Googleが新しい対話型AI検索「SGE」を試用公開しました。では、従来のグーグル検索と何が異なるのでしょうか。今回は、「SGE」がインターネット検索の世界をどう変えていく可能性があるのか見ていきます。
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1.SGEとはグーグルの次世代型AI検索機能
Googleが新しい対話型AI検索「SGE」を試用公開しています。SGEとはSearch Generative Experience(検索生成体験)の略です。
従来の検索では、一つの単語、もしくは複数の単語を並べて検索していた人が多かったと思いますが、「SGE」では、自然な文章で尋ねるだけで、回答を生成してくれるようになります。
OpenAI社の対話型AI「ChatGPT」は技術的に大きなブレイクスルーを遂げ、対話型AIの分野をリードしていますが、一般の人にとって必ずしも使いやすいものとは言えませんでした。
SGEは、利用にあたってスキルが必要とされる現在の対話型AIを、一般の人がより気軽に利用できるようにしたものです。
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2.試用公開であるためオンにする必要がある
現在、SGEは正式公開ではなく、希望者のみ利用できる状態で公開されています。
PC/MacではブラウザーGoogle Chromeから、右上にあるフラスコアイコン(Search Labs)をクリックすることで、SGEをオンにすることができます。
また、iOS/Androidのスマートフォンでは、Googleアプリからフラスコアイコンをタップすることで、SGEをオンにできます。
ただし、Googleアカウントでログインをしていること、ブラウザー、アプリなどが最新版であることが条件です。Googleアプリの方は、地域などによってフラスコアイコンが出ないケースもあるので、表示されるようになるまで辛抱強く待つしかありません。
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3.SGEの使い方は、グーグル検索とほぼ同じ
SGEの使い方は簡単です。
3.1.いつもと同じように検索窓に質問を入力する
使い方はこれまで通り、検索窓に検索したい内容を入力するだけです。しかしながら、検索ワードを工夫する必要はほとんどなく、質問文を入力して答えを表示させることができます。
例えば、「テレワークってどこがいいんだろう?」と疑問に思った時、従来の検索では「テレワーク メリット」と検索しやすい言葉に変換をして入力しなければなりませんでした。
しかし、SGEでは頭の中に思い浮かんだ「テレワークってどこがいいんだろう?」という文をそのまま入力すれば答えを探してくれます。
この「どこがいいんだろう」の「いい」という言葉は、「メリット」「適切な場所」「テレワークサービスの提供会社」などさまざまに受け取ることができる曖昧な言葉です。
SGEはこのような曖昧な言葉であっても、自然な文脈の中で理解し、目的にかなう回答を生成してくれます。
従来のグーグル検索は、どのような検索語を使うかで求めている検索結果が出ないこともあり、検索のうまい人と下手な人が出てきてしまいました。SGEではそのような検索スキルの差がなくなります。
(あいまいな自然文で質問しても回答を生成してくれる。根拠となったWebも表示してくれるため、確度の高い回答を得ることができる)
3.2.回答の根拠を示してくれる
ChatGPTに何かを質問すると、誤った答えを表示してしまうことがあります。そのため、調べ物には向かないとも言われています。
しかし、SGEでは回答の右側に、その回答の根拠となったWebサイト・ページを表示してくれます。根拠となったWebページを見ることで、回答の確からしさを確認したり、より深く調べたりすることができます。
(公式Webを探したい場合は、社名だけで検索しても見つかる。概要も表示してくれる)
3.3.追加質問ができる
SGEが回答を表示すると、その下に「追加で聞く」ボタンの他、想定される質問のボタンが表示されます。
これをクリックすると、次々と質問をしていくことができます。あることについて調べたい場合は、最初に自然な文章で質問した後、追加質問のボタンをうまく使うことで、そのテーマについて深く調べることが可能になります。
3.4.探し物系の命令をすることもできる
ChatGPTと同じように、対話型AIに探し物を命令することができます。
例えば、フリーで使える写真素材やサンプルプログラム、Excel形式の統計データなども探してもらえます。
(簡単なものであれば、サンプルのプログラムも見つけてくれる)
(フリーで使える写真を探してもらうこともできる)
(Excel形式になっている統計データも探してもらえる)
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4.SGE公開で何が変わるのか?
4.1."ググる"が変わる
このSGEが正式公開されると、従来のグーグル検索を使う必要があまりなくなる可能性があります。
企業の公式Webサイトなど、探したいWebサイトがわかっている場合でも、SGEで検索すれば公式Webサイトが表示されます。グーグル検索は、ほぼSGEに置き換えられるというか、グーグル検索にSGEの機能が実装されていくことになります。
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4.2.音声アシスタントが積極的に使われるようになる
「OKグーグル」で使える音声アシスタントは、現在は広く使われているとは言えません。何かを尋ねても、求める回答が得られないことがあるため、明日の天気を聞いたり、タイマーをセットしたりするなどの使われ方が多いです。これは音声アシスタントの機能に限界があったからです。
音声アシスタントは質問文の言葉を分解して、複数の単語に切り分け、これをグーグル検索し、得られたWebページの要約を音声で返すという仕組みです。
自然言語の中には「いい/悪い」「人気の」「おすすめの」などの曖昧な言葉も多くあります。これを検索語として検索をするため、質問者が求めるのとは違った回答が見つかってしまうことがあります。
また、ひとつのWebページの内容を要約して回答をしているため、回答の内容に偏りがある場合もあります。
SGEでは、このような曖昧な言葉も文脈から解釈をし、複数のWebの内容を要約して回答を生成するので、質問者が求めている答えになりやすくなります。
現在は、まだその機能はありませんが、近い将来、音声で尋ねて、音声で回答を返す機能が搭載されるでしょう。
スマートフォンは、まるでひとつの人格を持っているかのような、会話ができるAI博士のような存在になっていきます。
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5.大きな変化が始まるデジタル広告とマーケティング分野
ビジネス的にも大きな変化が予想されます。それはSEO(Search Engine Optimization)の意味が薄れていく可能性があることです。
SEOとは、自社のWebページを検索されやすくする工夫を行い、グーグルの検索ページの上位に表示させる技術です。多くの企業Webサイト、商業Webサイトなどにとって重要な技術で、グーグル検索の上位に表示されることにより、多くの人が閲覧してくれるようになり、ビジネスの機会を広げてくれます。
しかし、SGEが広く使われるようになると、SGEが生成する回答で多くの人が満足をしてしまいますから、個々のWebページにはアクセスしなくなる場合があります。
つまり、多くのWebサイトでPV(ページビュー)が減少し、検索結果の上位に表示されることの価値が低下をする可能性があります。バナー広告などのWeb広告も価値が低下する可能性があります。デジタル広告やデジタルマーケティング業界にとっては、数年に1回の大きな変化が訪れることになるかもしれません。
デジタル広告の中心は、Webサイトから、SNSや動画共有サービスに移っていくと見られています。これはSGEを開発しているグーグルにとっても大きな変化となるため、デジタル広告の仕組みも大きく変えてくる可能性があります。
一般の人にとっては、グーグル検索よりも便利な次世代検索として利用することができるようになる可能性があります。
また、広告やマーケティング関係者にとっては、大きな変化の始まりとなるので、SGEの機能やグーグルの動向に注視をしておく必要があります。
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6.まとめ
SGEとは対話型AIを活用したグーグルの新しい検索機能です。
自然な言語で質問をすれば、文脈を解釈して、適切な回答を生成してくれます。その根拠となったWebサイト・ページも表示されるため、業務での調べ物などにも活用することが可能です。グーグル検索は、対話型AIを活用したSGEに自然な形で進化をしていくかもしれません。
一方、多くの人がSGEが生成をする回答に満足をして、Webサイトを見なくなる可能性も指摘されているため、デジタル広告やデジタルマーケティングの分野では大きな変化が始まる可能性もあります。