「FIRE」とは?新たな早期リタイアの生き方について解説

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経済的に自立し、早期退職を目指す「FIRE」という生き方。体験本や指南本など関連本がベストセラーになり、20、30代を中心に話題となっています。具体的にFIREという生き方とは?何をすればいいのか?ブームの火付け役となった「FIRE 最強の早期リタイア術」(ダイヤモンド社)をもとに解説します。

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1.FIREって何?

「FIRE」とは「Financial Independence Retire Early」の頭文字からとった造語です。日本語での読み方は「ファイア」あるいは「ファイヤー」で、簡単に言えば、経済的な自立をすることで早期リタイアをし、自由に暮らす生き方のことです。

2000年以降に成人を迎えたミレニアル世代を中心に流行しており、日本でのブームのきっかけとなったのは、第一人者であるクリスティー・シェンとブライス・リャンの著書「FIRE 最強の早期リタイア術」の翻訳本(ダイヤモンド社)が2020年3月に出版されたことでした。本書は瞬く間に国内でも話題となり、ベストセラーになっています。

中国農村部の貧しい子ども時代を過ごした著者のクリスティーさんは、日々の食事にも困る中でお金の大切さを身を持って体験しています。父親の仕事の関係でカナダに渡り、大学卒業後はエンジニアとして働きますが、節約と投資で31歳でミリオネアとなり、仕事をリタイアしました。

その後はパートナーのブライスさんと世界中を旅行してまわり、FIREにまつわる情報を集めたサイト「MILLENNIAL REVOLUTION」の運営や執筆活動を行っています。

「FIRE 最強の早期リタイア術」には、FIREな生き方を実現するために著者が実践してきたノウハウが紹介されています。

2.FIREは従来の早期リタイアとどう違うのか?

「FIRE」という言葉が出てくる前から、早期リタイアという考え方はありました。FIREと同じく、定年前に早期退職をして自由な時間を楽しむ方法です。では、FIREと早期リタイアの違いはどこにあるのでしょうか?

それは、退職後に資産運用をしながら生活費をまかなうか、貯蓄を切り崩しながら生活するか、という点です。FIREの「FI(Financial Independence)」=経済的自立が意味するのは、資産運用によって不労所得を得ることで生活費を確保する仕組みをつくることです。

従来の早期リタイアでは、あらかじめその後の生活を送るのに十分な貯蓄を形成したうえで、それを切り崩していくことが前提となっています。

FIREでは資産運用の利益を得られるので、従来の早期リタイアと比べると多額の資産を用意する必要がなく、投資元本となる一定の資産は減らさずに済むことが特徴です。

3.経済的に自立するにはいくら必要?

早期リタイアほどまとまった資産は必要ないと言えど、資産運用をするための元本は用意しなくてはいけません。FIRE資金を用意するにはどれくらいあればよいのでしょうか?著者が本書で紹介しているのは「4%ルール」です。

4%ルールとは、退職プランと経済理論を研究したトリニティ大学における論文がもとになっている理論です。研究では、一定額の貯蓄を持っている退職者がポートフォリオから毎年一定割合の金額を引き出しつつ、残りの資金をそのまま投資しておいた場合、ポートフォリオがどうなるか調査をしました。

その結果、引き出し率が4%であれば、貯蓄は底をつくことがないということが明らかになりました。つまり、ポートフォリオの4%の資金で1年間の生活費を賄えば、貯蓄は30年以上継続する可能性が95%あるということです。

例えば、生活費が年間200万円必要な人の場合、25を掛けた数字、5000万円を年利4%で運用できれば、95%の確率でFIREが成功するのです。

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著者の場合、夫婦2人の年間の生活費を4万ドルとし、100万ドルを目標に貯蓄をスタートしました。

元々子ども時代のコーラ1本すら買えない貧困経験から、贅沢をする習慣がないこともあり、社会人になっても高額な買い物をせず服すらほとんど買うことがない生活をしていた著者は、さらに支出を細かく記録し、徹底的に節約を行います。

貯蓄率52~78%と年収の大半を貯蓄に回し、夫婦2人で6年で50万ドルを貯蓄、働き始めて9年でリタイアできる額を確保できました。

もちろん、お金は保有するだけでは増えません。2人は貯蓄に回した分を投資していきます。投資についても始める前に徹底的に勉強し、自分たちが最も納得できるものとして、手数料の低いインデックス投資を選択します。

株式以外にも債券を4割保有する、自国の株式ばかりにしない、など様々なルールにより、世界金融恐慌も乗り越え、資産を増やしていきました。

また、貯蓄をスタートするにあたり、著者は注意点として、多額の借金は決してしないことを前提としています。特に金利の高い消費者ローンは最も危険で避けるべきものとしてあげています。

住宅や車の購入も、販売価格だけではなく、その後の維持費や売買する時の手数料などもきちんと考えることが大切だとしていて、多額のローンに関しては慎重になるべきと述べています。

4.リタイア後、どんな生活が待っている?

リタイア後、著者夫婦は家や車を持たず、世界中を旅しています。その理由は、リタイア直後に1年間世界旅行に行ったところ、かかった費用がカナダでの生活費とほぼ変わらなかったからでした。

旅行先を西欧など物価の高い地域と東欧や東南アジアなど物価の安い地域を組み合わせる、クレジットカードのポイントでマイルを貯めるなど、旅費を安く抑えるコツも本書で紹介しています。

その他にも、保険、子育て、何かあった時のためのバックアップ術など、FIREという生き方をするためのノウハウを紹介しており、早期リタイアと子育てを両立している実例なども載っています。

しかし、30代で完全リタイアしても、その後の人生は長く、時間を持て余してしまいそうだと思う人もいるでしょう。そんな人には、リタイア後は副業をしながらFIREをする「サイドFIRE」という方法もあります。少しでも副業で収入を得られれば、資金面でも安心できるので、現実的なスタイルといえます。

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5.日本でおすすめの資産運用の方法は?

投資・資産運用と言っても、その種類はさまざまです。それぞれにメリット・デメリットがあるため、どういった方法で投資をするかはきちんと知識を持ったうえで選ばなくてはなりません。基本的にはいくつかの方法を組み合わせて運用していくことになると思いますが、ここでは特に押さえておきたい2つの資産運用方法について紹介します。

・積立投資:株式や投資信託などの金融商品を一定の金額で定期的に購入する方法
・個人型確定拠出年金(iDeCo):自分が拠出した掛金を自分で運用し、資産を形成する年金制度

積立投資は、少額から始められることや時間分散によりリスクを低減できることが特徴で、長期投資に分類される方法です。

個人型確定拠出年金(iDeCo)は年金制度の一種で、老後に受け取る年金を増やすためのものです。積立投資制度の1つであるNISAやiDeCoは税制上の優遇措置が取られており、初心者でも始めやすいのがメリットです。

2つの共通点は先を見据えた長期的な資産運用が無理なくできることで、FIRE生活での老後が心配だ、という人にとっても1つの安心材料となるでしょう。

FIREは時間や場所に縛られない自由な生き方ができる魅力がある一方で、「やめとけ」といった声も聞かれます。思ったように運用益を得られなかったり、自分や家族の病気やケガなどで想定外に出費がかさんでしまったりして、経済的自立に失敗する可能性があることが、その一因です。

万が一に備えてリスクの少ない方法で余剰資金を蓄えておくことも大切で、上に挙げた2つの方法はそのような目的でも役立つことでしょう。

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6.まとめ

この本で紹介しているFIREという生き方は、国ごとに税制など様々な事情も違うため、日本でまったく同じようなことをするのは難しい部分もあります。

しかし、幼少期に貧困を経験し、お金の大切さをわかっている著者だからこそ、多額のローンへの警戒、日常生活での節約方法や無駄を省くアイデアなど、説得力があり参考になるトピックスもたくさん出てきます。

日本でもFIREの指南書はいくつか出版されています。興味のある方はぜひそちらも読んでみると、より具体的なプランを練ることができるのではないでしょうか。

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原稿:回遊舎(かいゆうしゃ)

"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。

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