日本で「会社」といえば株式会社のイメージが強いですが、「合資会社」という会社の形態もあるのをご存じでしょうか。
この記事では合資会社とはどんな形態なのか、株式会社や他の会社形態との違い、合資会社のメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
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1.合資会社とは
日本でいう「会社」は、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4種類に分けられます。その中で合資会社は唯一、社員が2名以上いないと設立できないという特徴があります。
なお、合資会社を略す際は(資)または(シ)と記されます。
1.1.合資会社の特徴
合資会社の設立時に必要な2名の社員のうち、1名は有限責任社員、もう1名は無限責任社員となります。
有限責任社員とは、会社の設立時に出資した額までの責任を負う社員です。
会社が負債を支払う必要が生じた場合、有限責任社員は出資額以上の額を支払う必要はありません。
反対に無限責任社員は、会社が負債を負った場合、全額を支払う責任がある社員です。
リスクは大きいですが、積極的に経営に参画できるメリットがあります。
例えば、200万円の出資をした有限責任社員がいる合資会社で900万円の負債が生じ、ただちに支払わなくてはいけなくなった場合、有限責任社員は出資額である200万円を支払う義務がありますが、それ以上の責任は発生しません。
しかし、無限責任社員は残りの700万円を支払う義務があり、支払えない場合は責任をとることになります。
合資会社のもう一つの特徴は、設立時の出資方法として労務出資や信用出資が認められていることです。
株式会社に比べて出資の自由度が高く、設立費用を抑えることが可能です。
また、設立時に定める定款も公証人による認証が不要であるなど、株式会社より少ない手続きで設立できます。
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2.合資会社と形態が異なる会社
会社には、合資会社の他にも、株式会社、合同会社、合名会社といった会社の形態があります。それぞれの違いや特徴を簡単にご紹介します。
2.1.株式会社
株式会社は会社形態の中で最も設立数が多く、多くの人にとって一番馴染みのある会社の形態でしょう。
株式会社は株式を発行することで資金を集め、会社を経営します。設立時にコストがかかりやすく、必要な手続きも複雑ですが、そのぶん社会的信頼度が高いといった特徴があります。
かつては株式会社を設立するためには資本金が1000万円以上必要であったり、取締役が3人以上、監査役が1人必要だったりと制限が多く、設立のハードルが高かったのですが、2006年の会社法改正 により資本金1円での設立が可能となりました。
また、一人でも株式会社が設立できるようになるなど、設立要件は大幅に緩和されました。
株式会社のもう一つの特徴は「所有と経営の分離」です。出資者である株主が会社の所有者となり、株主が経営者となる取締役を選出します。
ただし、株主と取締役は同一人物でも問題ないため、一人で会社を設立することも可能です。
2.2.合同会社
合資会社と似た形態で、2006年の会社法改正時にアメリカのLLCという会社形態をモデルとして新しく制定されました。
一人で設立でき、なおかつ株式会社よりも低コストで簡単に設立できることから、近年人気の高い会社形態となっています。
合資会社と同じ持ち分会社の一つですが、構成する社員が有限責任社員のみとなるのが大きな違いです。
また、出資者が経営者となるので、株式会社よりも経営の自由度が高いメリットがあります。
さらに、決算書を公表する必要がなかったり、利益配分を自由に決められたりといったメリットもあります。
現在では合同会社の形態をとる有名企業も増えてきており、信用度も認知度も以前より向上していると考えられます。
なお、合資会社で無限責任社員全員が辞めた場合、構成員が全員有限責任社員となることから、自動的に合同会社となります。
2.3.合名会社
合名会社は持ち分会社の一つで、出資者全員が無限責任社員となる会社形態です。
中世ヨーロッパにも存在した歴史ある会社形態で、社員それぞれが業務執行権と代表権を有するため、複数の個人事業主による会社と考えることもできます。
会社の構造は「組合」とほとんど同じですが、会社であるため法人税が課されます。
合資会社で有限責任社員がやめた場合は無限責任社員のみの会社になることから、自動的に合名会社に変更されます。
最近では、万が一負債を負った際のリスクが大きいため、新規設立数は減少しつつあります。
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3.合資会社のメリット
現在ではあまり見かける機会の少ない合資会社ですが、どのようなメリットがあるのでしょうか?
企業側のメリットと合資会社で働く従業員側のメリットをそれぞれ解説いたします。
3.1.企業側のメリット
2006年に会社法が改正され、有限責任社員のみで構成できる合同会社という会社形態が生まれたため、現在では合資会社において特筆すべきメリットはなくなってしまいました。
近年新しく設立された会社のうち、合資会社の割合は1%以下となっています。
2006年以前は合同会社という制度がなかったため、合資会社を設立するメリットが多くありました。
例えば、現在では1円から株式会社を設立することが可能ですが、会社法改正前は最低1,000万円の資本金が必要でした。法人設立のコストを抑えることができるため人気のあった有限会社という会社形態でも資本金は最低300万円必要でした。
その点、資本金準備が容易な合資会社を設立することはメリットがあります。
家族経営の老舗酒造会社や醸造会社に多く見られ、会社法改正以前に設立されたIT企業やタクシー会社にも合資会社が存在します。
3.2.従業員側のメリット
数は減少していますが、求人情報で合資会社を見つけることもあると思います。
株式会社のように一般的に聞くことが少ない会社形態のため不安に感じるかもしれませんが、特に問題はありません。
前述した通り、合資会社は起業時のコストが低く、手続きも容易で、小規模経営・家族経営の企業が多い傾向があります。
合資会社の企業は従業員と経営者の関係が近く、アットホームな雰囲気が魅力であることが多いです。
また、多くの合資会社は歴史がある企業であり、ノウハウが豊富で学ぶことが多くあるのがメリットといえるでしょう。
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4.合資会社のデメリット
有限責任社員のみで構成される合同会社という会社形態が生まれたことにより、合資会社は無限責任者員が1人以上必要という点がリスクと考えられるようになりました。
前述の通り、万一会社が多額の負債を負った際は、無限責任社員は個人財産で負債を補填しないといけません。最悪の場合は自己破産することになります。
現在は株式会社も低予算で設立できます。新しい会社を設立する場合、ほとんどのケースにおいて合資会社よりも株式会社や合同会社が選ばれることが多いでしょう。
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5.まとめ
ここまで、合資会社について、その概要や株式会社との違い、メリットやデメリットをご紹介しました。
その名を耳にする機会は少なくとも、合資会社は法的に何の問題のない信頼できる会社ですので、就職を考える際も心配する必要はありません。
合資会社への就職をお考えの際は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
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