【iDeCo】転職したらどうなる?ケース別手続き方法を解説

【iDeCo】転職したらどうなる?ケース別手続き方法を解説

さまざまな税制上のメリットが得られる「個人型確定拠出年金(iDeCo)」。iDeCoに加入している人は、転職や退職をした場合でも、基本的にそれまで積み立ててきた資産を引き継ぐことが可能です。

ただし転職先に企業年金があるかどうかなどによって、上限額や必要な手続きが異なったり、場合によっては引き継げなかったりするなど、注意すべき点があります。

この記事では、iDeCoの引き継ぎに関する転職先による違いや移管の手続きなどについて解説していきます。

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はじめて転職する場合の7つのポイントを確認する。

1.iDeCoは引っ越し可能

確定拠出年金制度には「企業型確定拠出年金(企業型DC)」「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の2種類があります。

いずれに関しても、転職や退職をした場合にそれまでの運用資産を持ち運べるという「ポータビリティ制度」があります。

ただし転職先によっては、掛金の上限を変更する必要や継続加入ができない場合があります。

以下では、それぞれのケースでどのような違いがあるのか確認していきましょう。

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2.転職先による違い

2.1.転職先に企業年金がない場合

転職先に企業年金がない場合、そのままiDeCoを継続することが可能です。掛金の上限額は月額2万3,000円です。

2.2.転職先に企業年金がある場合

2.2.1.企業型DCの場合

企業によって、iDeCoと企業型DCの同時加入を認めているところと、認めていないところがあります。

転職先に企業型DCがあり、かつ同時加入を認めていない場合、iDeCoは解約して新たに企業型DCに加入することになります。

iDeCoの資産を一度売却し、その残高をそのまま企業型DCに移管します。

これに対して、同時加入が認められている企業に転職した場合は、iDeCoを継続することも、企業型DCにまとめることも可能です。

2.2.2.確定給付企業年金DBの場合

企業年金には、企業DC以外に、従業員が受け取る年金給付額があらかじめ約束されている「確定給付型企業年金(DB)」があります。

転職先にDBがある場合は、そのままiDeCoの継続が可能です。ただし掛金の上限額は月額1万2,000円となっています。

2.2.3.公務員になった場合

転職して公務員になった場合、そのままiDeCoの継続が可能です。その場合、掛金の上限額はDBと同じく月額1万2,000円となっています。

2.2.4.自営業者になった場合

転職して自営業者やフリーランスになった場合、そのままiDeCoの継続が可能です。自営業者におけるiDeCoの掛金の上限額は、国民年金基金の限度額とあわせて月額6万8,000円となっています。

2.2.5.専業主婦(夫)になった場合

仕事をやめ、専業主婦(夫)になった場合、そのままiDeCoの継続が可能です。この場合の掛金の上限額は月額2万3,000円となっています。

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3.転職によるiDeCo移管で必要な手続き

iDeCo加入者が転職をした場合、必ず手続きが必要になります。

iDeCo加入時に「事業主の証明書」を提出しますが、勤め先が変更になると、この書類を転職先に新たに作成してもらう必要があります。

転職先の企業が発行してもらったこの「事業主の証明書」に加えて「加入者登録事業所変更届」を金融機関に提出します。

また掛金が変わる場合には、「加入者掛金額変更届」の提出も必要です。

なお、企業型DCのある企業に転職し、iDeCoを解約して企業型DCに加入し直す場合は手続き方法が異なります。

このケースの場合、転職先への入社日が決まったら、iDeCoを解約するために、「加入者資格喪失届」を運営管理機関に提出します。企業型DCへの加入手続きについては勤務先によって異なるため、転職先の担当者の指示に従いましょう。

またiDeCoの資産を移管する場合は、移管手続きが必要になるため、転職先に問合せて書類を準備してもらいます。

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4.企業型DCに加入中の人が転職する場合

iDeCO加入者が転職する場合の手続きについて説明しましたが、合わせて企業型DCの加入者が転職する場合についても確認しておきましょう。

企業型DCに加入している人が、企業年金がない企業に転職した場合、新たにiDeCo口座を作成することでこれまで積み立てた資産を移管することができます。

一方、転職先に企業年金がある場合、新たな企業型DCに移管します。この場合はiDeCoとの併用が企業の規約で認められていてもiDeCoへの移管はできません。

なお、企業型DCに加入していた人が転職などをして、資産をiDeCoや企業型DCに移管する場合、移管手続きは6ヶ月以内に行う必要があります。

この手続きを6ヶ月以内に行わないと、資産は現金化されて国民年金基金連合会に自動移管されてしまいます。

自動移管されると、資産運用はされず、自動移管の際の手数料や管理手数料が資産額から引かれてしまうため、注意しましょう。

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5.手続きをしないとどうなる?

転職や退職に際してiDeCoの手続きをするのが面倒だと思われる方も多いかと思いますが、手続きをしないまま放置していると自身の資産が減ってしまうといったデメリットが発生する可能性があります。

自分がどのケースに該当するのか確認したら、コールセンターに電話をして必要書類を用意してもらい、手続きを進めるのがスムーズです。

手続きをせずにいた結果、より手続きが複雑で面倒になってしまうこともあるので、できるだけ早く手続きを済ませることをおすすめします。

5.1.資産が減少する可能性がある

先述したように、手続きを行わずに転職前の企業型DCから国民年金基金連合会に自動移管されてしまった場合、移管時にかかる各種手数料が資産から引き落とされます。

また、iDeCoの加入資格を失った場合や掛金の上限額が低くなった場合に手続きをしないでいると、超過分の掛金は返金されるものの手数料が引かれることになります。

手続きをせずにいて加入者資格の有無を確認できない期間が発生すると、掛金の引き落としが一時停止される可能性があります。

手続きを行い資格が確認できれば引き落としは再開されますが、停止していた期間分の追納はできません。

引き落としが停止され積立ができなかった期間は職所得控除を計算する際の勤続期間としてカウントされないため、将来的に受給額が減少する可能性があります。

5.2.受給可能年齢が遅くなる可能性がある

自動移換されている期間は加入期間にカウントされません。

自動移管期間が発生したことで受給要件となる加入期間に満たなくなってしまう場合、本来受給できるはずだった年齢よりも遅れてしまう可能性があります。

6.制度改正によって企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和へ

2022年10月の制度改正によって、企業型DC加入者がiDeCoに加入する要件が緩和されることになります。

これによって、今まで企業型の規約によってiDeCoに加入できなかった企業型DC加入者も、以下の条件を満たすことでiDeCoに加入できるようになります。

(1)各月の企業型DCの事業主掛金額と合算して月額5.5万円を超えていないこと

(2)掛金(企業型の事業主掛金・iDeCo)が各月拠出であること

(3)企業型DCのマッチング拠出を利用していないこと

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7.まとめ

転職をした場合でも、これまでiDeCoで積み立てきた資産を引き継ぐことができる場合が多々あります。

ただし、転職先によって引き継ぎの際に必要になる手続きが異なるため、自分がどのケースに当てはまるのかをしっかりと確認しておきましょう。

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原稿:回遊舎(かいゆうしゃ)
"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。

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