粗利とは、売上高から売上原価を差し引いた売上総利益のことです。ビジネスの基本的な収益性を把握するのに重要な指標であり、商品の価格設定や仕入れコストの見直しに活用されます。本記事では、粗利の基本的な意味とともに、粗利率の計算方法や業界別の目安を詳しく解説します。企業の収益向上に役立つ具体的な方法も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
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1 粗利とは「売上総利益」のこと
粗利は「粗利益」の略であり、読み方は「あらり」です。「荒利益」と表記される場合もあります。会計的には「売上総利益」と呼ばれ、簡単に言うと「売上から商品コストを引いたお金」のことであり、原価や商品の付加価値を判断するための大事な数字です。
1.1 粗利の計算方法
粗利は以下の計算式で算出できます。
粗利=売上高-売上原価
例えば、レモネードを作り1杯200円で売るとします。その際、1杯の材料費としてレモンや砂糖に100円かかったとすると、200円(売上高)-100円(売上原価)で粗利は100円になります。
1.2 粗利と利益の違い
上記のとおり、粗利は売上高から売上原価、つまり商品自体にかかるコストを差し引いた数字です。
一方、利益(純利益)は、売上高から全てのコストを差し引いた数字であり、最終的な儲けを指します。コストの中には、販売費、管理費、営業外費用、税金などが含まれます。
2 売上原価・粗利率の計算方法
ここでは、粗利を算出する際に必要な「売上原価」と、売上高における粗利の割合を示す「粗利率」の計算方法を紹介します。
2.1 売上原価の計算方法
売上原価とは、商品を販売するために直接かかった費用のことです。売上原価は以下のような計算方法で算出します。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 仕入高 - 期末商品棚卸高
期首時点で持っている商品在庫の価格に、期間中新たに購入した商品の総コストを足し、期末時点で残っている商品在庫の価格を差引きます。具体的な計算例は以下のとおりです。
- 商品単価:100円
- 期首商品在庫数:1,000個、仕入数:500個、期末商品在庫数:300個
12万円(売上原価)=1000個×100円+500個×100円-300個×100円
2.2 粗利率の計算方法
粗利率とは、売上に対する粗利益の割合を示す指標であり、商品の販売効率や利益性を把握する際に使用します。粗利率計算方法は以下のとおりです。
粗利率=(粗利益 ÷ 売上高) × 100
まずは、先述した計算式で粗利益を求め、それを売上高で割って100を掛けます。以下は、具体的な粗利率計算方法です。
- 粗利益:20万円
- 売上高:50万円
40%(粗利率)=(20万円 ÷ 50万円) × 100
3 【業界別】粗利率の目安
業種によって商品の仕入れコストや運営にかかる経費は異なるため、それぞれの業種で適切な粗利率も変わります。粗利率が適切かどうかを判断するには、業種ごとの平均を参考にしつつ、同業他社と比較することが重要です。
ここでは、総務省が公表したデータ令和4年度のデータを基に、各業種の粗利率を紹介します。
業種 | 平均粗利率 |
---|---|
建設業 | 23.8% |
製造業 | 20.7% |
情報通信業 | 47.5% |
運輸業,郵便業 | 23.4% |
卸売業 | 15.1% |
小売業 | 30.4% |
不動産業,物品賃貸業 | 46.3% |
学術研究,専門・技術サービス業 | 56.8% |
宿泊業,飲食サービス業 | 63.3% |
生活関連サービス業,娯楽業 | 41.3% |
サービス業(他に分類されないもの) | 41.6% |
製造業や小売業では、20%~30%程度の粗利率が平均的であるのに対し、学術研究や宿泊業では50%を超えています。このように、業種によって平均粗利率は大きく異なります。
【出典】e-Stat「中小企業実態基本調査 令和5年確報(令和4年度決算実績) 3.売上高及び営業費用」
4 粗利で判断できること
粗利や粗利率はどのようなことに利用されているのでしょうか。ここでは、粗利で判断できる主なことを3つ紹介します。
4.1 原価の妥当性
粗利は売上から原価を差し引いた利益であり、粗利率が業界平均と比べて極端に低い場合は、仕入れ価格や製造コストが高すぎる可能性が考えられます。この場合、仕入れ先の見直しや製造工程の改善が必要かもしれません。
逆に粗利率が異常に高い場合は、価格設定が高すぎる可能性があり、今後の競争力に影響することもあります。粗利を分析することで、原価が適切かどうかを見極め、利益改善の指針とすることができます。
4.2 製品の付加価値
業界平均と比べて粗利率が高いということは、売上に対して製品のコストが低く抑えられていると同時に、製品に対して一定の付加価値が反映されていると考えられます。
なぜなら、独自性や品質の高さ、ブランド価値が高い製品ほど、消費者はその価格に納得しやすく、結果として粗利も高くなりやすいからです。つまり、粗利が高い製品は、競争力や顧客満足度を保つための付加価値が適切に設定されている可能性があると言えます。
4.3 企業価値や競争力
業界平均よりも高い粗利率は、製品が市場で強い支持を得られ、他社との差別化やブランド力の強化が成功していることを意味します。
一方で粗利が低ければ、企業価値や競争力が弱まっており、コスト管理の見直しや製品改良が必要な可能性もあります。粗利率は、企業の収益構造や市場での優位性を示す重要な指標です。
5 粗利では判断できないこと
原価の妥当性や製品の付加価値が判断できる一方で、純利益や経営効率などは粗利で判断できません。それぞれについて詳しく説明します。
5.1 最終的な純利益
粗利は売上から売上原価のみを差し引いた数字であり、最終的な純利益を出すには、さらに販売管理費(人件費、広告費、研究開発費などの間接費用)や税金を差し引かなければなりません。
つまり、粗利が高くてもその他の間接費用が多ければ、純利益は少なくなってしまいます。最終的な純利益を正確に把握するためには、粗利に加え、間接費用を含む全体のコスト構造を考慮する必要があります。
5.2 企業全体の経営効率
粗利は、売上に対する直接的なコストを反映した数字のため、商品の販売効率はわかっても、企業全体の経営効率は判断できません。経営効率を判断するには、粗利に加えて間接費(人件費、広告費、管理費など)や資本コスト、運営資金の利用効率なども考慮する必要があります。
さらに経営効率を正しく評価するには、粗利と純利益、売上高利益率、ROE(自己資本利益率)など複数の指標を併せて見ることが重要です。
6 粗利を活用できるビジネスシーン
ビジネスシーンにおいて、粗利はどのようなシーンで活用できるのでしょうか。ここでは、粗利の具体的な活用シーンを3つ紹介します。
6.1 経営戦略の立案
粗利は商品ごとの利益率を示すため、どの商品が利益貢献しているかを把握しやすく、戦略的なリソース配分に役立ちます。例えば、粗利が高い製品にはさらに投資し、市場シェアの拡大を目指すことが考えられます。
一方、粗利が低い場合は、コスト削減や商品改良などの対策が必要です。粗利を分析することで、利益を最大化するための経営戦略が立案できます。
6.2 価格設定の見直し
粗利が低い場合、価格設定がコストに対して適切でない可能性があるため、価格の引き上げを検討する必要があります。逆に、粗利が十分に高ければ、競争力を維持しつつ適切な価格で販売できていると判断できます。
さらに、粗利から導いた価格設定が収益にどう影響するかをシミュレーションすることで、最適な価格戦略を立てやすくなります。粗利の分析は、収益性向上のための価格調整に不可欠です。
6.3 コストの適正化
粗利が低い場合、売上に対して製造や仕入れコストが高すぎる可能性があるため、仕入れ先の見直しや生産効率の改善が必要と考えられます。一方、粗利が業界平均より高ければ、適正なコストで商品が提供されている可能性が高いです。
また、粗利の推移を追うことで、コスト構造の変化や改善効果を把握でき、コスト管理も容易になります。粗利は、コストの適正化を図り利益を増やす目的で活用されています。
7 粗利を上げる方法
粗利を上げるには、どういったことに取り組めばいいのでしょうか。ここでは、粗利を上げるための具体的な方法を4つ紹介します。
7.1 販売価格の引き上げ
単純に販売価格を引き上げれば、同じ数量の販売でも得られる収益が増えるので、その結果粗利も向上します。ただし、顧客が価格の上昇を受け入れられず需要が減少するなど、価格を上げることにはリスクも伴います。
そのため、価格は競合他社や市場の状況を考慮することが重要です。また、販売価格の引き上げと同時に製品の質を上げて、顧客が価格に見合った価値を感じられるようにすることも大切です。
7.2 仕入れコストの削減
仕入れコストを減らすことで、売上高が同じであっても粗利が増加します。具体的には、仕入れ先の見直しや交渉、まとめ買いによる割引の活用、生産プロセスの効率化などの方法が挙げられます。
ただし、コストの削減は品質や信頼性を損なわずに実現しなければなりません。正しい方法で仕入れコストを削減すれば、企業の競争力は高まり、十分な利益を確保できるようになるでしょう。
7.3 商品ラインナップの見直し
利益率の高い商品を強化したり、売上が伸び悩んでいる商品を削減したりすることは、粗利を上げる一つの方法です。例えば、販売データを分析して、人気がある商品や粗利率が高い商品を特定し、それらに焦点を当ててマーケティングや在庫管理を行います。
また、ブランド力を高めるため、特定の層を狙った新たな商品を追加することも考えられます。ラインナップの見直しは、競争力を維持しつつ粗利を増やすための戦略的な手段です。
7.4 付加価値の提供
商品の付加価値を高めることで、顧客に「高いお金を払うだけの価値がある」と思わせることができます。付加価値の具体例としては、「オーガニックや特別な栄養価を持つ商品を展開する」「他社にはない独自の機能を搭載する」「カスタマーサービスを充実させる」といったことが挙げられます。
このような付加価値によって商品の魅力がアップすれば、結果的に販売数量が増えて、粗利の向上にもつながるでしょう。
8 粗利(売上総利益)以外の利益
企業の経営戦略や経理で使用する利益は、粗利(売上総利益)の他にもいくつかの種類があります。ここでは、その中から主な利益を4つ解説します。
8.1 営業利益
営業利益とは、企業の本業による利益を示す指標であり、売上高から売上原価・販売管理費・一般管理費などの営業に関連する費用を差し引いたものです。つまり、営業活動によってどれだけの利益を上げたかを表します。
営業利益は、企業の収益性や健全性、成長性を判断する際に重視されます。営業利益が高ければ、効率的に営業活動が行われていると考えられます。反対に、営業利益が低ければ、コスト管理の見直しや商品戦略の再考が必要となる場合があります。
8.2 経常利益
経常利益とは、企業の営業活動から得られる利益のことです。営業利益に営業外収益(受取利息や配当金など)を加え、営業外費用(支払利息や為替差損など)を引いて算出します。
経常利益が高ければ、企業の経営が順調であり、外部からの影響を受けにくい安定した収益構造を持っていると判断できます。一方で、経常利益が低い場合は、営業活動や資金管理の見直しが必要となる可能性があります。このことから、経常利益は企業の収益力を評価するための重要な指標と言えます。
8.3 税引前当期純利益
税引前当期純利益とは、企業が一定期間内に得た利益から法人税などの税金を差し引く前の利益を指します。税金を支払う前の利益は、企業の経営成績を評価するために重要であり、この指標を参考に投資家が将来の投資をしたり、経営者が経営戦略を考えたりします。
また、税引前の利益を把握することで、法人税の負担を考慮した利益の分析や資本政策の立案が可能になります。税引前当期純利益は、最終的な純利益の算出において重要なステップです。
8.4 当期純利益
当期純利益とは、企業が特定の会計期間(通常1年)において得た最終的な利益を指します。具体的には、売上高から売上原価・営業費用・営業外収益・営業外費用・法人税を差し引いた後の利益です。
当期純利益は、企業の収益性や経営効率を評価する重要な指標であり、株主に対する配当金の原資にもなります。また、企業の再投資や成長戦略を計画する際の基準にもなることから、企業の健全性と将来の可能性を図るためには欠かせない指標です。
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9 まとめ
粗利とは、売上高から売上原価を差し引いた利益で、商品の販売効率を表します。また、粗利率は、粗利を売上高で割り、%で表した商品の収益性を示す指標です。業界ごとに目安は異なり、例えば飲食業では60%~70%、製造業では20%~30%が一般的です。
粗利は価格戦略やコスト管理に活用され、粗利率が高いほど収益が安定し、低ければ改善の余地があると判断されます。粗利と粗利率の把握は、利益最大化のためには大変重要です。
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