「ストレスコーピング」とは、仕事や人間関係など様々な場面でストレスを感じたとき、上手にストレスに対処する方法です。過剰なストレスを溜め込むと、心の病へ陥ってしまう可能性があります。心身の健康を維持するためにも、「ストレスコーピング」を正しく身につけ、日々の生活で活用してみましょう。
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1.ストレスのメカニズムとストレスコーピング
「最近ストレスが溜まってしまって。」などという会話は、私たちが日常生活を送る上でよく聞かれます。このような会話で使われるストレスは気持ち的な問題を指していることが多く、ストレスとは「精神的に負担を負わせるもの」のことだと捉えられがちです。
しかし、そもそもストレスとは、何かしらの外部からの刺激によって「心身に負担が生じるもの」のことをいいます。そして、これらのストレスに上手く対処する方法として、「ストレスコーピング」という技術があります。
1-1.ストレスの構成要素
ストレスには、3つの構成要素があるといわれています。1つ目は、ストレッサー。2つ目は私たちの認知(評価・解釈)、3つ目はストレス反応です。
ストレッサーとは、ストレスのもとになるさまざまな刺激のことをいいます。この刺激は多岐に渡り、身体的な疲労や病気、引っ越しなどの環境の変化、劣悪な人間関係によるものなどが挙げられます。
認知とは物事の捉え方のことです。ストレッサーに対し、それをどの程度驚異的に感じるかでストレス状況が変わってきます。
ストレス反応とは、ストレスを認知しその状況が続くことによって、心身がその防衛に耐えきれなくなり、さまざまな症状を引き起こすことをいいます。具体的には、自律神経の乱れや免疫力が低下するなどの身体的な反応、気分の落ち込みや集中力の低下など精神的な反応、過食などの行動反応があります。
1.2.ストレスコーピングとは?
ストレスコーピングとは、ストレスに上手く対処する方法として考えられた技法です。アメリカの心理学者R・S・ラザルスによって、ストレスコーピング理論の基礎となるストレス理論が提唱されました。
英語では「stress coping」と書き、「問題に対処(対応)する」という意味の動詞「cope」からきています。
ストレスコーピング理論は、個人の認知の方法に働きかけることで感情などに変化をもたらし、ストレスに対処する力を向上させる認知行動療法的観点を持っています。私たちがストレッサーにさらされたとき、それを認知するとき、ストレスが発生するときのどれに焦点を当てるかによって、「問題焦点型」「情動焦点型」「ストレス解消型」に分けることができます。
ストレスコーピングを行わずにいると、ストレスによって、うつ病などのさまざまな病気が引き起こされることが大いにあり得ます。また、行動面でも過食や飲酒を繰り返してしまうなどの影響が生じることもあります。
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2.ストレスコーピングの種類
ストレスコーピングは、大きく分けて「問題焦点型」「情動焦点型」「ストレス解消型」がありますが、さらに細分化することができます。ストレスコーピングの種類について説明します。
2-1.問題焦点型
問題焦点型とは、ストレッサー自体に働きかけ、問題を解決しようとする考え方をいいます。ストレッサーに直接働きかけることで、ストレッサーを変化させ、問題となっている点や課題を明確にするという方法です。
■問題焦点型コーピング
ストレスの原因となっている物事を、根本から解決することにより、ストレス自体をなくしてしまおうという対処法です。たとえば、いじめがストレッサーになっているのなら、その加害者に働きかけることで、問題となっている点を解決に向かわせるということをします。しかし、実行が難しい場合も多いことが難点です。
■社会的支援探索型コーピング
ストレスの原因となっている刺激や出来事に直面した際に、周囲の人に相談し、アドバイスを得ることで問題を解決しようという方法です。いじめの例で言うならば、加害者と被害者の共通の友人に相談を求めることが含まれます。
2-2.情動焦点型
情動焦点型とは、ストレッサー自体ではなく、ストレッサーが与えられることによって生じた感情をコントロールする考え方です。個人に生じた激しい感情や苦しい感情などを抑え、それらが生じた原因への注意を緩和することが目的です。
■情動焦点型コーピング
ストレッサーによって傷ついたり、悲しんだりした感情を、誰かに話をすることで表出させます。その気持ちを相手にしっかりと聴いてもらうことにより、感情の整理や発散をさせるという方法です。
■認知的再評価型コーピング
ストレッサーとなる原因を変化させるのではなく、ストレッサーに対する捉え方や考え方を修正するという対処法です。ストレッサーから感じる悪い点だけではなく、良い点も探し出してみたり、今まで気づかなかった価値を見いだしたりすることで、自分自身の認知のゆがみを変えていくという考えに立ちます。
2-3.ストレス解消型
ストレス解消型とは、ストレッサーにさらされたときではなく、それによるストレスを感じてしまった後に、ストレスを身体の外へ追い出したり、発散させたりする対処法です。この方法は、私たちがストレス解消のために無意識に行っていることも多いといわれています。
■気晴らし型コーピング
気晴らし型コーピングは、ショッピングに行ったり、美味しいものを食べたり、音楽を聴くなど自分が好きなことを行い、気分転換を図ることでストレスを解消する方法です。これは、特にめずらしいものではなく、私たちが日常的によく試す対処法だと言えます。
■リラクセーション型・その他コーピング
最近、「リラクゼーション」という言葉をよく聞くようになりました。「リラクゼーション」もストレスコーピングの1つです。たとえば、感情が高ぶっているときに、体操などで身体の緊張を緩めていくと、感情も穏やかになっていきます。リラクゼーションを日常生活の習慣にすると、ストレス耐性が高まるという効果もあるようです。
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3.種類別!ストレスコーピングの実践方法
ストレスコーピングの種類について大まかにお話ししてきましたが、日常生活でそれらを取り入れるには、具体的にどのような実践をすれば良いのでしょうか?種類別に見ていきましょう。
3-1.問題焦点型コーピングの実践方法
問題焦点型コーピングは、ストレッサーそのものに焦点を当て、それを変化させるように働きかけることで問題を解決したり、対策を立てたりする方法です。そのため、状況さえ整っていれば、一番スムーズに解決できることが多いとされています。たとえば、アパートの隣の住人の騒音がうるさく、睡眠不足でストレスを抱えているという場合に、隣の住人に「睡眠が妨げられているので、夜は静かにしてほしい」と丁寧に直接伝え、相手に理解してもらうことで問題を解決するという方法が挙げられます。ただ、直接ストレスの源となっている原因にアプローチする必要があることから、状況や立場によっては実践することが難しい場合もあります。
3-2.社会的支援探索型コーピングの実践方法
社会的支援探索型コーピングの実践方法としては、何かしらのストレスに直面して困っているときに、その状況について上司や同僚、家族や友人などに相談したり、アドバイスを求めることが挙げられます。1人で問題を抱え込むよりも、相談できる相手に対して、ストレス状況について話し合うことで、解決法や対策が見出されることもあります。
3-3.情動焦点型コーピングの実践方法
ストレスの原因となっている問題自体を取り除くことは難しいにしても、家族や友人などの親しい人やカウンセラーなどに話を聞いてもらうことで、自分の感情を素直に表現でき、ストレスを発散させることが可能となります。また、それを通して、気持ちの整理がつくことも多いとされています。
3-4.認知的再評価型コーピングの実践方法
ストレスを感じていると、ストレッサーを今までのまま受け入れることは難しいものです。そのような場合には、直面している問題に対する考え方を変えることで、新しい発想や見方ができるようになることも多いといわれています。そうすることで、新しい適応方法を探すことが大切です。たとえば、上司に怒られたことでストレスを感じていても、「上司が自分に注意をしてくれたのは、自分のことを大切に思ってくれているからこそだ」という考え方に修正することで、ストレスの量を軽減することができるかもしれません。
3-5.気晴らし型コーピングの実践方法
気晴らし型コーピングは手軽に行うことができ、こまめに実施することも可能です。ストレスを感じたとき、親しい友人とカラオケに行き、大好きな歌を歌うことでストレス発散をさせたり、近場でも構わないので泊りがけで温泉旅行などに行き、日常生活から離れて気持ちをスッキリさせることも良いでしょう。
3-6.リラクゼーション型・その他コーピングの実践方法
リラクゼーション型コーピングとは、ヨガを行ったり、ストレスに効果的な呼吸法や自律訓練法を実践したり、アロマなどを使ったりしてストレスに対処する方法です。特に、身体に現れる肩こりや頭痛などのストレス反応に効果が高いといわれています。なかでも有効なのが、呼吸法のひとつである腹式呼吸です。腹式呼吸を2分程度行うことで、自律神経のバランスを整えることが期待できます。
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4.ストレスコーピング実践の流れ
ストレスコーピングは、複数の手法を組み合わせて行うとより効果的です。以下の3つのステップに沿って行うと良いでしょう。
4-1.コーピングリストを作成する
コーピングリストとは、ストレスへの対策や解消方法をリスト化したものです。自分が何にストレスを感じているのかを洗い出した上で、ストレスの解消やリフレッシュができる方法について1つずつ書き出していきます。数が多ければ多いほど効果が高いとされています。
できるだけ自分がポジティブな状態のときにリストを作成した方が、多くの対策対応方法を書き出せます。
4-2.コーピングを実践する
ストレス反応が起きたら、コーピングリストに基づいて実際にコーピングを行っていきます。ストレスを感じたらできるだけ早くコーピングを始めることが重要です。
ストレッサーは具体的にどのようなものかや、精神的な辛さを感じているのか、頭痛や吐き気など体調の変化まで生じているのかなど、ストレスの度合いを客観的にモニタリングし、それに合った手法でコーピングを実践しましょう。
4-3.コーピングの効果を検証する
コーピング実施後は、その効果を検証します。コーピング前と比べてストレスの軽減を実感できたなら、効果があったといえます。
逆にストレスが軽減した実感を持てなかった場合は、別の方法を試してみましょう。最適な方法が見つかるまで、様々な方法を試します。「10点満点中何点だったか」など、方法ごとに数値で評価すると比較しやすくなります。
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5.ストレスコーピングを実行するときの2つのポイント
ストレスコーピングは、ストレスを軽減させるために有効な方法として注目されています。より高い効果を得るために、ストレスコーピングを実行するときの2つのポイントをご紹介します。
5-1.問題全体を把握するために人へ相談する
私たちがストレス状態にあるときは、心身のバランスが崩れ、正常な判断ができない場合も多いものです。そのため、ストレスコーピングを実践しようと思っても、頭の中が整理できずに、どのように進めて良いのか現状を客観的に把握できないこともあるといわれています。
ストレスコーピングを実践する前は、家族や親しい友人、カウンセラーなどの専門職者に、自分が現在苦しんでいるストレス状況を伝え、じっくりと話を聞いてもらいましょう。そうすることで、第三者の意見を参考にできますし、冷静に自分の抱えている問題を整理するきっかけにも繋がります。
5-2.問題を解決したいという意識をもつ
ストレスを抱えており、それを何とかしたいと思っていても、ただ漠然と感じているだけでは前向きな解決には至らない場合もあります。ストレスコーピングを実践するには、「自分自身が問題を解決するのだ」という強い意志を持ち、感じているストレスをしっかりと自覚することが大切です。曖昧な気持ちではなく、素直にストレス対策に向き合おうという気持ちが、効果の有無を左右することも覚えておきましょう。
私たちの日常生活には、人や物、環境など多種多様なストレッサーが存在しています。私たちがそのストレッサーにさらされてストレスを感じてしまうことは、決してめずらしいことではなく、当たり前のことだとも言えるのです。「ストレスを感じるのは、自分が弱いせいだ」と考えずに、ストレスのメカニズムをしっかりと理解し、上手にストレスコーピングを活用することで自分の心と身体を守っていきましょう。
ストレスの原因で「仕事」が思い当たる方は、体を壊す前に転職を検討しましょう。
まずは転職の無料相談をおすすめします。
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