中国で生成AIはどうなっている!? ビジネスへの活用状況など最新事情を解説

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ChatGPTなどの生成AI(ジェネレーティブAI)が注目されていますが、米国と並ぶIT先進国の中国の生成AIは現在どのような状況なのでしょうか。主な中国の生成AIビジネスへの活用状況中国ならではの特徴など最新事情について解説します。

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1.中国の生成AIとは

生成AIとは、テキストや画像、動画、音声などを生成できる人工知能(AI)モデルのことです。ジェネレーティブAI(Generative AI)と呼ばれることもあります。

2022年11月にOpenAI社が公開したテキスト生成AI(AIチャットボット)「ChatGPT」がブームを超えて、今後の行く末を決めてしまうゲームチェンジャーになっていることはもはや説明をする必要はないでしょう。

このようなテキスト生成AIは、LLM(大規模言語モデル、Large Language Model)という技術を背景にしています。大量の文書を読み込んで、単語同士の関連度の分析をし、AIに学習をさせる仕組みです。

このLLMは、中国でも以前から開発が行われていて、米中での開発競争になっていました。

例えば、百度が開発したLLM「文心」(Ernie)の最初のバージョンは2019年前半に発表されています。

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2.中国の生成AIにはどのようなものがあるのか

中国にどのようなLLMがあり、どの程度の実力なのかを知るには、調査会社Leonis Capitalがまとめた図が役に立ちます。

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(Leonis Capitalがまとめた米国と中国のLLMの開発度マップ。横軸が発表年、縦軸がパラメーター数。China's Generative AI Landscape and How It Compares to the U.S.より引用)

横軸は発表時期、縦軸はパラメーター数です。LLMの性能を比較することは簡単ではありませんが、一般にはパラメーター数が多いほど優秀であると考えられます。

それだけ細かく教師データを学習するので、優秀であるはずだという指標です。

グラフでは上にいくほどパラメーター数が多くなります。

このうち、赤いマークがついているのが中国のLLMです。

どのようなものがあるのでしょうか。

2.1.百度--「文心」(Ernie、アーニー)

GPT-3を上回るパラメーター数で、この文心にチャットインタフェースをつけたものが文心一言です。2019年に最初のバージョンが公開された古株のLLMです。

2.2.ファーウェイ--「盤古」(PanGu、パングー)

ファーウェイのLLMで、パラメーター数はGPT-3をわずかに上回っています。現在のところ、チャットインタフェースは発表されていないため、スマートフォンやカーナビ、家電製品などに使われたり、企業向けにカスタマーサポートや受付業務などに提供されたりするものと見られています。

2.3.知源人工知能研究院(BAAI)--「悟道」(Wudao、ウーダオ)

BAAIは主要大学、主要テック企業が合同で設立した戦略的研究機関です。BAAIがサービスを事業化することはありませんが、開発したLLMは公共機関やテック企業に提供されることになります。

2.4.清華大学--「GLM」(General Language Model)

清華大学が開発したLLMで、チャットインタフェースをつけたChatGLMも公開されています。

この4つが主要なもので、その他、復旦大学「MOSS」テンセント「混元」(HunYuan、フンユエン)アリババ「通義」(トンイー)などがあります。

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3.中国のLLMはなぜ出遅れたのか

中国は、LLMの開発については米国と競い合う状況でありながら、ChatGPTの発表に遅れをとったのはなぜでしょうか。

これはOpenAI社の戦略が非常にうまかったのです。チャットボットの形で公開し、用途を限定せず、むしろ多くの人に用途を模索してほしいという公開の仕方をしました。

これにより、世界中で「こんな使い方がある、こんなこともできる」という話題が絶えないのです。

一方、中国のテック企業の多くは、LLMをソリューションの形で提供することを考えていました。提供先は企業になりますから、ChatGPTのように誰にでも使ってもらえる形で公開することは想定していなかった可能性が高いです。

ChatGPTから遅れて3月16日に、百度(バイドゥー)は自社開発のLLM「文心」にチャットインターフェイスをつけた「文心一言」を発表しました。

この時、李彦宏(ロビン・リー)CEOが「本来はこういう形で発表するつもりはなかった」と消極的な発言をしたため、株価を下げてしまいました。

この発言は自社のLLMに自信がないということではなく、チャットボットという公開の仕方が盲点になっていたからです。

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4.中国のテック企業が考えていた用途とは

では、中国テック企業はLLMをどのような用途に使うことを想定していたのでしょうか。

4.1.パーソナルLLM

最も用途して考えられていたのがパーソナルLLMです。

現在のLLMはネット上からさまざまな文章を教材にして学習をしますが、社内文書を学習させ、その企業に特化したLLMを構築します。

従業員は、自社の商品や社員規約などについて、チャットで簡単に聞くことができるようになります。

例えば、商品のプロモーション資料をAIにつくらせることで、営業職が日報に記載した特記事項などから、商品の隠れた利点を抽出して資料に反映させることができます。

また、SNSで投稿するときや外部への発表文を書くときも、AIに校正をさせることで、正確な情報、統一的な用語になるだけでなく、炎上しかねない表現などを指摘させることも可能になります。

4.2.顧客対応

すでに中国で初歩的な利用が始まっているのが、顧客対応ロボットです。

例えば、百度と浦発銀行は共同で「小浦」(シャオプー)というロボット型AI銀行員を開発しました。来店客と会話をし、用件を判別して、適切な窓口を案内するというものです。このような「来客の振り分け」をするAIは、病院などにも導入されています。

また、サポートセンターなどでもチャットでサポートを依頼すると、AIが適切な返答をする仕組みが広がりつつあります。

4.3.24時間AIライブコマース

中国ではライブコマースが消費チャンネルとして定着をしています。スマートフォンのライブ配信機能を利用して、商品を販売し、購入したい人は画面をタップするだけで購入できるというものです。

一般的には司会者がライブコマースを行い、チャットが利用できるため、視聴者が「色違いの商品も見たい」と送れば、司会者がそれに答えてくれます。小売店で買い物をしているかのような体験ができることがライブコマースの強みでした。

しかし、人間がライブコマースを行うのには限界があるため、バーチャルアバターを制作し、あらかじめ制作しておいた脚本をAIが読み上げる24時間AIライブコマースが急速な勢いで広がっています。

しかし、あくまでも脚本を読み上げているだけなので、視聴者に臨機応変に対応することができません。そこで、AIチャットボットを導入し、視聴者に対応できる24時間ライブコマースがすでに登場し始めています。

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((C) 「蜜雪氷城」(MIXUE))

(ドリンクスタンドチェーン「蜜雪氷城」(MIXUE)の24時間ライブコマース。中央にいる司会者は、実際の司会者を撮影して、会話に合わせて動く、バーチャルアバター。会話はAIによる合成音声で、あらかじめ設定された脚本を読み上げている。ここにLLMを導入して、視聴者と対話ができる仕組みの開発が始まっている)

4.4.画像系生成AIの活用

生成AIはテキストだけではありません。MidjourneyやStable Diffusionといった画像系生成AIも中国ではすでに実用レベルで使われています。

デザイナーなどがツールのひとつとして使うことが多いため、「AIでつくりました」ということが前面に出てくるわけではありませんが、商品のラベル、ポスターなどを制作するときに、画像系生成AIで原画を出力し、それを人間が修正して完成させるというのはもはや常識的な手順になっています。

また、ECなどで衣類を販売する時に、モデルが着ている商品写真を掲載する必要がありますが、ここにも画像系生成AIの利用が試みられています。

現在は、生成AIに商品写真を読みこませても、乱数によって柄などが微妙に変わってしまうため、大々的に利用しているというブランドはまだありませんが、今後、モデルを使って撮影をするという手間を省くために、生成AIが使われることになることは間違いありません。

また、建築家の間でも、画像系生成AIを使って、部屋、住宅、施設などの完成図を出力され、それに触発されて建築図面に落とし込んでいくということが試されています。人間には着想できない建築のアイディアが得られるからです。

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5.デスクワークを効率化する生成AI

一方、デスクワークをする多くの人に関わりが出てくるのがCopilotです。マイクロソフトは、Officeなどのサービスがサブスクリプションで利用ができるMicrosoft 365に、年内にもChatGPTをベースにしたCopilotを搭載することを発表しています。

これはデスクワーク業務を劇的に効率化することになります。これからのホワイトカラーはCopilotを使いこなすことが基本スキルになる可能性が高いです。

数年後、Copilotの使いこなしができない人は、今現在で言えば「Excelが使えないので電卓と紙でやります」という人と同じレベルに見られることになりかねません。

例えば、Wordで文章を書いたら、校正をCopilotにやらせて、誤字脱字を修正し、敬語表現などを最適化させるなどのことが簡単に行えるようになります。

また、ビデオ会議を開催したら、自動的に音声を記録し、テキスト化し、議事録を出力させるなどということも簡単に行えるようになります。

生成AIは、画像生成AIはクリエイティブな仕事のツールとして利用されるようになり、テキスト生成AIは、デスクワークのうちの知的単純労働を代行するようになっていきくでしょう。

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6.中国のCopilotの現状

LLMの一般向け公開ではOpenAI社に遅れをとった中国のテック企業ですが、Copilotの分野では先んじています。

β版という建前ですが、すでにさまざまなビジネスツールにCopilotの搭載が始まっています。

6.1.Officeに相当するWPS

日本や米国、欧州ではビジネスツールとして、MicrosoftのOffice(Word、Excelなど)が使われていますが、中国ではキングソフトの「WPS」がOfiice互換ツールとして使われています。このWPSには「WPS AI」という名称のCopilotがβ版ですが、すでに搭載されています。

6.2.Teamsに相当する釘釘

日本や米国、欧州ではチームコラボレーションツールとして、MicrosoftのTeamsがよく使われますが、中国ではアリババの「釘釘」(ディンディン)がよく使われます。チャット、ビデオ会議、スケジュール共有、アンケートの自動集計などの機能があります。

この釘釘にもCopilotが搭載され、活用が始まっています。新しいプロジェクトを始める時に、やるべき仕事のリストをCopilotに生成させ、それをチームで共有し、やるべき業務を話し合う。ビデオ会議の記録から議事録を生成させ、それを関係者に自動配布をするなどの使い方が始まり、さらに発展的な活用法の模索が始まっています。

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7.中国は実践活用に優れている

中国はOpenAI社のChatGPTに遅れをとったことは明らかです。

しかし、それは技術開発の遅れではなく、チャットボットの形で公開し、プロダクトを一気に普及するというOpenAI社のマーケティング戦略がうまかったためで、中国にもLLMなどの技術基盤は整っています。

このため、遅れを感じた中国の各企業は、実践活用の分野で追いつこうとしています。画像系生成AIをデザインなどのクリエイティブ業務に活かす試みは盛んですし、ビジネスツールにCopilotを実装し、デスクワークでの活用も盛んです。

生成AIは、米国と中国が競い合いながら進化をしていくことになる可能性が大きいといえるでしょう。

【関連情報】「生成AIとは?従来のAIとの違い、概要や種類について詳しく解説|アンドエンジニア」

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