一時は回復の兆しが出ていた日本経済ですが、新型コロナウイルスの変異株・オミクロン株の感染拡大の影響で、再び暗雲が立ち込めてきました。帝国データバンクの調査によると、2022年1月の景気DIは5カ月ぶりに悪化しました。今回は、同調査をもとに、今後の景気動向についてみていきたいと思います。
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同調査は、帝国データバンクが全国象2万4,072社を対象に、2022年1月の国内景気動向を調査・集計し、景気DIとして発表されました。
1.1月の景気DIは前月比2.7ポイント減、5カ月ぶりに悪化
これによると、2022年1月の景気DIは前月比2.7ポイント減の41.2となり、5カ月ぶりに悪化しました。
1月の国内景気は、新型コロナウイルスの新規感染者が一日当たり8万人台へ急増したことに加えて、大雪の影響も下押し要因となりました。
全国34都道府県がまん延防止等重点措置の対象地域となったことで、外出の自粛や営業時間の短縮など、企業活動が再び抑制。さらに、自動車工場の減産や稼働停止に加えて、原材料価格や原油など燃料価格の上昇は、企業の収益環境を下押しする要因となりました。
一方、一部の企業ではEコマースや宅配関連がプラス材料のほか、自宅内消費も引き続き好調でした。
(【画像出典】帝国データバンクプレスリリース)
2.今後の見通しは、「一時的な落ち込み後に緩やかな回復」
今後の国内景気は、「オミクロン株など新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の抑制と緩和時期に大きく左右される」(帝国データバンク)。
また、原油など原材料価格の高騰・高止まりによるガソリンや軽油・重油など燃料価格の上昇、地政学的な不確定要素は下振れリスクとなっています。
さらに、「賃上げの動向のほか、人手不足の高まりや人材採用など、労働力確保に向けた動きも注視を要する」(同)。
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他方、リベンジ消費や旺盛な自宅内消費の継続、5G関連の環境整備、半導体需要の増加などはプラス材料となるほか、新規感染者数の減少とともに対面型サービス需要の拡大や自動車などの挽回生産も見込まれるのも好材料となっています。
帝国データバンクでは、「今後は、一時的な落ち込み後に緩やかな回復が見込まれるものの、下振れリスクの動向に注視する必要がある」としています。
(【画像出典】帝国データバンクプレスリリース)
3.オミクロン株の感染拡大が多くの業種でマイナス要因に
オミクロン株の感染が拡大し、全10業界中9業界、51業種中47業種で景気DIは悪化しました。
また、原材料価格の上昇が継続するなか、仕入単価DIは30業種で上昇。
販売単価DIは『製造』『卸売』『小売』など3業界6業種で過去最高の水準も、価格転嫁には厳しさがみられるといいます。
『サービス』
景気DIは42.8で前月比3.3ポイント減、5カ月ぶりに悪化しました。再び人流抑制策が一部地域で発出されるなか、特に「旅館・ホテル」(同16.6ポイント減)は2020年12月(同16.9ポイント減)に次ぐ急激な悪化。「近隣県でまん延防止等重点措置が発出され、一気にキャンセルが増加。新規予約がなくなった」といった声もあがったといいます。
また、時短営業による影響がある「飲食店」(同10.5ポイント減)や、ゴルフ場やスポーツ施設が悪化した「娯楽サービス」(同5.1ポイント減)など、個人向けサービスの悪化幅が大きくなっています。
『製造』
景気DIは42.5で同2.6ポイント減、4カ月ぶりに悪化しました。2020年4月以来、1年9カ月ぶりに全12業種が悪化しました。
「飲食料品・飼料製造」(同5.4ポイント減)は、外食需要の落ち込みや、原材料価格の上昇がマイナス要因となりました。
また、「輸送用機械・器具製造」(同4.0ポイント減)は、オミクロン株の感染拡大による大手自動車メーカーの減産、工場の稼働停止が響いたといいます。
仕入単価DIは72.1(同横ばい)と高水準で推移する一方、販売単価DIは56.1(同0.2ポイント増)と仕入単価DIと比べその水準は低く、「原材料価格の値上げを完全には売価に転嫁できない」といった声もみられます。
『小売』
景気DIは34.4で同3.3ポイント減、4カ月ぶりに悪化しました。
『小売』の景気DIは、10業界で最も低い水準が続いています。一部の地域で再びまん延防止等重点措置が発出され、アパレルなど「繊維・繊維製品・服飾品小売」(同8.2ポイント減)や「家具類小売」(同7.3ポイント減)が大幅に悪化しました。
また、ガソリンスタンドや燃料小売が含まれる「専門商品小売」(同2.7ポイント減)は、1リットルあたりのレギュラーガソリン価格が13年ぶりに170円台に上昇したなかで、仕入単価DIが74.4(同4.8ポイント増)、販売単価DIが67.0(同3.0ポイント増)と、ともに大きく上昇しました。
一方、Eコマース事業を展開する企業からは、「通販分野に関しては継続して拡大傾向にある」など前向きな意見もみられそうです。
『運輸・倉庫』
景気DIは37.7で同2.6ポイント減、4カ月ぶりに悪化しました。
ガソリンなど燃料価格の上昇がみられるなか、貨物運送の景況感が悪化。「軽油単価の高騰、アドブルーの不足および値上げ、新車車両の納車遅れといった要因で業績が悪化している」など、燃料価格の上昇だけでなく、アドブルーの不足や納車遅れもマイナス要因となっています。
また、Go Toトラベルの再開が不透明となるなか、旅行会社や観光バスなども大きく落ち込みました。海上コンテナの不足も継続し、輸出入の荷動きの停滞も依然として継続しました。
4.5カ月ぶりに全規模が悪化、「中小企業」で大きく落ち込み
「大企業」「中小企業」「小規模企業」すべてが5カ月ぶりにそろって悪化しました。
なかでも「中小企業」の下落が目立ったほか、新規感染者数の急増による影響が規模を問わず表れる結果となりました。
以下、規模別に詳細を見ていきます。
(【画像出典】帝国データバンクプレスリリース)
「大企業」
景気DIは44.0で前月比1.9ポイント減、5カ月ぶりに悪化しました。
まん延防止等重点措置が出されるなか、旅行や宿泊のキャンセルが相次ぎました。
「広告関連」はテレビCMが活況だった一方、イベント縮小などの影響を受け10.5ポイントの大幅に下落しました。
「中小企業」
景気DIは40.6で同2.9ポイント減、5カ月ぶりに悪化しました。
感染者数の急増にともなう宿泊予約の取り消しに加え、県民割を使った新規予約の停止など、宿泊業の景況感が大幅に低下しました。
また『金融』や『不動産』も落ち込むなど、10業界中9業界が悪化となりました。
「小規模企業」
景気DIは39.1で同3.0ポイント減、5カ月ぶりに悪化しました。
新型コロナ感染者数の急増で「旅館・ホテル」が10台、「飲食店」が20台へと下落しましたた。
婦人・子供服を中心にアパレル関連が低調に推移するなど、10業界中9業界が悪化となりました。
5.まとめ
新型コロナウイルス、つくづく罪作りな存在です。
企業に対する影響を通じ、雇用や賃金といった面から、多くの人の精神をもむしばんでいます。
経済とコロナ対策を同時並行でどう回していくのか、官民一体となってこの国難を乗り切る方法を見つけることが、今最も必要とされているといえるのではないでしょうか。
(【記事出典】帝国データバンクプレスリリース「オミクロン株の影響で国内景気は 5 カ月ぶりに悪化 ― TDB景気動向調査:2022年1月」)