深耕営業とは、既存顧客にアプローチをするため、営業の難易度が低く、成約につながりやすい営業手法です。今回は、深耕営業の詳細や一般営業との違い、重要性について解説します。
併せて、深耕営業を成功させるコツや、求められるスキル、向いている人の特徴もまとめました。「いまよりもっと成果を上げたい」「深耕営業は自分に向いているのかな?」と考えている人は、ぜひ本記事をお役立てください。
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1. 深耕営業とは?
深耕営業とは、既存顧客に対して継続的なフォローを行う営業手法のことです。信頼関係の構築や、利益の向上を図ることを目的として行われます。
すでに取引関係にある既存顧客の潜在的な需要を引き出して、適切なタイミングで自社製品やサービスを提供することが特徴です。
ひとくちに「営業」といっても、一般営業や新規営業、ルート営業などに大別されるので、深耕営業との違いをそれぞれ解説します。
対象 | 目的 | |
深耕営業 | 既存顧客 | 既存顧客との信頼性を高め、利益の向上につなげる |
一般営業 | 新規顧客 | 新規開拓をして新たな取引に結びつける |
新規営業 | 新規顧客 | 新規開拓をして新たな取引に結びつける |
ルート営業 | 既存顧客 | 既存顧客との信頼性を高め、利益の向上につなげる |
1.1. 一般営業との違い
深耕営業は、既存顧客をターゲットとしているのに対し、一般営業は新規顧客の開拓が中心です。
一般営業の場合は、これまでに取引がない相手にセールスを行うので、深耕営業よりも難易度が高いと言えるでしょう。
1.2. 新規営業との違い
一般営業と新規営業は、どちらも同じ意味を持っており、新規顧客の開拓を目的としています。
つまり、「一般営業=新規営業」というように言い換えられるため、深耕営業との違いは目的とターゲット層です。
新規営業は、新規顧客をターゲットとし、新たな取引に結びつけることが目的になります。それに対し、深耕営業は既存顧客向けの営業活動で取引の拡大が目的です。
1.3. ルート営業との違い
ルート営業とは、すでに決まっているルートに沿って既存顧客へのフォローを行います。既存顧客にアプローチをして、自社との取引を拡大するという点は、深耕営業と同じです。
しかし、ルート営業は「あらかじめ定められたルートどおりに既存顧客を訪問して営業活動する」ことを意味します。
【関連記事】「「できる営業になるための4つのステップとセールスプロセス」第2回 人間関係づくりのステップ」
2. 深耕営業の重要性とメリット
深耕営業の重要性やメリットを把握したうえで、営業活動を行うことが大切です。
2.1. 営業効率を高められる
「深耕営業」は、営業効率を高められることが大きなメリットです。企業の安定的な売上を確保するためには、既存顧客への営業が必須だとされています。
その根拠となるマーケティング法則(1:5の法則/5:25の法則)が2つあるので把握しておきましょう。
「1:5の法則」とは、新規顧客を獲得するには、既存顧客の5倍のコストが発生するという法則です。新規顧客は、獲得コストが高いのに利益率が低いため、既存顧客の維持に注力することも大切だという考え方になります。
また、「5:25の法則」とは、顧客離れを5%改善すれば、利益率が25%改善されるという法則です。
これらの法則を考慮すると、新規開拓だけでなく、定期的に既存顧客へ営業をして、取引を拡大させていく方が効率的だと言えるでしょう。
2.2. 新規案件につながる
複数回にわたり既存顧客を訪問するため、クライアントの新たなニーズを発掘できる可能性が広がります。
例えば、製品Aだけを使用しているクライアントの悩みを聞いているうちに、製品Bも組み合わせて使用した方が課題解決につながる場合は、スムーズに提案できるでしょう。
クライアント側から「(自社の)ほかの製品やサービスも使ってみたい」と言ってもらえるケースもあります。
また、「顧客の要望から新たな製品・サービスが生まれた」といった場合もあります。新たなビジネスチャンスを逃さないためにも既存顧客との深い関係性を築いておくことが重要だと言えるでしょう。
2.3. クライアントのニーズを再確認できる
商談や訪問の回数を重ねていくうちに、クライアントのニーズを再確認できるケースもよくあります。
クライアントが「求めていることは何か」「本当に必要なものは何か」など、ニーズを再確認できるので、もし現在提供しているサービスや製品にズレがあるなら再提案することも可能です。
また、クライアント自身も気づいていない潜在的なニーズを引き出し、新たな取引が開始するケースもあります。
顧客が抱える課題を見つけ出し、本質的な問題解決をすることでさらに、企業価値が高くなるでしょう。
【関連記事】「できる営業マンになる!その特徴や実践すべきテクニックを紹介」
3. 深耕営業で求められるスキル
深耕営業は、既存顧客のもとに定期的に足を運び、信頼関係を築き上げ、課題解決に務めることが主な仕事です。深耕営業は、業務プロセスのなかで下記の3つのスキルが必須と言えるのでぜひチェックしてみてください。
● コミュニケーション力
● ビジネスマナー
● 臨機応変に対応できる力
3.1. コミュニケーション力
深耕営業は、顧客と意思疎通を図る必要があるので、コミュニケーション能力が必須です。既存顧客との信頼関係を構築し、課題発見〜解決するまでの一連の流れでは、継続的なコミュニケーションが必要になります。
また、深耕営業に限らず、営業活動全般において、コミュニケーション能力は必要であり、常に磨き続けなければならない能力だと言えるでしょう。
3.2. ビジネスマナー
営業職に限らずですが、社会人として基本的なビジネスマナーを身に付けておくことが大切です。どれだけ人柄がよくてもビジネスパーソンとしてのマナーが身に付いていない人は、信頼してもらえない可能性があります。
とくに深耕営業は、定期的に訪問し、やり取りを繰り返し行うため、基礎からしっかりとビジネスマナーを習得しておく必要があります。
営業活動を行う前に把握しておきたいビジネスマナーの一例をまとめたので、不安な方はチェックしてみてください。
ビジネスマナー | ポイント |
---|---|
身だしなみ | ● 清潔感のある髪型・ヘアカラー ● ビジネスに相応しい清潔感のある服装 ● 爪をきれいに切り揃える ● 派手なアクセサリーを付けない ● メイクはナチュラルに仕上げる ● 臭い対策をする |
敬語 | ● 「了解しました」ではなく「承知しました」 ● 「ごめんなさい」ではなく「申し訳ございません」 ● 「ご苦労様です」ではなく「お疲れ様です」 |
名刺交換 | ● 名刺交換は立って行う ● テーブル越しに受け渡しはしない ● 受注側が先に名刺を差し出す ● 両手でしっかりと受け取る |
訪問時 | ● 待ち合わせ時刻の10分前には到着しておく ● 訪問先に入る前にコートを脱ぐ ● 鞄を床に置く |
メール・電話 | 【メール】 ● 宛先(To・Cc・Bcc)を正しく使い分ける ● 具体的な件名を入力する ● 添付ファイルの取り扱いに注意する ● メールには必ず署名を付ける 【電話】 ● 事前に要件を整理しておく ● かける時間に注意する ● 静かに電話を切る |
3.3. 臨機応変に対応できる力
深耕営業は、クライアントの要望や状況に応じた対応を取る能力が求められます。
毎回同じような提案をしていては、他に提案できることはないのか、改善すべきことはないのかと思われてしまいます。クライアントが抱えている課題に適した対応をとるように心がけましょう。
顧客の状況や課題に合わせて、さまざまな視点からアプローチできると良いでしょう。
【関連記事】「交渉上手になりたい! 営業以外でも役立つ""交渉力""を高めるための5つのポイント」
4. 深耕営業に向いている人の特徴
深耕営業に向いている人には、いくつか共通した特徴があります。ここでは、深耕営業に向いている人の特徴を4つに分けてご紹介しますので、チェックしてみましょう。
4.1. 物事を多角的に見られる人
物事を多角的に見たり、考えたりできる人は、深耕営業が適職だと言えるでしょう。深耕営業をしていると、臨機応変に対応しなければならないシーンがたくさんあります。
例えば、「クライアントにこうして欲しいと言われたけど、在庫がないから断った」というように柔軟な対応ができなければ、顧客からの信頼を損なう可能性もあります。
多角的に物事を捉えられる人は、行き詰まりを打開したり、新たな可能性を見出し、創造的な問題解決ができたりと、柔軟に対応することが可能です。
一方で、ルールに縛られていたり、常識に囚われていたりする人には、顧客の求めていることを十分に満たせない可能性があります。
4.2. 話を聞く能力が高い人
ヒアリング力が高い人は、深耕営業に向いているといえます。深耕営業は、顧客との会話から「求めていること」「困っていること」を引き出して、提案することが大切です。
顧客の本音を引き出し、小さなヒントから課題点を明確にして、それを解決することが求められています。
4.3. 課題発見力がある人
課題発見力がある人は、深耕営業で成果を発揮できるでしょう。単にヒアリング力に優れているだけでは、課題を見出すことができません。顧客から得た情報のなかから、「何を求めているのか」という課題に気づける発見力が必要になります。
クライアントが抱えている悩みは、表層的なものばかりではなく、深層的な課題が多い傾向にあります。そのためクライアント自身も課題に気づいていない場合があるのです。
深層的な課題を見つけて解決へと導けば、顧客満足度が高まるので、課題発見力に長けている人は深耕営業に向いているといえます。
4.4. 情報収集能力がある人
深耕営業では、効率よく質の高い情報を入手できる能力のある人が求められます。
情報収集能力に長けている人は、業務のスピードが早く、判断力の精度が高いため、スムーズに課題解決へと結び付けられます。
顧客が抱える課題解決の糸口を見つけられたり、素早い対応ができることで、顧客の満足度や信頼関係を高めることができるでしょう。
5. 深耕営業を成功させるためのコツ
深耕営業を成功させるためには、これから紹介する5つのコツを押さえておきましょう。
ポイントを意識しながら営業活動を行い、成果に結び付けましょう。
5.1. クライアントの目標を明確にする
どの営業活動にも言えることですが、はじめにクライアントの立場に立って、現状の課題と目標を明確にさせます。
既存顧客を訪問し、自社の製品やサービスを一方的に売り込むだけでは、良好な信頼関係を築けません。
まずは、クライアントが「どのような悩みを抱えているのか」「何に困っているのか」を見極める必要があります。
貴重な時間を割いてもらっていることを意識しながら、クライアントにとっての最善策を考えましょう。
5.2. 目標に適した計画を立てる
営業職は、顧客目線を意識しながら、ノルマの達成や、売上の確保について考え、行動する必要があります。
闇雲に行動をしてしまうと、いつまでに売上を獲得しなければならないのかが見えにくくなるので、目標達成が難しくなるでしょう。
目標から逆算して、月単位・週単位・日単位のスケジュールを落とし込み、自分がいまどのような営業活動を行うべきか確認しながら行動することが大切です。
5.3. クライアント情報を常に更新する
クライアント情報は、常に更新するようにしましょう。クライアントが抱える課題は流動的なので「常に同じ内容に悩まされている」というケースは少ないです。
商談や訪問するたびに情報を新しく書き換えて「いま、求めていること」「現時点で困っていること」に着目することが大切です。
また、ほかの社員が自分の担当するクライアントと接触し、対応を行った場合は、その内容も詳しく把握しておきましょう。
「この悩みは別の人が解決してくれた」「この前も同じことを伝えた」「連携がとれていないのかな」などとクライアントに思われないように先回りして行動する必要があります。
5.4. 議事録を細かく記録する
既存顧客の情報は、訪問や商談のたびに細かく記録することが大切です。例えば、「クライアントのいまの悩みは何か」「どのような状況にあるのか」など会話から分かったものをすべて議事録に記録しましょう。
顧客情報を細かく記録することで、クライアントの求めていることを正確に把握したうえで、効果的な提案や交渉ができます。課題解決の糸口が見出すことができるので、クライアントの悩みをスムーズに解消へと導けるでしょう。
5.5. クライアントとの信頼関係を築く
深耕営業は、既存顧客と良好な関係を築くことが重要なポイントです。すでに取引が行われているなら、ある程度の信頼関係を築けている状態と言えますが、もう少し歩み寄れば、さらなる売上向上につながる可能性があります。
クライアントが抱える悩みを解決へと導いたり、接触回数を増やして親近感を与えたりするとよいでしょう。
また、日頃からこまめに連絡をする、あるいは小さな依頼でも迅速に対応するなど、クライアントを大切にしていることを行動で示すと伝わるはずです。
【関連記事】「【営業に向いていない】もしかして思い込み? 適性を知り営業スタイルを築く方法」
6. まとめ
深耕営業は、既存顧客との関係性を深めながら、売上向上につなげる営業手法です。すでに顧客との関係性ができているため、新規開拓よりも営業効率がよいことが特徴です。
しかし顧客からの信頼を損なうことが発生すれば、契約終了になる可能性もあるので慎重に関係性を構築していく必要があります。顧客の潜在ニーズを引き出したり、信頼構築のために柔軟に対応したりすることが得意な人には適職だと言えるでしょう。
ひとくちに「営業」といっても、深耕営業のほか、ルート営業や新規開拓営業などさまざまな手法があり、顧客へのアプローチ方法や求められるスキルが異なります。営業職への転職を検討する際には、自分に合ったものを選択できるようにエージェントにご相談ください。
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