高校野球などでもよくみられる「負けてる方を応援したくなる」現象。実は心理学でもそうした現象を説明する用語があります。それが「アンダードッグ効果」。
今回は、アンダードッグ効果の定義や具体例、バンドワゴン効果との違い、アンダードッグ効果を期待できる行動などについて解説します。
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1.アンダードッグ効果の定義と語源
皆さんは、選挙の投票で不利な状況にあると報じられた人に、同情票が集まり逆転勝利する現象を見たことがあるでしょうか。こうした現象をアンダードッグ効果と言います。
アンダードッグ効果は、1940年代のアメリカで、選挙の予測報道にこの効果があることが世論調査データの分析により発見されました。
日本では、「判官びいき(同情や憐憫の気持ちにより相対的に立場の弱い側へ肩入れしてしまうこと)」や、「かませ犬(引き立て役として対戦させる弱い相手のこと)」と訳されます。
昔は、アンダードッグ効果を「負け犬」と直訳していましたが、「負け犬」は「すでに敗北が決定している」状態を指す言葉でニュアンスが異なります。そのため、誤解を避けるために、今では使用されなくなりました。
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2.アンダードッグ効果の具体例
アンダードッグ効果では、不利な状況になれば必ず応援してもらえるわけではありません。不利な状況になっても、頑張るその様子に胸を打たれた人が応援をしてくれるようになります。
アンダードッグ効果は主に選挙に関して議論されてきましたが、日常のさまざまな場面やメディアでも見られます。例えば、以下のようなものが該当します。
・「頑張っているのに結果が伴っていない人」と「大して何もしていないのに成果が出ている人」がいた場合、前者を応援したくなる
・「決勝戦初出場の学校」が、「毎年優勝常連の学校」に対して懸命に挑む場合、前者を応援したくなる
・何度も負けて傷ついても、強い相手に挑み続けるドラマや映画の主人公を応援したくなる
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3.バンドワゴン効果との違い
アンダードッグ効果とは逆に、大勢の人が選択している事柄がより魅力的に見え、人々からの支持がよりいっそう高くなる現象をバンドワゴン効果といいます。
例えば、世論調査で、大勢から支持されている政治家が魅力的に映り、さらに票数を獲得するという現象が該当します。
どちらの効果も、事前にどちらが有利、不利という情報がなければ心理効果として働きません。
そのため、事前情報が必要なアンダードッグ効果とバンドワゴン効果は合わせて「アナウンスメント効果」と呼ばれます。
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4.アンダードッグ効果が人の心理に与える影響
アンダードッグ効果が人の心理に与える主な影響として、以下の2つが挙げられます。
4.1.応援や感動を引き出す
人は、不利な状況になっても懸命に頑張る姿に感動を覚え、また応援したい気持ちになることが多くあります。
反対に、不利な状況になってすでに諦めムードを漂わせているような状態では、感動や応援は引き起こされず、アンダードッグ効果は期待できません。
4.2.弱いものを守りたくなる
人間は、乳幼児あるいは老人らは守るべきものという感情を持っていると言われています。この感情が、状況が不利で立場が弱くなっている人に対して向けられることで、アンダードッグ効果が現れることもあります。
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5.アンダードッグ効果が期待できる具体例
アンダードッグ効果が期待できる具体例は以下のようなものになります。
5.1.困っている状況を伝えること
「先方の無断キャンセルで、物品が大量に余っています」というような発信は一定の効果を期待できます。
「困っている状況」を発信することで、守ってあげたい、商品が全部売れるように応援したいなどと思ってもらう事が期待でき、商品を購入してもらえたり、SNSで情報を拡散してもらえたりする可能性があります。
5.2.頑張った形跡を見せること
「履きこんだ」靴で営業をしてみたり、何回も手直しした図面を取っておいてそれをお客様に見せたりすることは、アンダードッグ効果を期待できる可能性があります。
それにより、お客様から仕事を頑張っていると認識され、応援してもらえる可能性があります。
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6.アンダードッグ効果が期待できる条件
前述の通り、不利な状況にあるからといって、必ず応援されるとは限りません。
アンダードッグ効果を期待するためには、以下のような条件を満たすことが必要となります。
6.1.一生懸命にやっていること
不利な状況でも、努力する様子が見られなければ、誰も応援しようという気持ちにはなりません。そのため、アンダードッグ効果を期待する場合には、逆境でも努力を怠っていないことが前提条件となります。
6.2.これまで頑張ってきた姿を知ってもらっていること
どれだけ不利で、どれだけ危機的な状況であるかを正確に把握するためには、不利な状況になる前の普段の姿を知ってもらわないといけません。
例えば、昔から頑張ってきた人や地元の商店が逆境に遭ったとき、周囲でその頑張りを見届けてきた人から、アンダードッグ効果を得られる可能性があります。
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7.ビジネスでのアンダードッグ効果
日本では古くから「判官びいき」(「判官」は平家を滅ぼした源義経が就いた官職。義経が兄の源頼朝に討たれたため、鎌倉幕府を開いた頼朝より討たれた義経のほうをひいきする心情)という言葉があったことからも分かるように、日本人はアンダードッグ効果が顕著に現れる国民性を持っていると言われています。
そのため、ビジネスにおいてもアンダードッグ効果を得やすい環境であると言えます。
7.1.SNSとアンダードッグ効果の相性は良い
マーケティングにおいて公式のSNSを運用している企業が多くなっている現代では、アンダードッグ効果を利用した手法が効果的です。
SNSではユーザーが企業への親近感を持ちやすく、テレビや一般的な広告ではできないような自虐的なアピールもしやすいためです。
実際に、不人気商材の自虐キャンペーンに成功した企業もあります。
また、コロナ禍で売上不振に陥っていたお店への応援キャンペーンなどでもアンダードッグ効果が表れていました。
7.2.アンダードッグ効果は自ら目指すものではない
アンダードッグ効果は、これまでの解説でも分かるように人間に備わっている心理現象であるため、条件が揃った時の効力は大きいでしょう。
しかし、これは「不利な状況下にある人を応援したくなる心理現象」なので、あえてアンダードッグ効果を狙いにいこうとすることは、不利な状況に自らを陥らせる必要があるので本末転倒と言えるでしょう。
あくまでも、「一生懸命頑張っているのにもかかわらず不利な状況に陥ってしまった」という状況を打破する手法の一つですので、無闇に自虐や負け顔を見せるようなマーケティングをしないように気をつけましょう。
8.まとめ
不利な状況にある人や組織に同情が集まり逆転勝利につながる可能性もあるアンダードッグ効果ですが、そのためには、過去そして今現在頑張っている自分の姿を周囲の人に知ってもらう必要があります。
また、アンダードッグ効果は「弱く見える」人や組織に対する応援が期待できる事であるため、そのためには自分が不利な立場であることを周囲の人に知ってもらうことも必要です。