シンギュラリティとは、人工知能(AI)が人間の知能を超えてしまう転換点を指します。シンギュラリティは人間社会に大きな影響を与えるとされますが、いつ起こるのか、また本当に起こるのかについては専門家の間でも見解が分かれています。そこで、この記事ではシンギュラリティの意味や起こるとされる時期をわかりやすく解説し、その影響についても紹介します。シンギュラリティについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
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1 シンギュラリティ(技術的特異点)とは
シンギュラリティ(技術的特異点)とは、人工知能(AI)が自己改善や自己増殖を行うことで、人間の知能を超える転換点を指します。英語では「Singularity」と表記します。
シンギュラリティの概念自体は、AI研究者の間で1980年代から認知されていましたが、その後ヴァーナー・ヴィンジ氏やレイ・カーツワイル氏によって一般社会にも広まっていきました。
シンギュラリティが到来すると、AIは加速度的に進化し、社会や経済、文化に大きな影響を及ぼすとされています。一方で、「シンギュラリティはありえない」と、その存在自体を否定する意見もあるなど、活発な論争が繰り広げられています。
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2 シンギュラリティはいつ起こる?
シンギュラリティがいつ起こるのかについては、さまざまな説があります。ここでは、それぞれの説について紹介します。
2.1 2045年に起こるとする説
シンギュラリティの提唱者として知られる米国の発明家レイ・カーツワイル氏は、自身の著書「The Singularity Is Near」において、2045年にはシンギュラリティが起こると記しています。この説は「2045年問題」として世界中に広まりました。
カーツワイル氏は、技術の進化が指数関数的に加速しているとし、2029年にはコンピューターの計算能力が人間の知能と同じくらいになり、2045年には1000ドルのコンピューターの計算能力が人類の知脳の100億倍に達すると主張しています。
2.2 2045年以外に起こるとする説
時期に関しては、レイ・カーツワイル氏の2045年説以外にもさまざまな説があります。代表的なものとして、「シンギュラリティ・サミット」でスチュアート・アームストロング氏が提唱した「2040年説」が挙げられます。
また、ヴァーナー・ヴィンジ氏は1993年に発表した著書「The Coming Technological Singularity」において、「30年以内(2023年まで)に人間は超人間的知性を創造する方法を生み出すが、人類の時代は終わりを迎える」と記しています。
今現在シンギュラリティは到来していないものの、実際にAIの発展は加速していることから、時期についての議論は活発化しています。
2.3 2030年頃起こるとされるプレシンギュラリティ(前特異点)とは
プレシンギュラリティ(前特異点)は、シンギュラリティに至る前段階を指し、AIが人間社会に大きな影響を与え始める時期です。もし、2045年にシンギュラリティが到来するのであれば、プレシンギュラリティは2030年頃に起こるとされています。
実際にプレシンギュラリティが起こると、社会には以下のような変化があると言われます。
- 貨幣がなくなる:生活必需品は無料で入手できるため
- エネルギーや食料問題が解決する:いずれも無償で提供されるため
- 労働が必要なくなる:価値観が変化するため
- 戦争がなくなる:資源問題や経済格差がなくなるため
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3 シンギュラリティの根拠と言われる2つの法則
シンギュラリティが起こるとされる根拠として、「ムーアの法則」と「収穫加速の法則」という2つの法則が挙げられます。それぞれの意味を解説します。
3.1 ムーアの法則
ムーアの法則とは、半導体業界の発展を予測する法則で、集積回路上のトランジスタ数が18ヶ月ごとに倍増するという経験則です。この法則はインテルの共同創業者ゴードン・ムーアによって1965年に提唱され、コンピューターの処理能力が指数関数的に向上する根拠とされてきました。
しかし、ムーアの法則には近年懐疑的な意見が多くなっています。中には、「現在の処理能力の変化は毎年数パーセントで、10年単位でもせいぜい2倍程度である」という声もあります。
3.2 収穫加速の法則
収穫加速の法則は、2045年問題を提唱したレイ・カーツワイル氏が生み出したものであり、「技術進歩において、性能は直線的ではなく指数関数的に向上していく」という内容です。
例えば、コンピューターの性能向上が新たなAIの進歩を促し、さらに効率的な技術開発が可能になるといった具合に、技術革新が自己強化的に加速していくメカニズムを指します。この法則によれば、未来の技術革新は今よりもずっと速いペースで進むと予測されます。
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4 シンギュラリティは来ないと言われる理由
到来が予測されるシンギュラリティですが、一方で「来ない」「ありえない」とする声も聞かれます。シンギュラリティが来ない理由として、まずAIが人間のような自我や欲求を持つことは証明されていないことが挙げられます。
また、人間の「知性」「意識」「直感」といった側面は、まだ科学的に解明されていない感覚的なものであり、AIがこの仕組みを理解し再現するのは現実に困難だという考えもあります。
さらには、強力なAIが生まれることに対する社会的な不安や倫理的な問題が大きいことも、シンギュラリティの到来を否定する根拠となっています。
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5 シンギュラリティの到来で予想される未来
賛否両論あるシンギュラリティですが、もしも実際に起こったとすると、どういった未来が予想できるのでしょうか。
5.1 雇用の減少
シンギュラリティが起こると、AIやロボットによってさまざまな業務を自動化できるようになるため、雇用の減少が懸念されています。特に、ルーチンワークやデータ分析、製造業務などはAIに置き換えられる可能性が高く、これまで人間が行ってきた仕事が減少する恐れがあります。
シンギュラリティがもたらす変化は職場全体に波及するため、スキルの再教育や職業訓練が重要となり、労働市場は大きな変化を迎えるでしょう。
5.2 ベーシックインカムの導入
ベーシックインカムとは、すべての人に一定額の生活費を無条件で支給する制度です。シンギュラリティによって雇用が減少すると、職に就けない人が増え、経済的な不安が広がってしまいます。
そこでベーシックインカムが導入されれば、最低限の生活保障が得られるため、人々は生計のために従来の仕事に依存せず、プライベートな活動に時間を使うことが可能となります。
ただし、ベーシックインカムには、財源の確保や経済全体への影響などの課題もあります。そのため、シンギュラリティ時代に備えて、どのような形で社会保障を整えるかについての議論が求められています。
5.3 人工臓器など医療技術の発展
シンギュラリティが起こると、医療分野での革新が飛躍的に進むことが期待されます。例えば、「3Dプリンターやバイオマテリアル技術の組み合わせにより、高度な人工臓器が実用化する」「幹細胞を用いた再生医療がさらに発展し、臓器移植を必要としない治療が可能になる」といったことが考えられています。
また、予防医療の精度も高まり、寿命が大幅に延びる可能性もあります。シンギュラリティがもたらす医療技術の発展は、従来の医療の枠を超え、より健康で長寿な社会の実現に貢献するでしょう。
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6 シンギュラリティの到来後も役立つスキル
シンギュラリティによって雇用の減少が懸念される中、AIでは代用できない人間独自のスキルを高めることが重要だと言われます。シンギュラリティが起きても役に立つのは、一体どのようなスキルなのでしょうか。
6.1 柔軟な思考力と適応力
人間は直感や経験、感情などから柔軟な思考力を育み、独創的なアイデアを生み出すことができます。一方、AIは既存のデータに基づいて学習し、そこから予測や判断を行いますが、真に新しいアイデアを生み出す能力には限界があります。
また、AIは文化的背景のある複雑な文脈を理解したり、予測不可能な変化へ迅速に対応したりするのが苦手です。このことから、柔軟な思考力と適応力を身につけることが重要であると言えます。
6.2 コミュニケーション能力
AIは、自然言語処理技術を用いてテキストを理解したり生成したりすることができます。これらの技術は、近年チャットボットや音声アシスタントに導入され、基本的な会話や情報の伝達は難なくこなします。
ただし、人間の感情や微妙なニュアンスを理解する能力には限界があります。人間同士のコミュニケーションでは、声のトーン、表情、ボディランゲージなどが重要な役割を果たしますが、AIはこれらの非言語的要素を完全には理解できません。
そのため、シンギュラリティの到来に備えて、人間ならではの感情に基づくコミュニケーション能力を高めておく必要があります。
6.3 倫理的な判断力
倫理的判断は文化や社会、個人の価値観に大きく依存します。また、感情や共感といった人間しか持たない要素も、倫理的な判断を下すためには必要不可欠です。
さらに、倫理的な判断を行う際には結果に対する責任が伴いますが、AIが判断を下した場合、その結果に対する責任を誰が負うのかという問題も存在します。
一部の研究では、AIに倫理的なガイドラインをプログラムする試みが進められているものの、人間の持つ倫理的判断力を完全に再現することは、現在の技術では難しいと考えられています。
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7 まとめ
シンギュラリティとは、AIが人間の知能を超え、自らの進化を加速させるポイントを指す言葉です。レイ・カーツワイル氏は2045年頃にシンギュラリティが訪れると予測しており、人間の生活や社会に劇的な変化をもたらすと考えられています。
シンギュラリティが実現すると、医療・教育・ビジネスなどの分野で革新的な技術が登場し、経済や社会の構造が大きく変わる可能性があります。一方、シンギュラリティは起こらないという声もあり、賛否が分かれる重要なテーマとなっています。
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