【心理的安全性とは】注目の理由や心理的安全性を考慮した組織作りを解説

【心理的安全性とは】注目の理由や心理的安全性を考慮した組織作りを解説

今回はチーム内の信頼関係を深め、生産性を上げたい時に有効な「心理的安全性」と言う概念をご説明します。

人は社会集団内で能力を発揮するためにどんな環境が必要なのでしょうか。

心理的安全性とはどんなもので、どうしたらパフォーマンスを上げる環境が作れるのか具体的なやり方と、そのメカニズムを心理学的に解説します。

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1.心理的安全性とは?

心理的安全性とはどういったものなのかをまず説明していきます。

1.1.心理的安全性の概要

心理的安全性とは、組織の中で、自分の思いや感じたことを素直に相手に伝えられる環境が整っている状態のことです。

心理的安全性が高い状況であれば、質問やアイディアを提案しても受け止めてもらえると信じることができ、思いついたアイディアや考えを率直に発言することができます。

1.2.心理的安全性の心理学的な説明

心理的安全性(psychological safety)という概念は、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンドソン氏が提唱したものです。

エドモンソン氏によれば、心理的安全性は「チームにおいて、他のメンバーが、自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰をあたえるようなことをしないという確信をもっている状態であり、チームは対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」と定義されています。

チームや組織にとって重要な概念であることから、近年ビジネス心理学で注目されています。

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1.3.心理的安全性の最新の研究動向

エドモンソン氏はその後の研究から、「高い心理的安全性が、素直に話すことの奨励や考えの明晰化、意義のある対立を後押しする効果がある」ことを示しており、客観的判断に必要な、個人への批判ではない生産的な批判的議論や対話を生み出すには心理的安全性が重要であることがわかっています。

近年での研究では、発言や対人関係だけではなく、チームでの学習にも効果があることが示されています(Miyake & Kirschner, 2006)。

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2.心理的安全性が注目される理由と学ぶメリット

以下では、心理的安全性が注目されている理由と学ぶメリットについて説明します。

2.1.心理的安全性が注目されている理由

では、なぜ心理的安全性が今注目されているのでしょうか?それは、Google社が社内の生産性向上のために2012年から行なったプロジェクト「プロジェクト アリストテレス」がきっかけです。

このプロジェクトでは、エンジニア、統計、組織心理学、社会心理学などの様々な分野の専門家を集めて、多角的な視点から生産性を向上させる働き方を分析しました。

その結果、「心理的安全性」が労働の生産性を向上させることが実証的に示されたのです。

2.2.心理的安全性を学ぶメリットとは

では心理的安全性を学ぶことでどんなメリットがあるのでしょうか?

上述のように心理的安全性とは、組織の中で自分の思いや考えを伝えても大丈夫だとメンバーや組織に対して信頼感を抱いている状態のことです。

つまり、心理的安全性が高い環境を整えれば、メンバーへの気遣いや顔色をうかがうなどの余計な時間を減らし、どうしたらより生産的な仕事をできるかということに集中することができます。

また、ミスが生じた時にもすぐにメンバーに報告できれば、より早い対処が可能となり重大なミスを防ぐことができます。

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2.3.心理的安全性が低いとどうなる?

では、逆に心理的安全性が低い環境になるとどうなってしまうのでしょうか?

先ほどの理論を逆に考えてみると、心理的安全性が低い環境とは、「自分の考えや思いを発信すると批判されたり受け入れてもらえなかったりするのではないかと考え組織内で自由な行動や発言ができない環境」ということになります。

そんな環境では、仕事の成果が上がらないどころか重大な見落としや致命的な欠陥に繋がりかねません。

そのため、心理的安全性が高まる環境にすることが個人のためだけでなく、組織全体の利益につながるのです。

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3.簡単にできる!心理的安全性を高める方法

以下では心理的安全性を高める方法を説明します。

3.1.心理的安全性を測る方法

心理的安全性を高めるためには、まずはチーム内の環境について測定することが必要です。そこで有効な測定方法の一つに、エドモンソン氏が提唱する以下の7つの質問があります。

(1)チーム内でミスを起こすと、よく批判をされる(※逆転項目)

(2)チームのメンバー内で、課題やネガティブなことを言い合うことができる

(3)チーム内のメンバーは、異質なものを受け入れない傾向にある(※逆転項目)

(4)チームに対して、リスクが考えられるアクションを取っても安心感がある

(5)チーム内のメンバーにヘルプを出しづらい(※逆転項目)

(6)チーム内で自分を騙すようなメンバーはいない

(7)現在のチームで業務を進める際、自分のスキルが発揮されていると感じる

(※「逆転項目」--他の質問項目とは測定の向きが逆になっている質問)

これら7つの質問で、総合得点が高いほど心理的安全性が高いといえます。

あなたのチームはいかがでしょうか?ぜひ試してみてください。

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3.2.実践してみよう、簡単なテクニック

では、心理的安全性を高めていくためにはどのようにすればいいのでしょうか?明日から実践できる簡単なテクニックをご紹介します。

チームや組織での心理的安全性を高めるためには、以下のテクニックがあります。

  • 発言の機会を平等に与える
  • 協力し合うことを重視する
  • ポジティブに受け止める
  • 評価方法の見直し
  • メンバー同士の交流の機会を設ける

発言の機会が十分にあり、しかもその発言で咎められたりすることなく安心して自分の考えを言えるという環境が重要です。

また、チーム内での競争を煽りすぎては、安心して発言したり十分に情報交換したりすることができず、閉鎖的な個人プレイに走ってしまいがちです。お互いの発言をポジティブに受け止めることを心がけ、協力し合うことが必要です。

また、評価方法も重要なポイントで、成果主義に走りすぎてしまうと、連携が取りにくくメンバー同士でも関係性がギスギスしてしまうかもしれません。

チーム単位での評価をとりいれたり、目に見える成果だけではない個人の努力や工夫を評価し合ったりする環境を整える方法もあります。

3.3.心理的安全性を高める実践例

では、紹介したテクニックを実際にどんな場面で使えるのか、実践例をご紹介します。

例えば、会議での社員の定期報告場面を想定しましょう。

各社員が今月の実績や課題点と来月の目標などを報告する場面で、リーダー格の社員や報告の上手い社員にばかり話をさせていては、他の社員は自分の意見が聞かれることはないのだと信頼感ややる気を無くしてしまうかもしれません。

また、失敗の報告を過剰に責めたり、叱責したりすることは次のミスを隠すことや組織への信頼感を失うことにつながり、心理的安全性を低くしてしまいます。

そこで、こうした場面ではまず各社員に平等に発言の機会を与え、良い報告も悪い報告もポジティブに受け止め、仮にミスがあったとしてもその報告によって給与や昇進などに影響を与えないことを伝えていくことが必要です。

また、叱責する必要がある場面では、感情的に怒るのではなくどのような点が良くなかったのか伝え、個人の人格を否定するような言葉やニュアンスは使わないように伝えることがポイントになります。

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4.心理的安全性を向上させる上での注意点

以下では、心理的安全性を向上させる上での注意点を説明します。

4.1.心理的安全性が向いている環境とそうでない環境

では、心理的安全性を高めることは全ての環境にとって必要なのでしょうか。

心理的安全性を高めること自体は、誰かにとって不利益になることはありません。できる限り心理的安全性を高めるようと努力することで、組織内の仕事効率やパフォーマンスを高めることができます。

ただし、まだ仕事を覚えなければならない新人教育などの場面では、どうしても注意や指導をする必要が多く、協力や意見を交えることが難しいかもしれません。

そうした、喫緊の課題がある場面ではどうしても心理的安全性を優先することは困難でしょう。

ですが、その場合でも、後日しっかりと意見を聞いてフォローしたり、頭ごなしに叱責しないよう注意したりすることで心理的安全性を高めていくことが可能でしょう。

4.2 馴れ合いの関係にならないために

また、心理的安全性を高めようとする際に注意すべき点として、優しく甘やかすことと安全性を高めることは違うということがあります。

叱責をしないからといって、メンバーがミスをしたり、やる気なく仕事したりしていることを放置していいということにはなりません。

メンバーそれぞれの行動や態度に目を向け、頭ごなしに叱責するのではなく、どこがわからなくてミスをするのか、どういった点で仕事が進んでいるのか話し合いをして伝えていくことが必要です。

加えて、心理的安全性を高めることに意識を向けすぎて、これらのテクニックをルールのようにがんじがらめにしては、逆にストレスになってしまいます。

あくまでも、チームメンバーが組織内で居心地が良く、気兼ねなく意見交流ができる環境を目指すことを忘れないでください。

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5.おすすめの本

ここまで、心理的安全性の理論や具体的なテクニックについてまとめてきました。もっと詳しく理解したいと思ったあなたに、おすすめの本をご紹介します。

5.1.『翌日の仕事に差がつく おやすみ前の5分禅』

著者:島津清彦氏

禅宗の考えをベースにしながら、さまざまなビジネスパーソンの悩みに応えるアドバイスが網羅されています。様々なテーマにおいて心理的安全性に関わる説明があります。

5.2.『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』

著者:原田将嗣氏 監修: 石井遼介氏

心理的安全性を高めるのは具体的にどうすればいいのか?という問題に対して、実践的なシーンごとに具体的な言葉かけなどを紹介しています。明日から試したくなる言葉かけや方法が数多く記載されています。

6.まとめ

いかがでしたか?本記事では、心理的安全性とは何かの基本的な説明から、実践のテクニックまで解説をしてきました。

注意点などもありましたが、中身を知れば、明日から使えそうなテクニックがたくさんありますよね。

早速今日からチームの心理的安全性を高め、仕事の効率をアップさせましょう!

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原稿:緒方万里子
東京大学大学院教育学研究科教育心理学コース博士課程に在籍中。感情心理学、認知心理学を専門とする。

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