【返報性の原理とは】なぜかお返ししたくなる...その心理の活用法とNG行動

【返報性の原理とは】なぜかお返ししたくなる...その心理の活用法とNG行動

今回は、お返しをしたくなる心理の法則「返報性の原理」について、その意味と活用法、さらには活用する際の注意点などを心理学的な視点から解説していきます。

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1.返報性の原理とは

1.1.人間にとってごく自然な心理

返報性の原理とは相手から受けた好意や敵意などのアクションに対して、「お返しをしたい」と感じる人間にとってごく自然な心理のことを言います。

店で洋服を試着したシーンを思い浮かべてください。店員の方がその服に合う小物やサイズ違いの服を何度も持ってきてくるなど、丁寧な接客を受けると「こんなにしてくれたから...」という気持ちから、本当は試すだけのつもりだったのに購入せざるを得ない気持ちになってしまい、つい買ってしまった...という経験がある方も多いと思います。このような心理が返報性の原理です。

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1.2.デニス・リーガン氏の実験

この原理を実証した実験は数多くありますが、中でも有名なのが心理学者であるデニス・リーガン氏が1971年に発表した論文中の実験です。この実験は2人1組で行われ、1人は仕掛け人で1人が被験者です。仕掛け人が飲み物を買いに出かけ、帰ってきたときに被験者に福引券の購入を持ちかけるという内容でした。

実験では仕掛け人が自分の飲み物だけを買ってきた場合と比べ、被験者のジュースも買ってきた場合の方が、福引券の購入率が2倍も高いという結果でした。この実験では、「飲み物を買ってあげた」という一方の好意に対して、もう一方が福引券を購入するという行動をとってお返しをする、「好意」の返報性が実証される結果となったわけです。

1.3.返報性の4分類

返報性は4つに分類することができ、(1)「好意の返報性」、(2)「敵意の返報性」、(3)「譲歩の返報性」、(4)「自己開示の返報性」、があります。

1.3.1.好意の返報性

前述のように他者から何らかの『好意』を受けとった際に、お礼やお返しをしたくなる心理現象のことです。よくお土産を買ってきてくれる人に自分もお土産を渡す、SNSで「いいね」をくれる人にこちらも「いいね」したくなるなど、いずれも好意の返報性の具体例と言えます。

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1.3.2.敵意の返報性

好意の返報性とは逆に、こちらをよく思わない人に対してその向けられた敵意を返したくなることを言います。街を歩いていてぶつかってこられた相手に睨み付け返すなどの行為はこの敵意の返報性の結果と言えます。

1.3.3.譲歩の返報性

相手が譲歩してくれたら、次は自分が譲歩しなければいけない気持ちになる心理的な現象のことです。購入を検討していた商品を値引きしてもらった結果、自分の想定していた金額よりも高い金額だったにも関わらず、購入した場合などが当てはまります。

1.3.4.自己開示の返報性

相手がオープンに接してくれた時、自分も相応の秘密を開示しなければならないような気持ちになる心理現象のことです。初対面の人が気さくに話しかけてきたとき、つい自分も同じように接してしまった、悩みを打ち上けられたから自分も悩みを相談した、などがこれに該当します。

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2.活用時に注意すべきNG行動

続いて活用時の注意点をみていきましょう。

2.1.見返りを迫る

返報性の原理を活用する際は、「相手を喜ばせたい」という純粋な気持ちが大切です。見返りを求めすぎたときには相手に下心を感じ取られ、返報性の原理が働きづらくなります。

2.2.高価すぎるものを贈る

お互いの関係性に見合わないもの、相手が求めていない高すぎる価値のものを贈ると、相手に警戒されてしまい、思っていた効果が出づらくなります。あくまでも相手を不快にさせないという大前提において活用するようにしましょう。

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3.返報性の原理の身近な活用事例

3.1.バレンタインデー/ホワイトデー

返報性の原理の身近な活用事例としてはバレンタインデーとホワイトデーが挙げられます。バレンタインデーに貰ったもの相応のものをホワイトデーでお返しなければならない、と感じてしまうのはまさに返報性の原理の典型的な事例と言えます。

3.2.試着/試食

元々買うつもりがなかった商品でも試着させてもらう、試食させてもらうことで何らかの形でお返しをしなければならないと感じてしまい、最終的に購入してしまうのも返報性の原理の事例と言えそうです。

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3.3.化粧品店のテスター

試着/試食と似ていますが化粧品店のテスターも返報性の原理の活用事例です。お試しで化粧品を使ってみると購入しないといけないような気持ちになることがあります。これも返報性の原理の活用事例です。

4.返報性の原理の活用

続いて実際に活用する時のポイントをみていきましょう。

4.1.「貸し」をつくった形にする

返報性の原理は何らかの行為に対する「お返し」ですから、まずは相手に対して貸しをつくった形にすることが大切です。このときの「貸し」は金銭的なもの(プレゼント等)でも、何らかの好意(何かの順番を譲ってあげる等)でも構いません。ただし前述したように過大な見返りを求めない、相手が戸惑わない程度の行為であることが肝心です。

4.2.ドアインザフェイステクニック

ドアインザフェイステクニックとはまず過大な要求を行い、相手に断られた後に本命の要求をすることで、本命の要求に従わせる手法です(「shut the door in the face(門前払いする)」という言葉が由来となっています)。これも返報性の原理(譲歩の返報性)を活用したテクニックであり、断ったときの申し訳ないという相手の感情を活用して、本命の要求を受け入れてもらっているのです。

5.返報性の原理と一貫性の原理との違い

5.1.返報性の原理--ドアインザフェイス

前述の通り、返報性の原理を活用したテクニックがドアインザフェイスとなります。

5.2.一貫性の原理--フットインザドア

一貫性の原理とは自身の行動や発言、態度などに対して一貫した対応を取りたいという心理のことです。返報性の原理と同じく、人間の「誠実な振る舞いをしたい」という気持ちが表れている心理現象と言えます。

この一貫性の原理を活用したテクニックが、小さな依頼から徐々に要求を大きくして本命の要求を受け入れてもらうフットインザドアテクニックです。例えば営業のシーンで「商品の定期購入の1年契約をしてもらいたい」という本来の要求を通す際、「商品を1カ月だけ使ってほしい」という小さな要求から始めて、徐々に大きな要求に繋げていくという手法です。

返報性の原理と一貫性の原理は相手によって使い分けが必要です。上司など目上の人に対して、最初から過大な要求をしてしまうと、信頼失墜につながってしまうことも。目上の人には段階的に要求を上げていく、一貫性の原理を活用するといいでしょう。

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6.まとめ

交渉のシーンで役に立つ返報性の原理。あくまでも自然に相手がお返ししたくなる気持ちを引き出すのがポイントです。効果を期待するあまり、相手の気持ちを無視した行動や過剰な施しなどは逆効果になってしまうので、注意が必要です。

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原稿:酒井富士子
編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。リクルートの「赤すぐ」副編集長を経て、2003年から現職。暮らしに役立つ最新情報を解説する。