Trivia

ワークライフバランスとは?意味やメリット、取り組み方について

一人ひとりの事情に合わせて仕事とプライベートを両立させた働き方を実現するワークライフバランスへの取り組みは、労働力が減少している現代の企業において必須で対応すべき課題となってきています。優秀な人材の確保や企業のアピールポイント創出の観点からも、決して無視することのできないものです。

そこで今回は、ワークライフバランスの基本的な考え方やメリット、具体的な取り組みについて解説します。

1.ワークライフバランスとはどういう意味?

内閣府の男女共同参画局が提唱している「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」の中では、ワークライフバランスについて次のように述べられています。

"誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。"

つまり、「仕事にやりがいを見出しながら社会の一員として働く時間」と、「子育てや介護、自身を高めるために必要なプライベートな時間」のどちらも充実した生き方を実現することが、「ワークライフバランス」の意味であり目的となります。

1.1.ワークライフインテグレーションとの違い

ワークライフインテグレーションは、「仕事とプライベートを切り分けた上でそれぞれをバランスよく充実させる」という考え方を持つワークライフバランスとは異なり、「仕事とプライベートに境界線を設けず、総合的な充実感を求める」という考え方を背景としています。

ワークライフバランスにおいては、仕事とプライベートのどちらかに比重が偏らないように両者の均衡を図るというイメージが強い傾向にありますが、ワークライフインテグレーションでは仕事もプライベートも人生の構成要素の一つとみなします。
仕事を充実させればプライベートでも満足度が高まり、プライベートを充実させれば仕事にもやりがいを見出せるという相互作用を期待する点で、ワークライフバランスとは異なります。

1.2.働き方改革との関係性

日々の生活が仕事に偏りすぎてプライベートを犠牲にせざるを得ない状況では、ライフワークバランスを達成できているとは言えません。個人の能力に合わせた適量の仕事を効率よく行うためにも働き方改革は重要であり、ライフワークバランスと大きく関係するものです。

また、子育てや介護のために会社のオフィスで働くことが難しい方にとっては、テレワークなどによって自宅や社外の拠点から働ける環境が必要不可欠です。
企業が積極的に働き方改革を推進し、従業員にさまざまな働き方を提供して初めて、ライフワークバランスの実現に大きく寄与する企業であると言うことができます。

2.ワークライフバランスが必要とされた背景

ワークライフバランスが必要とされた背景には、深刻な労働力不足に対応しなければならない企業の経営事情が大きく関係しています。

日本では少子高齢化が急激に進行しています。2007年ごろから団塊の世代が一斉に退職し労働力が不足しつつある事情から、従業員一人ひとりの負担が重くなっている企業が増えています。
子育てや介護などで仕事へのモチベーションが低下したり、環境の変化でオフィスに通えなくなったりと、やむを得ず離職せざるを得ない従業員がこれ以上増えれば、残された社員の負担はより大きくなります。

そこで、労働時間や働ける場所に制約がある従業員も引き続き会社で活躍できるような環境を提供し、人手不足に歯止めをかける目的で提唱されたのが「ワークライフバランス」です。

3.ワークライフバランスの重要性

充実した仕事とプライベートの両立により豊かな暮らしがもたらされますが、現実には「非正規雇用などで安定した暮らしを維持できない」「仕事に追われて健康に支障をきたしている」「子育てや介護と仕事の両立が難しい」などの環境下に置かれている人も少なくありません。結婚している世帯でも共働きが当たり前になり、家族と過ごす時間が充分に取れないなどの問題を抱えている人は以前と比べると増えてきています。

仕事が原因でプライベートにかけられる時間が少なくなったり、プライベートが原因で希望の働き方を実現できず暮らしを支えられるだけの収入を維持できなかったりする人を減らすためには、ワークライフバランスの取り組みを推し進めて仕事とプライベートをバランスよく両立できる環境を整えることが欠かせません。

4.ワークライフバランスのメリットとは

ワークライフバランスの実現によって企業側と社員側の双方にもたらされるメリットを紹介します。

4.1.企業側

まずは、企業側からのメリットについて紹介します。

4.1.1.作業効率・生産性の向上

仕事とプライベートをバランスよく充実させるには、与えられた仕事を効率よくこなさなければなりません。業務時間内にすべてのタスクを処理するために業務の棚卸を行うことで、作業効率や生産性の向上を図れます。

例えば、対面で長時間開催していたミーティングの時間をあらかじめ限定する、不必要な訪問は避ける、定型的な業務は外部にアウトソーシングするなどの方法が有効です。

4.1.2.優秀な人材の確保

「オフィスで働けない」「フルタイムの勤務が困難」などの事情を抱えている従業員に働き方の選択肢を提供することで、従来であれば退職するしかなかった優秀な人材を引き続き確保できます。

また、採用活動においてもワークライフバランスを重視している求職者が増えているため、企業側のアピールポイントとしても役立ちます。

4.1.3.企業イメージのアップ

ワークライフバランスを重視することにより、「従業員に優しい企業」というイメージが定着し、企業イメージのアップにつながります。取引先や顧客はもちろん、自社で働く従業員の満足度の向上にも寄与するでしょう。

4.2.社員側

次に、社員側から見たメリットにはどういったものがあるのでしょうか。

4.2.1.仕事へのモチベーション向上

仕事とプライベートの双方が充実することにより、モチベーションの向上が期待できます。仕事に追われて家族と過ごす時間や趣味に費やす時間を確保できないと、プライベートへの満足度が低下し、仕事に対するモチベーションも下がりやすくなりますが、プライベートの時間をしっかり確保してリフレッシュできれば、仕事への新たな意欲も湧いてきます。

4.2.2.ライフステージに合わせた働き方

親の介護が必要になったり、女性の場合、出産して子育てをする立場になったりなど、どのような働き方が適しているかはライフステージによって変化します。

ライフワークバランスを実現できれば、子どもが大きくなるまでは時短勤務をする、介護のために自宅からテレワークを活用して業務を行うなど、ライフステージに合わせた働き方が可能になります。

4.2.3.仕事とプライベートの両立

仕事に追われてプライベートを犠牲にしなければならない状況がなくなり、さまざまな生き方ができるようになります。どちらかを諦める必要はなく、仕事をしながら夢を追い続けることも可能になるかもしれません。

5.ワークライフバランスに取り組むために

ワークライフバランスに取り組む上で重要な5つのポイントについて解説します。この他にもテレワーク制度の導入や相互フォロー体制の強化など、企業ごとにその特性を活かしたさまざまな取り組みが行われています。

5.1.業務や体制の見直し

現在の業務が本当に必要なのかどうか、体制は適切であるかなど、抜本的な見直しによって大きく業務を効率化できるケースはよくあります。当たり前のように取り組んでいた業務が実は大幅な効率の低下を招いている例は少なくないため、すべての業務を洗い出して棚卸しを実施することが大切です。

5.2.残業時間の削減

残業時間が増加するとプライベートの時間が減少します。積極的に削減に努めましょう。例えば業務のブラックボックス化を避けて一つの業務を複数人が対応できるようにするだけでも、業務量が急激に増加した際に別の従業員によるフォローが可能となり、状況が改善します。また、休日出勤をした場合に代休を取ってもらうなどの取り組みも、しっかり行われているか見直してみましょう。

5.3.休暇取得率の改善・促進

休暇が取りにくい環境を改善して休暇取得率をアップさせる取り組みは重要です。立場が上の従業員が率先して休暇を取得するように心がけると、部下が休みやすい環境を生み出しやすくなります。

5.4.フレックスタイムの導入

出社時間や退社時間を一定範囲内で自由に設定できる「フレックスタイム」を導入するのも有効な手段です。子どもを保育園に送り届けてから出社したい、早めに退社してプライベートの時間を長く取りたいなど、従業員によって理想の時間の使い方は異なるため、柔軟な勤務時間の設定が重要となります。

5.5.福利厚生の充実

自己研鑽のための資格取得に奨励金を出したり、宿泊施設の利用に補助金を用意したりするなど、福利厚生を充実させる取り組みも重要です。従業員が会社に大切にされていると感じられる環境を用意することでモチベーションを向上させることができます。

6.ワークライフバランスの現状と今後について

現状において各企業におけるワークライフバランスの取り組みは成熟しきっているとはいえませんが、徐々に浸透しつつあることは間違いありません。休暇の取得状況で見ると、厚生労働省が実施した「平成31年就労条件総合調査の概況」によれば、何らかの形で週休2日制を採用している企業は全体の82.1%にのぼります。ただし完全週休2日制は44.3%[5] と半数以下であり、連続した二日間の休暇を取れている人はそれほど多いとは言えないのが現状です。

一方、夏季休暇や病気休暇などの特別休暇制度を採用している企業は59%あり、従業員のリフレッシュ目的や体調に配慮した休暇を与える土壌は整ってきているといえるでしょう。

しかし、内閣府が実施したワークライフバランスに関する調査では、ワークライフバランスについての希望が勤務先企業と一致していないと考える人も50%前後と多く、[6] 「不本意ながらワークを優先している」と答えた人の割合は8~9割にものぼっています。企業と従業員の意識をいかに近づけ双方にメリットのある制度を構築していくかが、今後多くの企業にとっての課題となりそうです。

7.まとめ

子育てや介護などプライベートな事情がありながらもできる限り仕事の時間を確保したいと考える方は増えています。ワークライフバランスの実現に向けた取り組みは、そうした前向きな意識を持った優秀な人材にも、人材不足に悩む企業にとってもメリットが大きい取り組みです。

ワークライフバランスを実現するためには、業務や体制の抜本的な見直しや休暇取得率の促進など、複数の観点から社内制度を改革することが必要です。現状ではまだ多くの企業で実現の途上にありますが、将来的にはますますその体制づくりが重要視されるでしょうから、企業には早いうちからその実現に取り組むことが望まれます。

▶︎ プロフィール

田村彩乃

ITコンサルタントとして7年間システム提案に携わった後、フリーライターとして独立。IT、マーケティングに関するコラムを中心として、人材、ECなどにまつわる記事をWebをはじめとした多くのメディアで執筆。趣味は旅に出ること。

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