テレワークで通勤手当がなくなった!--コロナ禍の定期券や交通費の疑問にお答え

テレワークで通勤手当がなくなった!--コロナ禍の定期券や交通費の疑問にお答え

コロナがきっかけで、テレワークを導入する企業が増えました。中には、一時的な対応としてではなく、コロナが収束した後も継続してテレワークを認める方針の企業もあるようです。

毎日の通勤がなくなったことで、急に通勤手当が支給されなくなったり、通勤経路が変わったり、通勤回数が減って定期券が不要になったり、様々な変化が起きたことでしょう。それらの変化に対して、どのように対応すべきか戸惑うこともあるのではないでしょうか。

そこで、今回はQ&A形式でそんな疑問にお答えします。



Q1.テレワークが始まったら、急に通勤手当がなくなりました。なんだか損をしている気がします。通勤手当は必ずもらえるものではないのでしょうか。

通勤手当はもらって当然と思っている人は多いことでしょう。しかし、労働基準法などで通勤手当の支払いは義務付けられておらず、一般的には企業は従業員に通勤手当を支払う必要はありません。

通勤手当の支払い義務が生じるのは、会社の就業規則や賃金規程、雇用契約書に「通勤手当を支給する」と規定されている場合です。この場合、会社が任意で決めている金額を通勤手当としてもらう権利があります。

もしも急に通勤手当がなくなった場合、まずは会社の就業規則や賃金規定を確認してみるとよいでしょう。

Q2. 9月末で6カ月の定期券の有効期限が切れました。テレワークで出社する機会が減ったので、10月からは定期券を買わず、通勤にかかった費用は精算処理をして交通費としてもらっています。通勤手当と交通費で何か違いはあるのでしょうか。

交通費とは、営業や出張などの業務を行うために発生する移動費のことです。交通費は課税対象ではありません。

対して通勤手当とは、従業員の負担を減らすことを目的に、企業が任意で通勤にかかる費用を支給するものです。賃金の一部として扱われることから、非課税限度額を超える場合は住民税や所得税の対象となります。

従って、定期券を利用していたときの月々の通勤手当が非課税限度額以上の場合、税金が徴収されていたはずです。交通費としてもらうと、その分の税金がかからないことになります。

Q3.通勤ルートとして1路線のみを使った迂回ルートを会社に届け出ており、その定期券分の金額を通勤手当としてもらっています。テレワークで出社日数が減ったため、定期券は購入せずに、2社路線を利用した所要時間が短くて済むルートで出社するようになりました。今のルートの方が交通費は高いです。会社には報告をしていませんが、問題はあるのでしょうか。

届け出ているルートより交通費の安いルートを利用している場合、交通費を不正に多くもらっていることになり、詐欺と認められる可能性があります。また、場合によっては、就業規則の違反として解雇や懲戒免職の対象になることもあり得ます。

しかしQ3の事例では、届け出ているルートより交通費は高いとのことですので、その問題はないでしょう。

とはいえ、正しく報告すべきことに変わりはないため、早めに正確な情報を会社に報告するようにしましょう。

また、会社に届け出ているものと異なること自体が原因ではないのですが、届出と異なるルートでの通勤途中に事故にあった場合、通勤災害として認められない可能性があることは理解しておいた方がよいでしょう。

通勤災害として認められるのは、会社へ届け出た内容との一致・不一致に関係なく、合理的な経路・方法と認められた場合です。Q3の事例では、私用での寄り道などをしないで最短距離のルートを利用しているため、合理的と判断される可能性が高いのではないでしょうか。もしもスーパーマーケットや病院など通勤とは関係のない寄り道をした場合、その間に事故にあっても通勤災害の対象にはなりません。

Q4.休日も定期券の区間内を移動することが多いため、定期券を持っていたときは休日の交通費はあまりかかりませんでした。今はテレワークが中心なので定期券を購入する必要はないと思っていたのですが、休日にも定期券区間内を利用することが多いなら、もしかして定期券を購入した方がお得ですか?

条件によって、定期券を購入した方がお得になる場合とそうでない場合があります。具体的な例で考えてみましょう。

例えば、自宅の最寄り駅が土浦駅・会社の最寄り駅が東京駅であり、休日に上野駅と有楽町駅へ出かける場合は次のようになります。

・JRの定期券通勤1カ月を購入する場合

a. 通勤費: 定期代...33,470円

b. 休日の交通費1: 1カ月に4回上野に行った場合...aの定期区間内のため0円

c. 休日の交通費2: 1カ月に4回有楽町に行った場合...aの定期区間外となる東京・有楽町間の片道140円(きっぷの運賃)×2回(行きと帰り)×4日=1,120円

交通費の合計は、a+b+c=34,590円

・定期券を購入しない場合

d. 通勤費: 1カ月に8日出社した場合...片道1,170円(きっぷの運賃)×2回(行きと帰り)×8日=18,720円

e. 休日の交通費1: 1カ月に4回上野に行った場合...片道1,170円(きっぷの運賃)×2回(行きと帰り)×4日=9,360円

f. 休日の交通費1: 1カ月に4回有楽町に行った場合...片道1,340円(きっぷの運賃)×2回(行きと帰り)×4日=10,720円

交通費の合計は、d+e+f=38,800円

結果的に、この例では定期券を購入した方がお得と言えます。

【関連記事】通勤定期券って本当におトク?調べてみました!

まとめ

また、通勤頻度や休日の移動回数によっては、回数券や1日乗車券などを利用することで、交通費をより安くすることができるかもしれません。交通系ICカードの中には、独自のポイント制度を用意しているものもありますし、クレジットカードでICカードのチャージをすれば、クレジットカードのポイントを貯めることもできます。自分の生活に合わせて組み合わせ、最もお得になる方法を検討してみるとよいでしょう。

回遊舎(かいゆうしゃ)

"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。
近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。

この記事をシェアしよう!