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将来の起業を目指すために、管理職期間中に意識しておくべき3つのポイント

管理職を続けていて、ふと思うのが将来のこと。いつか「起業をしたい」と思う人もいるでしょう。
それには、いったいどんな準備が必要になるのでしょうか?
企業の管理職を経験し、現在編集制作会社の社長を勤めるSさん。起業に必要なことは、ズバリ「ヒト・モノ・カネ」だと言います。Sさんが実際に経験してきた「ヒト・モノ・カネ」の動かし方から具体的な起業のポイントを探ります。

ポイント1.ヒト
自分で管理できないことをどんな形で任せるかを考える

41才で大手新聞社を一旦退職し、その後2年間はその新聞社の仕事をフリーランスという形でこなしていたSさん。そもそもの起業のきっかけは、2人の子どもを育てながら会社員として働くには厳しい状況だったこと、まるまる一冊の本の編集を業務委託できないか相談され、その仕事を受けるにはフリーランスではなく、企業でないと受けられなかったこと、など必要に迫られての起業でした。とはいえ、フリーランスとして働いていた間に起業をすることは何となく考え始めていたというSさん。いざ起業することになると、それまでに在籍していた大手電機会社、マスコミ2社で培った人脈が大いに役立ちました。

大卒後、電気系の大手企業の広報部へ就職したSさん。ここでは女性総合職第一期生だったことから、若くして新人のOJTなどを担当しました。今とは畑違いの仕事でしたが、自らプレスリリースを手がけるなど「物を書く」ことの経験を重ね、27歳でもともと興味のあった新聞社へ転職。この新聞社で編集、記者としてのキャリアを重ねて31歳でマネー系の雑誌の副編集長に就任。10人以上の部下を率いる「管理職」の経験をしました。また、勉強会にも積極的に参加して、人脈づくりにも励みました。その後、社内結婚し、Sさんが別のマスコミ関連の会社に転職します。この会社ではベビー雑誌の副編集長になり、部下を採用したり、査定をすることを経験しました。

起業後、企画や営業など自分ができることと、経理など自分の不得意分野は一人ではできないことがあると判断。会社員時代の人脈を生かし、信頼できる女性を社員として採用しました。ただ、人を1人採用するということは当然給料も発生します。ヒトを採用する上でSさんが痛感したことは「ヒトとカネは常にセットで考えなければいけないこと。自分ではできない分野を他人にお願いするなら、社員でもバイトでもお給料を支払えるだけの運転資金は必ず必要です。誰に何を、どんな形でフォローしてもらうのかあらかじめしっかり考えておくことが大切です」。
起業して15年経過したSさん。会社員時代を振り返ってみると、「人とのつながりを大切にしてきたことも今の自分の武器にもなっている」と語ります。退職後もかつての同僚や部下たちともコミュニケーションをまめにとることも欠かしません。その人のライフステージやスキル、得意分野にあわせて、アドバイスや協力、または仕事の依頼などをすることも。「あの分野ならあの人など、人脈の引き出しは多いほど、自分の仕事の助けにもなります」

ポイント2.モノ 
モノ=仕事。最低でも3社のクライアントを持つ

毎月一定額の収入を得るため、Sさんは起業の際に、最低3つのクライアントの目処を立てました。これが「ヒト、モノ、カネ」のなかのモノ(仕事)にあたります。「毎月一定額が入れば大丈夫...と思うかもしれませんが、ある日突然契約が切られたり、出版業界でいえば廃刊になったりなど、発注がなくなることを想定しておかなければなりません。そのために、常にクライアント3社を確保しておきます。いわば仕事の"サブスク化"ですね」。例えば30万円支払ってくれるクライアント1社より、10万円支払ってくれるクライアントが3社あったとしたら、絶対後者をとるべき。万が一、1社と契約がなくなっても20万円の収入は確保でき、リスク回避になるからです。
この安定したクライアントを得るために、Sさんの会社が常に実践していることは、企業の業務委託を受けること。「会社で人を採用する代わりに、私を業務委託として採用しないかアプローチします。クライアントの会社に私の席をもらって、会議などに出席し、ここで立案、整理をします。会社にとっては、人を採用するまでのお金がかからず、こちらにとっては安定した収入が得られるというメリットがあるからです」。
また、新聞社時代にマネー系雑誌の編集、ファイナンシャルプランナーの資格も取得していたので「マネー系の編集なら絶対できる」という強みも持てました。
「会社員時代に自分の強みを作っておくことは必要です。興味があることや得意分野は徹底的に磨いておくこと。それがモノ(仕事)につながるからです」

ポイント3.カネ
無収入でも最初の数か月を運営できる運転資金を持つ

起業にあたり、新聞社の管理職時代にコスト、人件費の管理をしていたことも役立ちました。「フリーランスと起業では天と地の差があります。起業に最も必要なことは"お金の計算ができること"と言っても過言ではないと思います」とSさん。起業早々、事務所は自宅にしていたので家賃はかからなかったものの、税理士に約款の作成を依頼したり、法務局へ登記したりなど、諸々の書類作成で約30万円かかりました。また、編集業の場合、本を制作して数か月後でないと入金がないため、数か月の給料を支払えるだけの資金も必要でした。「私は業務委託である程度の収入の見込みがあったのですが、普通は1000万円くらい資金がないと回せないと思います」。
その後、利便性を考え事務所を外で借りることになりますが、Sさんの会社は必ずシェアオフィスを使っています。通常の賃貸オフィスでは、保証金や備品購入金が必要になり、掃除も自分達でしなければなりません。しかし、シェアオフィスの場合、保証金は不要で備品もあらかじめそろっているうえ、業者が掃除に入ってくれるのもメリットだとか。以前、たまたま借りていたシェアオフィスが撤退したため、一時期賃貸オフィスを借りたところ、同じ場所でも一か月で15万円の差が生じました。さらにコロナ禍でリモートワークという新しい働き方が定着しつつある今、シェアオフィスという選択は、今後起業を考える人にとってもメリットが大きいのではと思われます。

まとめ

Sさんは起業にあたり「メンター」がいなかった、と言いますが、話を紐解いていくと、やはり要所要所でヘルプをしてくれる「人」の存在が欠かせなかったようです。起業というと資金繰りにばかり考えが行ってしまいがちですが、同時に大切なのは人。幅広い人脈を持つことと、その人脈をどう生かしていくかが、起業のポイントと言えるかもしれません。管理職期間中にはその点も意識して経験を積み重ねていくと良いでしょう。

▶︎ プロフィール

中島博子(なかじまひろこ)
料理系出版社、PR会社勤務を経て、フリーランスの編集・ライターに。ベビー、子ども系雑誌、不妊治療系雑誌、WEBの編集・執筆のほか、企業のWEBサイト制作にも携わる。

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