【年俸制(ねんぽうせい)とは】月給・日給制との違いやメリット・デメリット、注意点

【年俸制(ねんぽうせい)とは】月給・日給制との違いやメリット・デメリット、注意点

近年、従業員への給与支給について「年俸制(ねんぽうせい)」を採用する企業もありますが、年俸制は、「月給制」と何が違うのでしょうか。

今回は、年俸制の仕組みや、企業・従業員双方にとってのメリット・デメリット年俸制の企業で働く上で理解しておきたい注意点などを解説します。

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1.年俸制とは

年俸制、まず読み方は「ねんぽうせい」です。「年俸」の「俸」が「棒」の字に似ていることから誤って「ねんぼうせい」と読んでしまう人もいるので気を付けましょう。

年俸制の意味ですが、労働による報酬を1年単位で定める給与形態を指します。

金額は昨年度の会社の業績や個人の経歴、スキル、貢献度などにより決定され、1年間で受け取れる金額は、契約開始、更新の段階で提示されます。

年俸の支給タイミングは、労働基準法により月に1回以上と定められています。

そのため、1年の給与を12等分して毎月支給するケース14等分して2ヵ月分を夏・冬の賞与にあてるケースなどがあり、それぞれの企業が社内規定や雇用契約上で明示しています。

1.1.月給制との違い

月給制は、月ごとに支給額が算定される給与形態です。勤続年数や年齢などを考慮し決定される基本給に各種手当が加わり、1ヵ月分の給与として月々支給されます。

人事評価に基づく昇降給が生じる可能性もあるため、年俸制のように正確に事前に給与額を把握することは難しくなります。

また賞与に関しても、業績によってカットされる場合もあります。

1.2.日給制との違い

日給制とは、1日ごとに支給額が算定される給与形態です。1日あたりの給与額に月の出勤日数をかけ合わせた金額が1ヵ月分の給与となります。

そのため、ゴールデンウィークや年末年始などの大型連休がある月については、企業の規定によっては給与額が減ることになります。

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2.年俸制を導入している企業の目的

年俸制を導入する企業は、どのような意図をもって年俸制を採用しているのでしょうか。その目的と理由は以下の通りです。

2.1.年俸制を導入する主な目的

企業が年俸制を導入する主な目的は、人件費の管理を簡略化できる点にあるといえます。少なくても1年間は基本給に変動が生じないため、予算管理や経営計画の策定をしやすくなります。

加えて、年俸の算定は各々の成果により変動が可能となるため、貢献度の高い従業員を正当に評価することができやすいです。

2.2.これまで日本企業が主に月給制を採用してきた理由は?

長きにわたり日本企業で広く月給制が導入されてきた理由は、従業員の勤怠や業務実績に対する対処が各月内で完了する点にあります。

例えば、4月に遅刻や欠勤をした場合、5月支給分の給与ですぐに控除が可能です。

また、人事評価に基づく昇降給に対しても、月給制であれば柔軟に対応できます。

このようにスピーディーにカスタマイズした対応をしやすい点が、日本企業で長く月給制が採用されてきた理由の一つといえるでしょう。

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3.年俸制のメリット

年俸制を採用する企業側年俸制の企業に勤める従業員側それぞれにとってのメリットをご紹介します。

3.1.企業側

経営・事業計画を立てやすい点が、年俸制を採用する企業のメリットといえます。

各種手当てや昇降給、賞与などによって人件費が大きくブレることがないため、中長期の見通しが立てやすくなります。

年俸の算定には年功序列などは関係ない事が多く、それぞれが出した成果がベースとなることが多いです。

したがって、高いスキルを持っていたが、他社では評価されにくかったといった優秀な人材の獲得が期待できる場合もあります。

3.2.従業員側

従業員から見た年俸制の大きなメリットは、年間の収入が明確な点でしょう。

向こう1年間の計画が立てられるため、前もって大きな買い物や旅行の計画もしやすくなります。

また、自分のスキルや成果が給与額に直結しやすい点も年俸制の大きなメリットといえます。評価をもらえる土壌があるため、自分の頑張り次第で高収入が目指せます。

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4.年俸制のデメリット

メリットの一方で、年俸制にはいくつかのデメリットも存在します。

4.1.企業側

企業側にとっての年俸制のデメリットは、契約期間中に年俸の変更ができない点です。

たとえ想定外の業績悪化に見舞われても、従業員の同意なく企業側の一存で減給することは難しいです。

また、従業員が目先の成果を重要視しがちになるリスクにも覚悟が必要です。

5年先、10年先を見据えたアクションに消極的な従業員が多くいた場合、そのぶん企業の拡大成長は遅れをとる可能性があります。

4.2.従業員側

客観的な成果を常に追い求めなければ次年度からの年俸が下がるリスクがある点は、従業員側にとっての年俸制のデメリットといえます。

良くも悪くも成果主義であることが多いため、会社に貢献できれば次年度から大きく年俸がアップすることが期待できる一方、その逆もあり得ます。

さらに、年俸制の仕組みや評価基準に関して明瞭で公平性が保たれた状態でなければ、同僚と比較して不満を感じてしまったり、モチベーションの維持が難しくなったりする可能性もあります。

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5.年俸制で働く際の注意点

年俸制の企業で働く際には、あらかじめ認識しておくべき注意点があります。入社してから「知らなかった」と後悔しないためにも、ぜひここで確認しておきましょう。

5.1.残業代の取り扱い

年俸制の場合も、法定労働時間を超過して働いた場合は、管理監督者を除き残業代が支払われることになります。

ただし、固定残業代制度(みなし残業代制度)を採用している場合は一定時間分の残業代を含んだ年俸が設定されているため、その分の残業代は支給されません。

企業によって制度が異なる部分なので、あらかじめ確認をしておきましょう。

5.2. ボーナスの支払い方法

ボーナスの有無や支払い方法は年俸制で統一基準があるわけではなく、あくまでも各企業に委ねられています。

年俸制を採用する企業におけるボーナス支給は、以下のような方法が考えられます。

  • あらかじめボーナスを加味した年俸を設定する
  • 年俸を1年間の給与支給回数以上(13回以上)に等分して、残りをボーナスにあてる
  • 定められた年俸とは別に、各々の評価に基づいた金額をボーナスとして支給する


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5.3.途中退職または解雇の場合の給与の支払い

1年単位で報酬を算定する年俸制ですが、年俸の支給は在籍期間に限られるのが一般的です。契約途中で退職したり解雇されたりした場合は、退職日当日までの労働に対する報酬を受け取れる形となります。

ただし、ボーナスを年俸に含めて支給している企業のうち、雇用契約書に「途中退職、解雇の場合、賞与分の支給はしない」といった旨が記載されている場合は、賞与分の支払いは行われませんので注意しましょう。

5.4.各種税金の支払い

企業に雇われている場合、所得税や住民税は月々の給与から控除されます。この仕組みは年俸制も月給制も変わりません。

所得税は当年1月~12月、住民税は前年1月~12月が算定期間となります。

所得税に関しては1年間が終わらなければ税額が確定しないため、過剰分は年末調整にて変換されます。

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6.まとめ

月給制を選択する企業が多い中、年俸制の採用によって安定的な経営基盤の構築や優秀な人材の確保を目指す企業も増えつつあります。

「ビジネスパーソンとしてもっと成長したい」「自分のスキルを正当に評価してくれる企業で働きたい」という場合は、年俸制を採用している企業を前提に転職活動をしてみるのも方法の一つです。

まずは、どのような企業が年俸制を採用しているかをぜひ調べてみましょう。

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