部下が退職を願い出たときに注意すること、退職の予兆とは?
管理職として仕事をしていれば、ふだんの業務の管理はもとより、部下のマネジメントも重要な業務のひとつ。そんな部下が突然退職を願い出る...ということも当然想定しておかなければなりません。もし、部下から退職の話を持ち出されたら? 早めに予兆を察知できるポイント、実際に退職を相談されたときの管理職としての対応を、現役女性管理職の体験も交えながらまとめます。
メンタルの不調や見た目の変化で察知できることも
までに比べて元気がない、明らかに体調が悪そう...それとは逆に、今まで大人しかった部下が急に饒舌になったり、ハイテンションになったり。体調やメンタルの変化は比較的察知しやすいものです。また「以前退職をもちかけられた部下が、辞めると言い出す前にあきらかに私を避けているなと感じたことがあります」(情報サービス系管理職Hさん)と、いつもと様子が変わることもあるようです。
それとは別に、いつもはカジュアルだった部下が、急にキレイめな服装で現れることも。これは転職に向けて動き出している可能性もあります。
部下の様子がいつもとは違うことに気づいたら、まずはそっとなるべく一人でいるときに「最近元気なさそうだけど、大丈夫?」「何か変わったことはない?」など言葉をかけてみましょう。また、声がけだけでなく、その部下と仲良しの社員に「最近〇〇さん、元気かな?と探りを入れることもあります」(情報サービス系管理職Hさん)。何気ない会話から、それの原因が仕事だったとわかれば、早期に問題が解決する可能性もあります。
仕事のモチベーションの変化にも注意しよう
「今考えてみたら、過去に辞めてしまった部下は、退職を言い出す前、定刻ギリギリに出社することが増えていました」(メーカー管理職Mさん)、「日常や会議での会話量が少なくなっていました。また、私が出した査定へのフィードバックに対して次への意欲を見せなくなりました」(情報サービス系管理職Hさん)「会議で企画案が上がってこないことが多くなりました」(IT・通信系管理職M.Iさん)など、仕事へのモチベーションが明らかに下がっているのも予兆のひとつのよう。
それはもしかしたら「どうせ辞めるつもりだから余計なことを発言するのはやめよう」「変に期待されても困る」という気持ちの裏返しかもしれません。1人の部下のモチベーションの低下は、一緒に仕事をするほかの部下への影響も与えかねません。変化を察知したらモチベーション低下の理由をさりげなく聞いてみましょう。ここにも未然に解決できる問題が隠されているかもしれません。
実際に退職を願い出されたら? 管理職としての対応は?
それでは、実際に退職を申しだされたら管理職としてどう対応したらよいのでしょうか? それには、まず「時間と取ってしっかり話を聞くこと」が大事です。辞める方にとっても退職を持ち出すのは、覚悟を決めてのこと。話も聞かずに引き留めたり、退職願を受理してしまっては、「話すら聞いてくれない」と不信感を持たれかねません。なぜ退職を決断するに至ったかの経緯をしっかり聞くことです。
ある日、入社1年目の部下に「辞めたい...」と申しだされたIT・通信系管理職M.Iさん。辞めたいと考えるに至った原因が部下のチームの人間関係にあることがわかりました。そこで、まずは自分が若い頃も同じような経験をしたこと、つらい経験もあったけれど、それ以上に仕事をやり切ったときの達成感の素晴らしさ、仕事の醍醐味を話しました。そして、仲間との関係は配置転換をはかることで解決するだろうと考え、早急に担当を変更したところ、その部下は退職を留まりました。「不安材料を取り除くことで、彼女は再び仕事への意欲を見せてくれました」とM.Iさん。
この部下とは別に、すでに転職を決めていた部下もいました。「今の仕事とは全く別の業界で、それは彼女の次なるステップだとわかったのでこれは引き留めず、気持ちよく送り出してあげることを心がけました」。
体調が理由で退職を申し出るケースも少なくないでしょう。「体調不良が理由であれば、その部下と原因によっては対応を考えます」(メーカー管理職Mさん)。
退職が決まったら...退職する部下だけでなく、その他の部下のフォローも
部下の退職が決まった後は、その後のフォローも大切です。「ここまで育ててあげたのに...」「今の実力じゃ転職は無理じゃない?」などの発言は控えましょう。転職の場合は同じ業界内のこともままあり、あなたの悪評につながりかねないので、気持ちよく送り出してあげたいものです。また、その部下が担当していた仕事の引き継ぎをスムーズにすること、他の社員へ負担がかからないように気を配ることも必要です。「特に女性の社員は心細くなったり、動揺することが多いので、退社を伝えるタイミングや伝え方に細心の注意を払っています。また、社内、クライアントへ対する影響を最小限に抑える工夫もしています」(メーカー管理職Mさん)。書類上の手続きは粛々と済ませて、送り出す部下、残る部下にしこりが残らないよう心掛けることが必要です。
まとめ
大切な社員の流出は時には管理職の責任も問われかねませんし、社内の仕事に支障をきたすことも。最近では「1on1」など気軽に上司を話す機会を導入している会社も増えてきているようですが、そうでなくても日ごろからのコミュニケーションを心がけ、部下の様子をしっかり観察しておきましょう。
▶︎ プロフィール
中島博子(なかじま ひろこ)
料理系出版社、PR会社勤務を経て、フリーランスの編集・ライターに。ベビー、子ども系雑誌、不妊治療系雑誌、WEBの編集・執筆のほか、企業のWEBサイト制作にも携わる。