「仕事が辛いなら、声を変えよう」第1回<br>「声」で損をしていませんか?

「仕事が辛いなら、声を変えよう」第1回<br>「声」で損をしていませんか?

ビジネスシーンや就職活動でも大事なのが第一印象。第一印象というと、見た目ばかりに気が行きがちですが、実は「声」も第一印象を決定づける大きな要素です。声が小さかったり、通りにくかったりする人は、「声」で損をしているかも。『声を変えるだけで仕事がうまくいく』(マイナビ新書)の著者で3万人の指導、250社で企業研修実績を行ってきたボイストレーナーの秋竹朋子先生さんに、声の重要性や「いい声」を出すコツについて話を伺いました。

声で仕事がうまくいく

ご自分の「声」を意識したことはありますか?実は、声は大事なビジネスツールです。いい声の持ち主はそれだけで相手にいい印象を持ってもらえますから、仕事で得をすることが多いのです。
この事に気づいている人が次第に増えてきています。その証拠に、私の主宰する話すためのボイストレーニングスクールにはたくさんのビジネスパーソンが通っています。経営者や医師からプレゼンすることが多いビジネスパーソン、就職試験を控えている人まで、それぞれ声が必要な場面は違いますが、「声に自信を持って新しいステージに進みたい」と"声磨き"に精を出しています。

具体的な悩みで多いのは「声が通らない」、「滑舌が悪い」、「人前で堂々と話すテクニックがない」、「よく聞き返される」などです。

たとえば、大手会計事務所に勤務する30代のKさんは昇任試験に向け声を何とかしたいと私のスクールにやってきました。仕事には自信があるのですが、声がこもりがちで、プレゼンでは精鋭ぞろいのライバルたちと比べ「聞き劣り」してしまうのではないかと考えたそうです。

確かにKさんの声を聞くと、口先だけで話していました。これは、発声法が間違っているからです。多忙のためレッスンを受けられるのは2日間で3時間とのことでしたが、正しい呼吸法や原稿を読む際の息を吐く場所や間の取り方なども指導することで、たった3時間ですが、声がよく響くようになりました。「こんなことだったら、もっと早く来ておくべきだった」とは彼の弁。その後朗報が届いたのは言うまでもありません。

このKさんにかぎらず、声を変えたことで、「営業成績が上がった」「面接に通った」という人をたくさん見てきました。声が変わると仕事にいい影響をもたらします。逆にいえば、今仕事が辛いなら、それはもしかすると声のせいかもしれません。

第一印象は声次第?

声は第一印象を大きく左右します。服装や髪形に気を配るのはもちろん大事なことですが、どんなに見かけがよくても、どんなに話の内容が良くても、声が小さくて聞き取りにくければ、「この人で大丈夫かな」と不安を与えてしまします。一方で、相手の聴覚にしっかり届く声には説得力があり、相手の心を揺さぶることができます。初対面の相手に短い時間で自分をPRしなければならない就職や転職の面接ではとりわけ声が重要だといえるでしょう。

これを実証している調査結果があります。アメリカの有名な心理学者が提唱した「メラビアンの法則」です。相手についての情報が少ない場合、私たちは何を判断材料にしているかについて調べたものです。話の内容が7%で、声の質や話し方が38%。驚きですね。

いい声は「一流」の証(あかし)

私が知る限り、一流と呼ばれる経営者やビジネスマンは必ずといっていいほどいい声をしています。さらには話す相手や場面に合わせて声の出し方をマスターしている"上級者"も多くいます。

そして、声の良さは収入にも関係があるようです。アメリカのデューク大学が行った調査によると、792人の男性CEOの声を調べた結果、低い声を持つ男性はそうでないCEOと比べ、より規模の大きな会社を経営し、1年で18万7000ドル(約2300万円)も多く稼いでいたとか。「低い声=いい声」と考えれば十分納得できる話です。

もちろん、今は声に自信がない人も落ち込む必要はありません。病気でない限り、声はトレーニングとちょっとした発声のコツで改善します。もし今の声に不満があるとしたら、その分「伸びしろ」があるということ。前向きに考えましょう。

「声は生まれつき」は思い込み

「声が通りにくい」「滑舌が悪い」「すぐに詰まってしまう」など、自分の声の弱点に気付きながらも、「生まれつきだから」と何もしないでいる人がたくさんいます。それはとてももったいない話。先ほどお伝えした通り、病気でなければ、声は変えられます。ぜひ自分の声をあきらめないでください。

声が生まれつきでないという話をするときに、私はよく赤ちゃんの声の話をします。赤ちゃんの声ってどこにいてもとても声がよく通りますね。誰も教えてないのに生まれながらにして正しい発声法ができているからです。それができなくなってしまうのは、間違った声の出し方が癖となって定着してしまっただけのことなのです。

日本語は間違った発声になりやすい

相手の聴覚にしっかり届く「いい声」を出すために重要なポイントが(1)呼吸、(2)発声、(3)共鳴、(4)発音――の4つです。その中でももっとも大事なのが(1)の呼吸。腹式呼吸の割合をより大きくした正しい呼吸ができていなければ、絶対にいい声にはなりません。

なぜ腹式呼吸が大切なのでしょうか。私たちは声を出すときに息を吐いていますが、そのときには胸式呼吸と腹式呼吸のふたつをミックスさせています。相手の聴覚に届くしっかりした声を出すには、腹式呼吸で吐く息の割合を大きくすることがとても重要です。ただ、これがなかなかできていない人が多い。私の感覚では、この腹式寄りの呼吸ができている日本人は半分くらい。女性だけでいえば6割が胸式寄りの間違った呼吸法で話しています。

これには日本語という言語ならではの理由もあります。日本語は英語のように息を吐く量でアクセントをつける強弱アクセントではなく、『橋』と『はし(箸)』の言い分けで分かるように高低アクセントです。そのため、発音そのものがそれほどクリアでなくても、意味はなんとなく通じてしまう。そうやって正しい発声をさぼっているうちに、腹式呼吸ではなく、胸式寄りの呼吸になり、通りにくく、詰まったような声になってしまうのです。

自分が腹式寄りで話しているか胸式寄りで話しているかを見分ける簡単な方法があります。使うのはスマホについている「ボイスメモ」。自分の声を吹き込む際、あるいは録音したものを再生する際に画面に表示されるメーターの針が大きく振れていれば腹式呼吸、そうでなければ胸式寄りの間違った声の出し方ということになります。ぜひ一度試してみましょう。

プロフィール

秋竹朋子

日本初「ビジネスマンのためのボイストレーニングスクール」(株)エデュビジョン【ビジヴォ】代表。
東京音大ピアノ演奏家コース卒。聖徳大学大学院 音楽研究科卒業。ウィーン国際音楽コンクール及び国内の受賞歴多数。ビジヴォの代表として「声」「話し 方」に問題を抱えるビジネスパーソンの指導を実施。音楽家ならではの聴力と技術を駆使した、日本初 「超絶対音感」によるボイストレーニングが話題を呼び、ビジネス各紙からの取材、TV番組にも多数出演。東京スクールを拠点に北海道~沖縄まで、全国各地への企業研修を行い、これまで3万人以上250社の企業研修を実施。個人のクライアントも上場企業の経営者、芸能人、著名人を多数持つ。2011年~2012年 経済産業省のグローバル人材派遣として「ビジネスボイス」が選ばれフィリピンに赴任、日本にとどまらずアジアにて「声」の指導をして活躍中。著書『「話し方」に自信がもてる1分間声トレ』(ダイヤモンド社)、『ビジネスの発声法』(日本実業出版)、『秋竹朋子の 声トレ!!』『秋竹朋子の即効! モテ歌レッスン』など。

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