【ピグマリオン効果とは】あなたの期待が部下や後輩を成長させる!?

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みなさんは、「部下を成長させたい」、「部活や勉強で後輩や子どもにやる気を引き出したい」と思ったことはありませんか?

そんな時に役に立つのが学習効果を効率的に向上させる、『ピグマリオン効果』というテクニックです。もしかしたらどこかで耳にしたことがあるかもしれませんが、一体どういう効果で、どんな使い方ができるのか詳しくは知らない方もいらっしゃると思います。

そこで今回は、『ピグマリオン効果』心理学的な解説具体的な活用法の紹介をしていきます。

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1.ピグマリオン効果とは?

ピグマリオン効果(Pygmalion effect)とは、教育心理学における心理的行動の1つで、教師の期待によって学習者の成績が向上する効果のことです。別名、「教師期待効果」、「ローゼンタール効果」などとも呼ばれます。

『ピグマリオン効果』が生じるのは、人間は期待された通りに成果を出す傾向があることの現れだと考えられ、1964年にアメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって提唱されました。

1.1.ピグマリオン効果の由来

「ピグマリオン効果」という名称は、ギリシャ神話に登場する彫刻家ピグマリオンに由来しています。

ピグマリオンは、自身が彫った美しい女性像ガラテアに恋をしました。彼女に生命を吹き込むため必死で神々に祈ったところ、祈りが聞き入れられてガラテアには生命が与えられたと言われています。

ピグマリオンの強い願いが神々を動かしたことから、「大きな期待や強い信念は、他の人々の行動やパフォーマンスに影響を与える」という意味に派生し、効果の名称として使用されるようになりました。

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1.2.ピグマリオン効果の心理的概念

ピグマリオン効果に関する有名な教育現場での実験に、以下のようなものがあります。

米国・サンフランシスコのある小学校で、「学習能力予測テスト」と名づけた、実は普通の知能テストが行われました。

担任教員には、そのテストを「今後数ヶ月の間に成績が伸びてくる学習者を予測するためのテスト」だと説明し、検査の結果とは関係なく無作為に選ばれた児童の名簿を「今後数ヶ月の間に成績が伸びる子ども達」だと伝えました。

すると、その子ども達は学習能力とは全く関係なく選ばれたにもかかわらず、確かに成績が向上したと報告されたのです。 

これは、教員たちがその子ども達を「成績が向上する生徒なんだ」という期待を込めて見たことによって、子ども達も「期待されている」ということを意識することになり、結果として成績が向上したのではないかと主張されています。

しかし、ローゼンタールのこの実験には多くの批判も寄せられており、現在でも賛否両論があることには注意してください。

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2.ビジネスにも使える!ピグマリオン効果のメリット

では、ピグマリオン効果にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

2.1.ピグマリオン効果のメリット

ピグマリオン効果を使うメリットは、相手に期待をしているという態度を持って接することで、相手の能力を実際に向上させることがあるということです。

そして、それは実際の相手の能力とは関係なく効果を発揮する可能性も高いという点も大きなメリットです。

2.2.ピグマリオン効果が役立つ場面

ここで、ピグマリオン効果は実際の生活ではどのように役に立つのかを見ていきましょう。

例えば、「自分の子どもの成績を伸ばしたいのになかなかやる気を出してくれない」、「会社の部下の能力をどう成長させようか悩んでいる」、というような時に効果が発揮できます。

そういう時、多くの人は成績の点数や仕事の成果を見て、この子あるいはこの部下は成長できるのだろうかと見極めようとしたり、もっと頑張るように叱責したりするでしょう。

しかし、ピグマリオン効果を活用する場合は、まずは数値にとらわれず、相手に対して「まだまだ伸びしろがある」と成長を期待して接することが重要になります。

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3.ピグマリオン効果の注意点

素晴らしい効果を生み出す可能性のあるピグマリオン効果ですが、注意点もあります。

3.1.ピグマリオン効果が逆効果となる場面とは!?

まず、ピグマリオン効果を使うと逆効果になるケースがあります。

それは、相手が自身の能力や成績に満足していて、慢心している場合です。

相手をもっと成長させたい、能力を向上させたいとこちらが思っているにもかかわらず、相手が自身の状態に満足しているという場合、相手は自身の欠点や足りない部分に全く気づいていないといえます。

その状態で、期待を込めた態度で接したり、褒めてしまったりすると、相手はこのままでもいいのだと安心してしまい、成長することをやめてしまう可能性があります。

そのため、ピグマリオン効果を活用する場合は、相手が今どういう心境なのか、どういう状態なのかを確認してから実践するようにしましょう。

3.2.やりすぎは危険

また、ピグマリオン効果のもう一つの注意点として、相手に過剰に期待をかけすぎてはいけないという点が挙げられます。

確かに、相手に期待をもって接することで、実際に相手の成績や能力を向上させることができるのですが、あまりにも過剰に期待をかけてしまうと、それは適度な期待を超えて、相手へのプレッシャーとなってしまいます。

相手があなたからの期待をプレッシャーだと感じたり、自分には過度な期待だ、そこまでは成長できないなどと相手に思わせてしまったりすると、成長には逆効果となってしまいます。

したがって、期待をかけるのは適度なものにすることが大切です。

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4.実践してみよう!ピグマリオン効果の活用法

以下では、ピグマリオン効果を活用する方法について詳しく解説します。

4.1.ピグマリオン効果の効果的な使い方

ピグマリオン効果の重要なポイントは、相手に「自分は期待されている」と感じさせ、自信を持たせたり、やる気を出させたりすることです。

人は誰かに期待をすると、ついつい厳しい目で見たり、なぜできないのかと叱責してしまったりしがちです。

しかし、その態度が学習者のやる気や自信を削いでしまうことになり、成長を妨げてしまうとしたら本末転倒ですよね。

そのため、相手に対して否定的な言葉や態度を使うのではなく、相手の能力や成長を信じる気持ちを持ち、前向きな態度で接するように心がけることが重要になります。

4.2.ピグマリオン効果の実践例

それでは、実践場面ではどのように使えばいいのか、ビジネスで部下や後輩をもっと成長させたいと思っている時を例にとりましょう。

例えば、あなたは部下と同じプロジェクトを進めていくことになりましたが、部下はまだあなたほど早く仕事もできないし、ミスも多いとします。

こんな時、早く成長してほしいからといって、足りない部分を指摘したり、なんでこんなこともできないんだと叱責したりしてしまうと、部下は自分は期待されていないと思い、自信を喪失してしまうことになり、成長には逆効果になってしまいます。

こういう場合は、怒りたい気持ちや口出ししたい気持ちをグッと抑えて、まず君はきっと成長するはずだと期待を持って部下に接したり、期待していることを柔らかく伝えたりするようにしてみましょう。

過度に期待をかけすぎるのはもちろんプレッシャーになって逆効果ですが、相手が自信を持ったり、期待されていると思えたりするような声かけや態度を取るようにしてみてください。

もちろんこれは部下だけでなく、子どもや友人などさまざまな場面に応用することができます。

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5.その他の心理効果との違い

周りの態度や行動が学習者に影響を及ぼす心理効果には他のものもあります。

ここでは、それぞれの効果の特徴を紹介します。

5.1.ゴーレム効果との違い

ピグマリオン効果とは逆に、教師や教育者が学習者に期待しないことによって学習者の成績が下がることをゴーレム効果といいます。

もしあなたが部下や後輩、子どもの成長に期待していないような態度をとってしまうと、それは彼ら彼女らの自信ややる気を失わせてしまうので注意が必要です。

5.2.ホーソン効果との違い

周囲に意識されたり観察されたりすることによって、パフォーマンスが向上する傾向があるというのがホーソン効果です。

ピグマリオン効果とよく似ていますが、ピグマリオン効果は「周囲の期待によって成果が上がる」のに対し、ホーソン効果は「周囲の注目によって生産性が上がる」という違いがあります。

5.3.ハロー効果との違い

ハロー効果とは、相手の一部分から全体を決めつけて評価してしまうことです。

例えば、「容姿がいいから優しくて親切な人だろう」「有名なブランドだから全ての製品が安心だろう」など、1つの肯定的な特徴が全体的な評価に影響を及ぼす効果を指します。

逆に、1つのネガティブな要素が全体的な評価を下げてしまうこともあります。

相手に対する印象が関わる心理学的な効果のため混同しやすいですが、ピグマリオン効果は接する態度によって相手の能力が向上するという相手に影響を与える効果なのに対して、ハロー効果は相手のことをこうだと思い込んでしまうという自分の認識の問題であることに注意してください。

【関連記事】「【ハロー効果とは】優れた点だけ見て全体を判断しがち--効果の活用法と注意点」

6.まとめ

本記事ではピグマリオン効果についての説明と活用するメリット、注意点、詳細な活用方法などについて紹介してきました。

あなたも明日から、ピグマリオン効果を利用して、部下や後輩、子どもの能力を向上させることにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

原稿:緒方万里子

東京大学大学院教育学研究科教育心理学コース博士課程に在籍中。感情心理学、認知心理学を専門とする。

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