住宅手当とはどんな手当?支給条件や相場について解説

住宅手当とはどんな手当?支給条件や相場について解説

住宅手当とは、勤めている会社に住宅費用を補助してもらえる福利厚生の制度の一つです。経済的な負担が軽減されるので、転職候補先として、住宅手当を受けられる会社を探している人も多いのではないでしょうか。

本記事では、住宅手当の制度概要や種類、相場、支給される人の割合、条件などを網羅的に解説します。

併せて、住宅手当が支給されるメリットとデメリットもご紹介するので、この制度を受ける前に両面を知っておきましょう。

1. 住宅手当とは

住宅手当とは、会社が家賃や住宅ローンの一部を支援する福利厚生の制度の一つです。企業が従業員の住宅費用を補助することから、「家賃補助」と呼ばれるケースもあります。

住宅手当は、法的に条件や上限金額が定められていないため、各企業が任意で支給することになります。

住宅手当の例)

● 賃貸物件における家賃を一部負担するケース
● 持ち家の住宅ローン返済分を補助するケース

ただし、ここ数年では住宅手当の支給を廃止している企業もあります。住宅手当制度があることを転職先候補の条件に含めるなら、あらかじめ割合や支給額について確認しておきましょう。

1.1. 住宅手当の割合

住宅手当は、企業が負担する福利厚生費のなかでも、特に大きな割合を占める項目です。

一般社団法人日本経済団体連合会が調査した、「第64回 福利厚生費調査結果報告」によると、法定外福利厚生費の構成では住宅関連の費用が48.2%と約半数を占めていることが明らかになりました。

なお、法定福利厚生とは、法律で定められた福利厚生のことで、社会保険料の負担などが挙げられます。

一方、住宅手当が含まれる「法定外福利厚生」は、会社が独自で定める福利厚生のことです。転職先企業を見極める際には、法定外福利厚生の充実度を重視した方が良いでしょう。

【出典】一般社団法人 日本経済団体連合会「第64回 福利厚生費調査結果報告」

1.2. 住宅手当の必要性

会社の福利厚生に「住宅手当」は、どれくらいの割合で必要とされているのでしょうか。独立行政法人労働政策研究・研修機構の「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」のデータを参考にまとめました。

同調査では、働く人に対し「特に必要性が高いと思うもの」を聞いたところ、「人間ドック受診の補助」がもっとも多く、21.8%の人が必要だと感じていることがわかりました。

続いて「慶弔休暇制度」(20.0%)、「家賃補助や住宅手当の支給」(18.7%)の順に必要性が高いと回答されています。

全体的に健康管理や休暇制度に関する制度が目立っていましたが、そのなかで住宅手当は上位3位に含まれていることから必要性の高さが見て取れます。

【出典】「企業における福利厚生施策の実態に関する調査―企業/従業員アンケート調査結果―」

1.3. 住宅手当のメリット・デメリット

住宅手当は、従業員にとって利点しかないように感じますが、実はデメリットもいくつかあります。

これから「住宅手当がある会社へ転職したい」と考えている方は、メリット・デメリットの両面を把握しておきましょう。

1.3.1. メリット

住宅手当を受ける最大のメリットは、生活に余裕がでることだと言えるでしょう。住宅費は、支出のなかでも大きな割合を占めるので、住宅手当があれば家計の負担が軽減されます。

また住宅手当は給与に上乗せして支払われるため、総支給額が増え、金銭面の不安が解消されるでしょう。

1.3.2. デメリット

住宅手当は、給与として課税されるため、所得税や住民税、年金保険料、社会保険料などの負担額が大きくなる可能性があります。

そのため、ほかの税金への影響を考慮した上で、住宅手当の申請を行いましょう。

また、住宅手当は基本給には含まれないため、住宅手当の支給を受けて総支給額が増えても、残業代やボーナスが増額されることはありません。

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2. 住宅手当の支給額は減少傾向にある?

ここ数年、住宅手当の支給額は減少傾向にあります。企業にとって、住宅関連の負担額は非常に大きいため、法定外福利厚生費を見直す場合、真っ先に削られる項目だと考えられるでしょう。

一般社団法人日本経済団体連合会が調査した「第64回 福利厚生費調査結果報告」にある、「法定外福利費の動向」によると、企業が従業員一人当たりに支払う住宅手当の金額は減少傾向にあります。

2019年 11,639円
2018年 12,133円

2000年度以降の長期的な推移を確認してみても、減少に転じており、抑制傾向が続いていることが明らかになりました。

2010年より働き方改革関連法案が実施されたことをきっかけに、就業規則や賃金の見直しが求められるようになりました。それに伴い、住宅手当の廃止を検討する企業も増えているようです。

【出典】一般社団法人 日本経済団体連合会「第64回 福利厚生費調査結果報告」

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3. 住宅関連の手当や補助の種類

企業が従業員に提供している「住宅関連」の手当や補助には、いくつか種類があります。

ここでは、下記の4つの手当・補助について解説していきます。

● 住宅手当
● 家賃補助
● 社宅・社員寮
● 引越し手当

3.1. 住宅手当

住宅手当は、従業員が支払う住宅ローンの一部または全額を支給する福利厚生のことです。

企業は、従業員の毎月の給与に住宅手当の費用を上乗せして支払います。現金での支給となるので、給与と同じく課税対象となり、所得税や住民税、社会保険料などの計算対象となります。

3.2. 家賃補助

家賃補助は、賃貸マンションやアパートに住む従業員に対して、家賃の一部を補助する福利厚生です。

住宅手当と同様に毎月の給与に上乗せして支給額を負担します。現金での支給になるため、課税対象になる点に注意をしましょう。

家賃補助と住宅手当は、どちらも住居の費用を負担するという意味を持っていますが、家賃補助の場合は、賃貸契約者に対して支給されることが多いです。

一方、住宅手当は持ち家を保有している従業員に対しても支給されます。

3.3. 社宅・社員寮

社宅や社員寮は、従業員が個人で不動産会社と契約をするのではなく、企業が賃貸物件を購入または借り上げをして、従業員に提供する福利厚生の一形態です。

従業員は、直接不動産会社と契約するよりも安く住める点がメリットと言えるでしょう。

また、企業は要件を満たせば、福利厚生費として計上でき、企業資産としての扱いになるため節税対策にもつながります。従業員も一定の要件を満たすことができれば、給与としての課税対象外になるので、企業・従業員どちらにとってもメリットがあります。

【出典】国税庁「社宅に係る仕入税額控除」

3.4. 引越し手当

引っ越し手当は、引っ越しをする際に発生する費用の一部または全額を負担する福利厚生です。

これまでは、従業員の転勤や赴任に対して費用を負担する企業が多い傾向にありました。しかしここ数年では、企業のオフィス周辺に引っ越しをする従業員に対して、支給するケースも増えています。

企業にとっては、長期的に発生し続ける通勤費を軽減できることがメリットです。従業員・企業の双方がプラスになるので、引っ越し手当を採用する企業が増えています。

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4. 住宅手当が支給される条件

住宅手当は、各企業が任意で支給するため、条件や上限金額に法的な決まりがありません

しかし、多くの企業で導入されている条件がいくつかあるので、下記にまとめました。

● 正社員かどうか
● 持ち家・賃貸のどちらか
● 扶養家族はいるか
● 会社からの距離はどれくらいか

住宅手当の支給条件として、「正社員であるか」を重要視する企業が多いです。

とくに正規雇用の場合は転勤があるものの、非正規雇用の場合は転勤・赴任がない企業では、雇用形態によって住宅手当の有無が異なります。

また、「持ち家・賃貸のどちらか」「扶養家族はいるか」などの条件に応じて、支給額が変動する場合もあります。

基本的に上記の3つの要素で金額や支給の有無を決定する場合が多いと思いますが、オフィスから従業員の住居の距離で検討する企業もあります。

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5. 住宅手当の相場はどれくらい?

住宅手当の相場は、一般社団法人日本経済団体連合会の「2019 年度福利厚生費調査結果の概要」によると平均11,639円だと分かりました。

企業が負担した法外福利厚生費は、従業員1人に対して、1ヵ月間の平均24,125円となっており、そのうち11,639円は住宅関連の費用です。

ただし、住宅手当の支給額は企業によって大きく異なるので、参考程度に留めておきましょう。

なお、厚生労働省の「令和2年就労条件総合調査 第19表」によると、従業員の1ヵ月間の「住居に関する費用」は、平均2,509円となっていることから、住宅手当を受けられる企業は少数派だと考えられます。

相場である11,639円前後の手当をもらえる可能性は低いと言えるでしょう。実際に東京都産業労働局の「中小企業の賃金事情」に関する調査結果では、住宅手当を支給していない企業が57.1%と過半数を占めることが分かっています。

【出典】一般社団法人 日本経済団体連合会「2019 年度福利厚生費調査結果の概要」
【出典】厚生労働省「令和2年就労条件総合調査 第19表」
【出典】東京都産業労働局「中小企業の賃金事情」

6. まとめ

一口に「住宅手当」と言っても、現金支給のほか社宅を低家賃で借りられたり、引っ越し費用の一部を負担してもらったりといくつか種類があります。

住宅手当の相場は、一人当たり11,639円となっているので経済的な負担が軽減されるでしょう。

しかし、給与と同様に課税対象になる可能性があるので、総合的にどちらがお得なのか見極めることが大切です。

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