新型コロナウイルスの変異株・オミクロン株による感染拡大が続く中、景気の先行きへの不安は増しており、2022年の賃上げへの影響が懸念されます。ただ、労務行政研究所の賃上げに関するアンケート調査では、2022年の賃上げ見通しは6,277円・2.00%となっています。その概要をご紹介します。
労務行政研究所では、1974年から毎年、賃金交渉の動向を把握するための参考資料として、労・使の当事者および労働経済分野の専門家を対象に、「賃上げ等に関するアンケート」を実施しています。
今回紹介する調査は、2021年12月3日~2022年1月18日、労働側、経営側、労働経済分野の専門家7,651人を対象に実施されました。
内訳は、(1)労働側は東証第1部および第2部上場企業の労組委員長等1,754人(労組がない企業は除く)、(2)経営側は全国証券市場の上場企業と、上場企業に匹敵する非上場企業の人事・労務担当部長4,379人、(3)労働経済分野の専門家は主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働経済関係の専門家、コンサルタントなど1,518人。
回答者数および集計対象は労働側209人、経営側94人、専門家103人の合計406人となっています。
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1.2022年の賃上げ見通し(東証第1部・2部上場クラス)
2022年の賃上げ見通しは、全回答者406人の平均で「6277円・2.00%」(定期昇給分を含む)となりました。
厚生労働省調査における主要企業の2021年賃上げ実績(5854円・1.86%)から423円・0.14ポイントのプラスとなっています。2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響から1.86%と8年ぶりに2%を下回りましたが、2022年は再び2%台に乗る予測となっています。
労使別に見た平均値は、労働側6,428円・2.05%、経営側6,423円・2.04%で、両者の見通しは近接しています。
(【画像出典】労務行政研究所プレスリリース)
2.自社における2022年定期昇給・ベースアップの実施
2022年の定期昇給(定昇)については、労使とも「実施すべき」「実施する予定」が8割台と大半を占める結果となりました。
一方、ベースアップ(ベア)については、労働側は「実施すべき」が70.8%で最も多いものの、経営側では「実施しない予定」が43.6%と最多で、「実施する予定」は17.0%にとどまりました。
(【画像出典】労務行政研究所プレスリリース)
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3.自社における2022年夏季賞与・一時金の見通し
自社における2022年夏季賞与・一時金の見通しについて、労働側では「同程度」が50.4%で過半数に達し、「増加する」も34.1%と3割台となりました。
経営側でも「同程度」は57.3%と半数以上を占めるものの、「増加する」は27.2%で3割を下回りました。
(【画像出典】労務行政研究所プレスリリース)
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4.まとめ
ご紹介した労務行政研究所のアンケートでは、労働側、経営側、労働経済分野の専門家の三者の平均で、2022年の賃上げ見通しは6,277円・2.00%となりました。
ただ、自社における2022年定期昇給・ベースアップの実施について、定期昇給(定昇)については、労使とも「実施すべき」「実施する予定」が8割台と大半を占める結果となりましたが、ベースアップについては、労働側は「実施すべき」が70.8%で最も多いものの、経営側では「実施しない予定」が43.6%と最多となりました。
以下の記事で紹介した、日本経済団体連合会(経団連)と東京経営者協会が発表した2021年1~6月実施分「昇給・ベースアップ実施状況調査結果」でも、2014年から2019 年まで「昇給・ベースアップともに実施」した企業は5割超で推移してきましたが、2020年は39.2%、2021年は30.9%に減少しています。
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今回の労務行政研究所の調査からも、2022年のベースアップの実施は厳しい状況がうかがえます。
今春の賃上げでもベースアップがどうなるか、非常に注目されるところです。
(【記事出典】労務行政研究所プレスリリース「労使および専門家の計406人に聞く2022年賃上げの見通し~定昇込みで2.00%と予測、2 年ぶりに2 %台となる~」)