蓄

日本は原油をほとんど産出せず、同時に大量に消費をするため、石油備蓄が国策になっています。石油備蓄は次の3通りの方法で行われています。

(1)国家備蓄

国が備蓄基地を建設し、備蓄をします。経済産業大臣の命令により出し入れが行われます。

(2)民間備蓄

石油関係の民間企業が、自社のタンクなどで行う備蓄です。国が支援をし、協力をしてもらっています。

(3)産油国共同備蓄

政府の支援の下、民間企業が保有をする石油タンクなどの貯蔵設備を、産油国の国営企業などに貸し出しています。

通常は、産油国企業が日本国内備蓄設備として利用をしていますが、日本への原油供給が不足をした場合は、国内向けに優先供給してもらうというものです。

6.日本の石油備蓄量

日本の石油備蓄量は、経済産業省資源エネルギー庁が定期的に公表をしています。

最新の発表では、2022年1月末の段階で、合計236日分の備蓄がされています。

7.まとめ

原油関係のニュースで使われる石油の取引単位。1バレルは158.987リットルです。米国の油田で、昔、樽(バレル)を使って原油が取引されていた名残で、原油を取引するときは今でもバレルという単位が使われています。単位記号はbbl.です。

原油の価格は先物取引なども影響して決まっていきます。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)
テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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