Webメディアの世界で仕事をしていて「キュレーションサイト」という名称を聞いたことがある方も多いと思います。今回は「キュレーション」のもともとの意味や「キュレーションサイト」の主な内容やメリット、運営する際の注意点などについて解説します。
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1.キュレーションとは
キュレーション(Curation)とは、美術館や博物館などで収集品の研究をすることです。
元々は美術館、博物館、図書館などの学芸員=キュレーターの業務のことでしたが、展覧会などの展示企画を担当することが多くなり、特定の視点で対象物を収集、選別、編集して新しい価値を持たせることで展示をする業務を指すようになりました。
そこから転じて、インターネット上で情報を収集し、整理して、提示するサイトのことをキュレーションサイト、キュレーションメディアと呼ぶようになっています。
日本では「まとめサイト」と呼ばれることもあります。
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2.なぜキュレーションサイトが広がったのか
インターネットには膨大な情報が保存されています。その中から自分が必要としている情報を選ぶ方法は検索エンジンが主になっています。
検索エンジンはアルゴリズムにより情報を自動収集するため、時には目的にそぐわない情報も掲出されることもあり、利用者が情報を選別しなければならないこともあります。
一方、キュレーションサイトは、特定の領域の情報を、キュレーター独自の価値判断で整理、収集します。
キュレーターの視点と自分の視点が合致するなら、キュレーションサイトで自分の求めている情報を読むことができる場合もあります。
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3.キュレーションサイトのビジネスモデル
キュレーションサイトには独自の記事もありますが、多くのコンテンツは他のサイトの記事の紹介で構成されます。
契約をして、他サイトから転載をしている場合もありますが、公開されているリンクを貼るだけであれば著作権侵害にはならないために、承諾を得ずに記事を収集しているケースもあります。
利用者はその中から読みたい記事を探し、必要があればリンクから外部サイトにアクセスをして元記事を読むと言う使い方になります。
キュレーションサイトは主に以下のようなビジネスモデルで運営されています。
3.1.オウンドメディアモデル
企業などが、自社の製品やサービスに関連したキュレーションメディアを運営するケースです。
オウンドメディアを立ち上げ、独自記事を掲載し、製品やサービスの購入に結びつけるということは多くの企業が行なっていますが、独自記事を用意するにはコストも時間もかかります。
一方、キュレーションメディアは他サイトのコンテンツを紹介するものなので、短期間に低コストでコンテンツをそろえることができます。
また、ニュース記事をキュレーションすることで、オウンドメディアの新鮮さを保ことができ、リピーターを育てることも可能になります。最終的には、製品やサービスの購入に結びつけるのがねらいです。
3.2.広告+有料モデル
キュレーションメディアを運営し、多くのメディアと同じように、広告収入や有料会員による課金収入で運営をします。
キュレーション記事は無料にして、独自記事を読むには有料会員登録が必要というケースが多いようです。
3.3.UGCモデル
UGC(User Generated Contents)とキュレーションメディアを合わせたようなプラットフォームです。一般には「まとめサイト」「まとめサービス」などと呼ばれます。
利用者は、テーマに沿って、外部記事を収集し、整理をして、リンク集のような形でプラットフォームに投稿をします。読者は膨大な数のまとめ記事の中から興味のあるものを見つけて読みます。
収入の源泉は広告で、広告収入はプラットフォームとキュレーションをした利用者の間でシェアをされます。広告費を稼ぎたいと考えるキュレーターが大量にまとめ記事を投稿してくれるため、プラットフォームの規模も短期間に拡大することが可能です。
3.4.コミュニティーモデル
ニュース系のキュレーションメディアに多いのですが、コメント欄が充実しているというものです。利用者は、ニュース記事を読むこともよりも、コメントを書くことやコメントを読むことを目的としてアクセスをします。
コミュニティーが成立することで大量のアクセスを期待することができるようになり、広告収入などで運営されます。
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4.キュレーションサイトの運営側のメリット
キュレーションサイトを運営する企業側には次のようなメリットがあります。
4.1.低コストでメディアが運営できる
メディアというのは独自の記事を制作して配信するのが基本ですが、それには人手も時間もかかり、経験も必要となります。
一方で、キュレーションメディアであれば、キュレーターが外部サイトから優良な記事を探してくることでメディアを充実させることができます。
4.2.情報の多様性を確保できる
キュレーターは独自の視点で記事を選んできますが、特定の視点だけでなく、多様な視点で記事を選別することも可能です。
このような編集を行うことで、メディアの視点に多様性を持たせることができます。このようなメディアは多くの人にアクセスしてもらうことが期待できます。
4.3.SEO対策になる
グーグル検索は、情報の更新頻度が高いサイトを検索上位に表示する傾向があります。キュレーションサイトの場合、関連するニュース記事のリンクを掲載することで、高頻度の更新が可能になります。
これにより、検索上位に表示される可能性が高くなり、検索流入によるアクセスが期待できます。
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5.キュレーションサイトの運営側が注意すべき点
製品やサービスのプロモーションサイト、集客サイトとしてメリットが多いキュレーションサイトですが、注意すべき点も存在します。
しかも、その中には致命的なものもあり、ひとつのミスで、キュレーションサイトを閉鎖せざるを得なくなることもあります。
キュレーションサイトを円滑に運営するには、このような注意すべき点に対する対策が必須になります。
5.1.記事の品質が低下する可能性
キュレーションサイトは外部記事の収集だけでは差別化ができなくなります。特にライバルのメディアが登場して競争が始まると、どちらも同じような優良記事のリンクを掲載することになってしまいます。
そこで、独自記事を制作して掲載することになりますが、制作コストを抑えるために、専門知識のないライターに記事を制作させるということになる場合もあります。
そのようにしてできた記事は、記事としての価値は低いものになります。
このような記事が多くなると、メディアとしての品質に疑いを持たれることになり、次第に読者が離れていくことになります。
5.2.誤った情報の配信
独自記事を制作する時に要なのが情報の正確性です。
専門知識のないライターが記事制作をする場合、誤った情報が記述されているとそれがそのまま反映されてしまいます。
また、記事をリライトする際、最初の記事では正しい情報であったものが、改変をしたことにより誤った情報になってしまうこともあります。
これが、健康や金銭などに関する記事であった場合、記事を信用した人が直接的な被害を受けることも想定されるため、多方面から非難されることになり、メディアの責任が問われることになります。
編集体制を確立するだけでなく、専門知識をチェックする校正チームを用意することも必須になります。
5.3.著作権侵害の問題
外部サイトの記事のリンクを貼るだけでは著作権侵害になりません。
しかし、リンクだけでは、読者がどのような記事であるのかがわかりづらいため、記事の冒頭部分などを"引用"して紹介するのが一般的です。
しかし、これが引用に当たるかどうかについては常に議論があります。
引用については、著作権法32条に定められています。
「...(前略)。その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」。
つまり、オリジナルの記事があり、その記事の論旨を伝えるために必要不可欠な引用が引用として認められます。オリジナルの記事が主でなければならないのです。
引用は何文字以内であればOKというものではなく、「正当な範囲内」でなければなりません。何が正当かという解釈は、引用をされる側と引用をする側でしばしば異なります。
キュレーションサイトの場合、リンク先の元記事の権利者からクレームがあった場合は、その要望に応じて対処できる体制を整えておくことが大切です。
また、法的なクレームを受けたり、場合によっては訴訟を起こされたりする場合もあるため、法務的な体制を整えておくことも必要になります。
最も安全なのは、あらかじめ権利者に連絡をとり、リンクと引用の許諾を得ておくことです。このような法務事務を担当する体制も必要になります。
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6.まとめ
キュレーションとは、美術館や博物館などで収集品の研究をする学芸員のことから転じて、インターネット上で情報を収集し、整理して、提示するサイトのことをキュレーションサイト、キュレーションメディアと呼ぶようになっています。日本では「まとめサイト」と呼ばれることもあります。
キュレーションサイトはアクセスを集めやすく、製品やサービスのプロモーションサイトとしてうってつけですが、安易な体制で運営をすると、記事品質の低下、著作権侵害、誤情報の配信と、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。
運営をする場合は、あらかじめ、リスクに対して対処ができる体制を整えておくことが大切です。