毎年、夏に近づくとよく聞かれるようになる「クールビズ」という言葉。ビジネスシーンにおける夏の軽装を意味するものですが、具体的な定義や実施期間をご存じでしょうか?今回は、クールビズの概要やメリット、実施期間、服を選ぶポイントなどを解説します。
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1.そもそもクールビズとは?
クールビズとは、ビジネスシーンにおいて過度な冷房の使用を避け、夏の軽装を推進する取り組みのことです。可能な限り快適に働ける環境を目指すと同時に、冷房の使用を抑えることで二酸化炭素排出量を軽減させることを狙いとしています。2005年(平成17年)6月より環境省主導で本格的にスタートしました。
クールビズの取り組みの発端は、地球温暖化対策を国際的に定めた「京都議定書」の発効にあります。
温室効果ガスの削減目標として2008年~2012年の5年間で1990年比6%減が指標とされましたが、当時は目標達成が危ぶまれていました。
クールビズはそんな中で誕生した取り組みの一つとなっています。
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1.1.具体的な取り組み
クールビズでは、適正室温の目安となる28度に対応可能な軽装を呼びかけています。軽装について絶対的な定義はありませんが、主にジャケットやネクタイの着用を省くことが一般的です。
クールビズの実施により「いかなる時もネクタイを締めジャケットを着用しなければならない」という習慣が一変し、ノーネクタイ・ノージャケットが普及しました。また、スーツスタイル以外の仕事でもユニフォームの軽装化など独自の取り組みが推進されるようになりました。
1.2.小池百合子環境相(当時)が推進
前述のとおり、クールビズは2005年から始まった取り組みです。この取り組みを推進したのは、当時の環境大臣であり現東京都知事の小池百合子氏でした。
クールビズの名称は約3,000件の一般公募の中から決定したものですが、選考の際に小池氏は、「クール」という単語を含めることを条件に挙げたそうです。また、クールビズにおける室温の適正を28度と定めた根拠については、
- 事務所衛生基準が法律で28度に定められているため
- ジャケットの脱ぎ着によって体感温度が2度下がるため
などと回答しています。
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1.3.2021年にクールビズは廃止された?
2020年4月の小泉進次郎環境大臣(当時)の会見において、翌年の2021年度からクールビズの実施期間設定を廃止する旨が表明されました。これはクールビズの取り組み自体を廃止する意味ではなく、あくまでも「従来のように政府主導でクールビズの適用期間を設定、周知することを廃止する」という内容です。
この表明に則り、2021年度からは「状況や都合を踏まえ、各々のタイミングでクールビズを実施していきましょう」といった方針でクールビズが継続されています。
1.4.環境・生活・健康に優しいクールビズ
クールビズに取り組むと、以下の3つの優しいメリットが享受できます。
●環境に優しい
クールビズは2050年のカーボンニュートラル の実現に大きな効果をもたらす取り組みです。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素(CO2 )や一酸化二窒素(N2O)といった、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味しています。
軽装化により過度な室温の設定が不要になれば、省エネや省二酸化炭素につながります。一見小さなことかもしれませんが、「塵も積もれば山となる」というように、全国一人ひとりの取り組みが未来に大きな成果をもたらします。
●お財布に優しい
クールビズに取り組む事により、従来よりも支出が減少することが見込まれます。軽装にすることで被服費を抑えることが可能だからです。また、冷房が適正温度で稼働されることで電気代が過剰に膨らむこともなくなるでしょう。
●健康に優しい
クールビズは健康の維持にも有効です。近年は地球温暖化の影響もあり、世界各地で外気温の上昇が著しい状況が続いています。その状況下で過度に冷房を使用し室温を下げすぎると、外気温と室温に大きな温度差が生まれ、体調を崩すリスクが高まります。
自力での体温調整が難しくなったり、ホルモンバランスや自律神経が乱れたりと、健康を損ねる要因になりかねません。しかし、適切な室温が保たれればそのリスクは限りなく軽減することが可能です。
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2.クールビズの期間はいつからいつまで?
前述のとおり、2021年度からクールビズ実施期間の設定は廃止されており、その対応は各々の判断に委ねられています。ただ、廃止前の2020年度は「5月1日~9月30日」でクールビズが実施されていましたので、クールビズに取り組む場合、この期間を一つの目安として考えて良いでしょう。
そもそもクールビズの取り組みは期間にかかわらず気温に応じた柔軟な対応を認めるものであるため、その認識と対応は継続してまったく問題ありません。
3. 2023年のクールビズ期間はいつ?
2023年のクールビズ期間も例年同様、「5月1日~9月末」に実施するよう呼びかけられています。
常日頃から気温や働き方に最適な服装選びを意識することが大切です。
夏本番に向けて、体調に考慮しながら熱中症対策を心がけましょう。
4.クールビズの注意点
クールビズ=軽装という定義は間違いではありませんが、中には誤解が生じているケースもあるようです。クールビズを取り入れる際には以下の2点を理解しておきましょう。
4.1.クールビズだと逆に暑くなる場合も
クールビズに取り組む人の中には、「28度では暑い」と感じている方も少なくないのではないでしょうか。その要因として考えられるケースは、「室温=冷房の設定温度」ではないという認識が不足している場合です。
室温は部屋の日当たりや電子機器の使用状況などにより上昇することがありますし、同じ部屋の中でも気温が均一であるわけではありません。また、暑さを感じる要素は室温だけではないという点も理解しておくことが必要です。
人が感じる快適さには、湿度や気流、活動量などの要素も関連しています。例えば、同じ28度であっても湿度が90%の時と50%の時では体感に大きな差が生じるのです。
4.2.クールビズ=ラフな格好ではない
クールビズで認められる「軽装」とは、決してラフな格好と同義ではありません。たとえ軽装でも、ビジネスマナーを踏まえた服装であることが大前提です。
カジュアル過ぎたり着崩し過ぎたりすれば相手に不快感を与えることになりかねないので注意しましょう。
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5.クールビズ期間時の服の選び方
「クールビズ期間の服装のルールは理解できるけれど、実際に選ぶとなると難しい」という方も多いかも知れません。しかし、はじめに選び方のポイントさえ押さえておけば決して難しいことはありません。次のクールビズ期間に備えて以下の3点を頭に入れておきましょう。
5.1.シャツの素材や色
クールビズ期間を快適に過ごすためにはシャツの素材選びが大切です。天然素材で速乾性に優れているリネン、スポーツウェアにも使われサラっとした着心地のクールマックス、接触冷感素材のアイスコットンなどがおすすめです。
またここ数年は暑い夏をなるべく快適にする工夫を凝らした製品が数多く出ています。
また、視覚から受ける影響も侮れません。色の選択によって体感温度が3度変わるとも言われています。そのため、クールビズ期間は水色や青など寒色系の色を取り入れることをおすすめします。
5.2.パンツの素材や色
クールビズ期間のパンツは、快適さを求めつつも型崩れしにくいウールやポリエステル素材が望ましいでしょう。また、ウォッシャブル素材やノーアイロンパンツであれば洗濯の手間を最小限にできます。
リネンも通気性がよく夏向きの素材ですが、放っておくとシワになりやすいので、手入れが面倒な場合は避けた方が良いでしょう。
パンツの色に関しては、軽やかに見えるライトグレーやホワイト、ベージュなどがおすすめです。シャツとのバランスを考えながら選びましょう。
5.3.いざという時のためのネクタイの用意は?
クールビズの期間であっても相手やシーンによってはどうしてもネクタイが必要になる場面もあるでしょう。いざという時に焦らないよう、クールビズ期間中もネクタイを用意し、会社のデスクに準備しておくと安心です。
また、どのようなコーディネートにも対応できるよう、柄物は裂け、落ち着いた色味のものを用意しておきましょう。
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6.クールビズのおすすめコーディネートを紹介
ここからは、クールビズで取り入れたいおすすめのコーディネートを紹介します。軽装になり使用するアイテムが減る分、コーディネートもマンネリ化しがちですが、うまく工夫しながらクールビズを楽しみましょう。
6.1.シャツ×ノーネクタイのコーディネート
最も一般的なシャツにノーネクタイのコーディネート。ネクタイをなくすことで首元の風通しがよくなり、暑さが軽減されます。シャツはここ数年多くのカラーやデザインの商品が売られていますが、その中でも「ボタンダウンシャツ」がおすすめです。
襟の端が小さなボタンで留められていることで形が崩れにくく、すっきりとしたスマートな印象を見る人に与えます。ボタンや襟にデザイン性があるものを選ぶとおしゃれ度がアップします。
また、クールビズ実施中でも場合によってはジャケットを着用する機会があるかもしれません。その場合、ネクタイがないぶんジャケットの素材や柄が印象を決定づけるため、夏らしい淡く優しい色味のものを選ぶと良いでしょう。
ジャケットで視覚的に重みが出るので、シャツは爽やかで軽やかな印象を与えるブルー系がおすすめです。
6.2.ポロシャツ×パンツのコーディネート
シャツよりもカジュアルな印象を与えるのがポロシャツを使ったコーディネートです。以前は認められていないケースも多く見受けられましたが、最近は一般化してきました。
とはいえ、見る人によっては「ラフすぎる」と思うケースも考えられるため、なるべく華美なカラーやデザインは避けるのが無難です。定番色のネイビーやグレー、白、黒などはどのようなシーンでも外すことのない安心感があります。また、涼しげな印象を演出したい場合はやさしい色味のパステルカラーもおすすめです。
パンツに関しては、チノパンやスラックスを合わせるのが一般的です。ポロシャツとのバランスを見て、あまり重くなりすぎないよう明るめのカラーを選びましょう。
7.クールビズ期間終了後の暑さ対策
クールビズ期間終了後は秋冬に向けて服装の変更を行います。
しかし、10月に突入しても暑さが残り快適に過ごしにくい日々が続くかもしれません。
そのような場合、ミニ扇風機や汗拭きシートなどを持ち歩くようにしましょう。
気温の変化に気をつけながら、いつでも熱さをしのげるよう、熱中症対策の準備は怠らないようにしてください。
8.まとめ
クールビズは、取り組みがスタートした当初と比べて選べる服装や製品のバリエーションが増えています。しかし、「相手に不快感を与えない、マナーを踏まえた服装」という大前提は忘れてはなりません。
ルールの中でファッションを楽しみながら、暑い夏の仕事時間を快適に過ごしましょう。