Management

部下も自分も成長する「上手な仕事の任せ方」

「部下に仕事を任せる難しさ」は、多くの管理職ビギナーがぶつかる悩みといっても過言でありません。"自分がやった方が早い"とつい手を動かしたり、口を出しすぎてしまったり、思うように動いてくれない部下にヤキモキしたり――。そんなジレンマを解消し、部下も自分も成長させる仕事の任せ方を紹介します。

管理職に必要なのは、「仕事を手放す勇気」と「任せるスキル」

 管理職になると、ひとりのプレーヤーからマネージャーあるいはプレイングマネージャーへと役割が変わります。自分の仕事に集中していればよかったそれまでと違い、部下を育て、チームで目標を達成するという新たなミッションに向き合うことになり、ビジネスパーソンとして大きく成長する時期だといえます。

 しかし、そうした役割を自覚していても、うまく切り替えができずに戸惑う人は、決して少なくありません。なかでも、管理職になりたての人にとって大きな課題といえるのが「部下への仕事の任せ方」ではないでしょうか。"自分でやった方が早い""思うように部下が動いてもらえない"――そんなもどかしさから、つい手を動かし、口を出し過ぎてしまう。特に、これまでプレーヤーとして目立った成果を上げてきた人に、こうした傾向が強いようです。新たな責務に慣れない業務。自分のことだけで手いっぱいで、なかなか部下のマネジメントまで手が回らない...そんな嘆きも聞こえてきますが、だからこそ早い段階から"仕事を任せるスキル"を身につけておくことが大切です。

 そもそも「自分でやった方が早い」が通用するのは、部下の人数が少ない間だけ。そのやり方で短期的にはうまくいったとしても、いずれ立ち行かなくなることは明らかです。任される仕事の規模が大きくなるほど、チーム力がモノをいいます。部下に経験を積ませてスキルを伸ばし、強いチームを作ることに力を注ぐことで、本来やるべき仕事に集中することができ、次のステップへと進みやすくなります。

 必要なのは、「仕事を手放す勇気」と「任せるスキル」。まずは、それを心にとどめておきましょう。

「伝えた=共有できた」という思い込みは捨てる

  "きちんと指示したつもりなのに、思うように動いてもらえない"――その原因は、上司であるあなたの伝え方に問題があるせいかもしれません。"これくらい言わなくてもわかるよね"と、あ・うんの呼吸に期待して言葉足らずになっていたり、本来伝えるべきポイントが抜け落ちてはいないでしょうか。

 経験値や理解度、考え方などにより、物事の捉え方は人それぞれ違うものです。解釈の違いに気づかないまま発車してしまうと、ムダな作業がどんどん積み上がり、部下の時間や労力を奪うことに。これでは信頼関係など築けません。「伝えた=共有できた」と思い込まず、必要なポイントを過不足なく示すことで、ミスマッチや期待外れを防ぐことが大切です。

踏まえておきたい3つのポイントとは

 では、どんなことに気を付ければ、上手に仕事を任せることができるのか。踏まえておきたいポイントは、大きく3つあります。

 まずは、「期限」を設けること。それにより、仕事に優先順位をつけたり、目標から逆算してすべきことを考えるなど、部下自身がやりかたを工夫することができます。経験の浅い部下には、目標達成までの道筋を一緒に考え、アドバイスしてあげましょう。

 2つ目は、仕事の目的と、求めている完成度を伝えることです。何を求められているかが分からないと、部下は不安に陥ります。例えば、資料作成を依頼する場合、「先日の結果を資料にまとめて提出してほしい」では不十分。誰がどんな目的で使う資料なのか、一番知りたいポイントは何かなどの点をあらかじめ伝えることで、やり直しや手戻りといったムダを防ぐことにつながります。

 3つ目は、適度な声掛けをしながら進捗を確認すること。部下が仕事に取り組みやすくなるように、方向性をきちんと指し示し、かみ砕いて伝えることは、上司としての役目です。こちらの意図がきちんと伝わっているか、イメージが共有できているかを確認し、最後に、「わからない点や困ったことがあれば、気軽に相談してね」と、ポジティブな雰囲気で伝え、安心感を与えましょう。その後は、部下の様子を見ながら寄り添う姿勢で適度に声をかけ、進捗状況を確かめること。仮に、方向性にずれが生じた場合も、早めに軌道修正することができます。

 さらに、部下のモチベーションを上げる方法として、本人が何にやりがいを見出すタイプなのかを知っておくとよいでしょう。どんな時に、どんな言葉で、顔が輝くのか。普段のコミュニケーションのなかでそれを観察しておくことで、本人にあったモチベーションの上げ方を掴むことができるはずです。

部下の仕事を"見える化"してみる

 こうした点を踏まえてもなお、思うようにいかないケースもあります。部下の仕事が遅すぎる、成果物の水準がいつも期待外れ――そんな時には、部下がどこで躓いているのかを把握することが重要です。それが分からないまま、やみくもにはっぱをかけ続けると、かえって部下を追い込むことになり、逆効果です。

 ではどうすればいいか。解決策として、部下の仕事を「見える化」する方法が有効です。具体的な業務の内訳と、かかった時間を記録したものを提出してもらいましょう。それを分析することで、どの作業でつまずいているのか、どこに苦手意識をもっているのかが見えてきます。実はあまり時間をかけなくてもいいような作業に頭を悩ませていたり、仕事の手順自体に問題があるケースも多いものです。

 アドバイスする時には、自分のやり方や成功体験を押し付けたり、一方的に指示するのはNG。部下の話に耳を傾けながら、本人に適した方法を一緒に考えることで不安を取り除き、能力が発揮できるような環境を整えましょう。

 「任せるスキル」を身につけることは、あなたを大きく成長させることであり、キャリアを切り拓く武器を得ることでもあります。焦らずじっくりと時間をかけて取り組んでいきましょう。

まとめ

人に仕事を任せるというのは、とにかく難儀なものです。つい、自分がやったほうが早いと思ってしまいますが、それでは、いつまでたっても、チームで一つの大きな仕事をすることができません。部下の成長=管理職であるあなたの成長であり、あなたの仕事の幅が広がるということなのです。少し先を見据えて、部下のやる気を引き出すノウハウを掴んでいってください。

▶︎ プロフィール

西尾英子 フリーライター
大学卒業後、男性総合誌で8年間編集に携わった後、フリーライターとして独立。主に女性誌やビジネス誌、書籍で女性の生き方や働き方などを執筆。これまで数多くの著名人やビジネスパーソンなどを取材。

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