ダイバーシティとは、組織や社会における多様性を指す言葉です。現代の企業は、グローバル化や労働力不足などの課題に直面しており、さまざまなバックグラウンドを持つ人々を受け入れるダイバーシティ経営が重要視されています。本記事では、ビジネスにおけるダイバーシティの意味や導入がもたらすメリット・デメリット、また具体的な活用方法について詳しく解説します。
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1 ダイバーシティとは
「ダイバーシティ」という言葉を耳にしたことがあっても、正確な意味がわからないという方も多いのではないでしょうか。ここではまず、ダイバーシティの意味や種類、関連用語について解説します。
1.1 ダイバーシティは「多様性」を指す言葉
ダイバーシティとは、簡単に言うと「多様性」という意味です。語源はラテン語であり、英語では「diversity」と表記します。具体的には、性別、人種、年齢、文化、宗教、性的指向、障がいといったさまざまな背景を持つ人々が共存し、活躍できる環境を指します。
ビジネスでは、ダイバーシティーを推進することで多様なアイデアが生まれ、組織の競争力が向上すると考えられています。多様な人材の共存は、より豊かな社会を築くことにつながるのです。
1.2 ダイバーシティには「表層的」「深層的」の2種類ある
ダイバーシティーには、外観的な要素の「表層的ダイバーシティー」と、内面的な要素の「深層的ダイバーシティー」という二つの種類があります。両者の違いと代表的な要素は以下のとおりです。
【表層的ダイバーシティ】
自分の意思で変えることができない外観的要素、あるいは自分の意思で変えることが難しい属性
- 性別
- 人種
- 年齢
- 身体的特徴
- 国籍
- 障がい
- 身体的能力
【深層的ダイバーシティ】
外観からは判断できない内面的要素、あるいは表面的には同じに見えても内面的には大きな違いがあるもの
- 宗教
- 信念
- 経験
- 教育
- 性格
- 収入
- 職業
- 役職
1.3 ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)とは?
「多様性」という意味の「ダイバーシティ(Diversity)」に、「公平性」を意味する「エクイティ(Equity)」と、「受容・包括」を意味する「インクルージョン(Inclusion)」を組み合わせた言葉です。
多様性を受け入れる「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の概念に一歩踏み込んで、それぞれのニーズに合った公平性のあるサポートを行うという考え方です。
DE&Iは、全員が同じスタートラインに立ち、お互いを尊重し合いながら活躍できる環境づくりの基礎となります。
2 ダイバーシティが重要視される背景
ダイバーシティーは世界中で注目されていますが、特に日本では政府が主体となってダイバーシティを推進する動きも見られます。日本でダイバーシティが重要視される背景には、どういったことがあるのでしょうか。
2.1 少子高齢化による労働力不足
近年日本は、少子高齢化によって労働人口が減り続けています。そのため、労働力を補い、正常な社会活動を維持するには多様な人材が必要です。つまり、これまで労働力の中心ではなかった高齢者、外国人、出産後の女性、障がいのある方など、さまざまな背景を持つ人々が活躍できる社会にしなければなりません。
ダイバーシティを取り入れることで多様性のある考え方が加わり、企業や社会がより柔軟で創造的な発展を遂げることが期待されているのです。
2.2 経済のグローバル化
経済のグローバル化が進む中、ビジネスの成功には異なる文化や価値観を持つ人々と協力し合うことが重要です。多様な人材がいることで、グローバルな市場での対応力が向上し、競争力が強化されます。
また、異なる視点は新しいアイデアやイノベーションを生み、企業の成長を支える大きな力となります。こういった観点から、ダイバーシティが重要視され始めています。
2.3 価値観と働き方の多様化
現代の日本において、労働者が求めることは多様化しており、従来のような一律の働き方では多くの人を満足させられません。例えば、最近はリモートワークやフレックスタイムなど柔軟な働き方を求める人が増えています。
また、キャリアを優先したい人がいる一方で、家庭を第一に考えたい人がいるなど、人生に対する考え方も人それぞれです。こうした多様な価値観に対応するため、ダイバーシティが重要視されています。
3 政府が取り組むダイバーシティ
政府もダイバーシティに向けてさまざまな取り組みを行っています。ここでは、経済産業省と厚生労働省が取り組むダイバーシティについて紹介します。
3.1 ダイバーシティ2.0|経済産業省
経済産業省が推進する「ダイバーシティ 2.0」は、「多様な属性の違いを活かし、個々の人材の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目指して、全社的かつ継続的に進めていく経営上の取組」と定義されています。
つまり、企業経営においてダイバーシティーを促進しようという政府の取り組みです。「ダイバーシティ 2.0」では、実際のステップや必要なアクションが細かく設定されています。
3.2 働き方改革の一環であるダイバーシティ|厚生労働省
厚生労働省では、働き方改革の一環としてダイバーシティーに取り組んでいます。例えば、女性が活躍しやすい環境の整備を目指す「女性活躍推進法」や、子育てと仕事の両立に向けた「改正育児・介護休業法」の施行が挙げられます。
そのほかにも、若者や高齢者の雇用を推進するための制度を設けたり相談窓口を設置したりして、働き方という観点からダイバーシティーを推進しています。
【出典】厚生労働省「職場におけるダイバーシティ推進事業について」
4 ビジネスにおけるダイバーシティの例
ダイバーシティの概要がわかったところで、具体的なダイバーシティの例を見ていきましょう。ビジネスでは主に以下のような例が挙げられます。
4.1 性別・年齢・国籍による区別の撤廃
採用や昇進の際、性別・年齢・国籍で判断するのではなく、その人自身のスキルや経験、成果に基づいて公平に評価することはダイバーシティの一例です。
また、外国人社員向けに多言語対応のマニュアルを準備したり、女性や高齢者が働きやすい環境を整備したりすることも、区別の撤廃という観点から重要な施策と言えます。
4.2 障がいのある方々の雇用
障がいのある方々が働きやすい職場を提供するのも、ダイバーシティの取り組みです。例えば、車椅子利用者のためのバリアフリー化、視覚・聴覚障がい者向けの音声ガイドや手話通訳の導入などが挙げられます。
さらに、特別支援を行う専門部署を設置して、個々のニーズに応じたサポートを行う企業も増えています。
4.3 柔軟な働き方への対応
フレックス制度やリモートワークなど、さまざまな働き方に対応した制度を整備することもダイバーシティの具体例です。これにより、多様な人材が平等に活躍できる環境が整います。
また、短時間勤務に対応することで、育児や介護といった家庭の事情を抱えた社員でも仕事を続けやすくなります。こうした柔軟な働き方の導入は、従業員のモチベーション向上や生産性の向上につながります。
5 ダイバーシティ推進のメリット
ダイバーシティを推進することで、さまざまなメリットが考えられます。その中でも、ここでは競争力の向上、イノベーションの促進、人材不足の解消という3つのメリットについて解説します。
5.1 企業の競争力が向上する
多様な人材が集まることでさまざまなアイデアが生まれ、より革新的な商品やサービスを提供できるようになります。実際に、異なる国籍やバックグラウンドを持つメンバーで開発を行い、世界中の顧客に支持されるアプリを開発したという事例があります。
国籍や性別、年齢に関係なくさまざまな意見が尊重されることで、チームの士気が高まり競争力も向上します。このように、ダイバーシティは企業の成長に大きく寄与するのです。
5.2 イノベーションが促進される
似たようなバックグラウンドを持つ社員だけでは、なかなか新しい発想が生まれません。そのままの状態が続くと、企業の改革が進まず時代から取り残されてしまう恐れもあります。
しかし、ダイバーシティを推進して異なる背景や視点を持つ人々が集まれば、これまで思いつかなかったような斬新なアイデアが生まれるかもしれません。従来の枠にとらわれない新しい考え方や、革新的なサービスを生み出すには、ダイバーシティーの推進が必要不可欠です。
5.3 人材不足の解消につながる
少子高齢化が進む日本では、これまで労働力の中心であった人材を確保するのは難しくなります。中には、人材不足によって休業や倒産に追い込まれる企業もあります。
そのため、年齢や性別、国籍を問わず多様な人材を受け入れることが必要です。また、経験豊富な高齢者や特別なスキルを持った障がいのある方々を雇用することで、企業の成長につながる可能性もあります。
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6 ダイバーシティ推進のデメリット
多くのメリットがある一方で、ダイバーシティーの推進にはいくつかのデメリットも存在します。ここでは、主なデメリットを3つ紹介します。
6.1 価値観の違いによる衝突が起こる可能性がある
異なる文化や背景を持つ人々が集まると、考え方に違いが生じることがあります。「批判に慣れている人と苦手な人」「丁寧に進めたい人と効率的に進めたい人」「経験を重視したい人と新しい方法を取り入れたい人」といったように、対立が生まれやすい人が同じ仕事をする場面も出てきます。
もし、意見の食い違いから衝突が続けば、チームの雰囲気は悪化し業務の進行にも影響を及ぼしかねません。そのため、ダイバーシティを推進する際は相互理解を深める努力が必要です。
6.2 環境整備に向けたコストが必要になることがある
多様な人材が働きやすい職場を作るためには、さまざまな設備や制度を整える必要があります。例えば、バリアフリー化に向けたスロープやエレベーターの設置、外国人社員のための言語研修や教育体制の強化などが挙げられます。
さらに、ダイバーシティ研修を行うための講師を招いたり、社員の意識を高めるためのプログラムを実施したりすることも、企業にとっては負担となります。このように、ダイバーシティ推進には初期投資が必要ですが、長期的にはメリットが大きくなると期待されています。
6.3 偏見や不公平感が生まれる恐れがある
多様な人材が集まることで、「あの歳でこの仕事は無理だろう」「外国人だけが優遇されている」など、偏見や不公平感が生まれる恐れがあります。このような感情が広がると、チームの協力関係が損なわれ、業務効率が悪化してしまいます。
ダイバーシティを推進する際は、相互理解を促進し、偏見や不公平感を減らす努力が必要です。
7 ダイバーシティ推進を成功させるためのポイント
上記のようなデメリットが考えられる中、ダイバーシティー推進を成功させるにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは成功に向けた主なポイントを紹介します。
7.1 経営陣がリーダーシップを取る
ダイバーシティ推進を成功させるためには、経営層が積極的にリーダーシップを発揮し、企業全体にダイバーシティの重要性を示すことが必要です。トップがその価値を理解し、全社員にメッセージを伝えることで、組織全体が一体となって取り組めます。
7.2 公平な評価制度と環境を構築する
全ての従業員が公平に評価され、平等な機会を持てる環境を整えることが重要です。特定の人だけに利益が偏ったり、一部の人だけが不利になったりすれば、従業員同士で衝突が起こり業績は低下してしまうでしょう。
そのため、透明性のある評価基準を導入したうえで社員教育や啓発活動を行い、ダイバーシティに対する理解を深める必要があります。
7.3 継続的なモニタリングと改善を行う
ダイバーシティを推進していくにあたっては、継続的なモニタリングと改善が必要です。定期的に成果を評価し、問題点や改善点を洗い出して対策を講じなければなりません。
不満や働きにくさを感じている社員がいないかどうか、アンケートや聞き取り調査を行って、フィードバックを基に方針を修正します。ダイバーシティ推進の成功には、丁寧なサポートと迅速な改善が重要です。
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8 まとめ
ダイバーシティとは、さまざまな背景や特性を持つ人々が共に働く環境を指します。ビジネスにおいては、性別、年齢、国籍、障がい、価値観などの多様性を尊重し、全ての人が活躍できる環境が求められます。
ダイバーシティの推進は、企業の競争力やイノベーションを向上させ、人材不足の解消にもつながります。ただし、偏見や不公平感が生じるリスクもあるため、満足度の高いダイバーシティを実現するには、社員の相互理解やコミュニケーションの促進が重要です。
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