勤務先への信頼感、収入や業績より

勤務先への信頼感、収入や業績より"健康への配慮"との関連性が高い事が判明

新型コロナウイルスの変異株・オミクロン株の感染拡大が続いている中、新型コロナウイルスは働く人々への意識にも大きな影響を与えています。今回は、日本生産性本部が発表した第8回「働く人の意識調査」をもとに、景気や勤め先への信頼感などについて、新型コロナウイルス感染症が働く人の意識にどのような影響を及ぼしているのかを見ていきます。

【関連記事】「コロナ禍で激変する働き方、「テレワーク」は体調不良の日の選択肢の一つに!?」

同調査は、組織で働く雇用者を対象に、勤め先への信頼度や雇用・働き方に対する考え方などについて、2020年5月以降、四半期ごとにアンケートにより実施されています。

8回目となる今回は、新しい変異株・オミクロンによる感染が急拡大する第6波の渦中で、まん延防止等重点措置が3県で適用中、13都県で適用される直前の1月17日(月)~18日(火)、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている人(雇用者=就業者から自営業者、家族従業者等を除いたもの)1,100名を対象にインターネットを通じて行われました。

1.景況感は楽観的な見通しが減少、オミクロン株の感染拡大が影を落とす

現在の景気について、「やや悪い」「悪い」の合計は66.4%と過去最少となりましたが、今後の景気見通しについて、「良くなる」「やや良くなる」との楽観的見通しは16.7%で前回21.8%から減少、「悪くなる」「やや悪くなる」との悲観的見通しは43.4%で前回10月調査の37.0%から増加しました。

2021年1月以降、微増を続けてきた楽観的見通しが悲観に転じ、オミクロン株の感染拡大が影を落とす結果となった(図3)」(日本生産性本部)。

post649_img1.jpg

(【画像出典】日本生産性本部プレスリリース)

【関連記事】「コロナ禍の長期化、3人に1人に働く上で悪影響--「同僚との感情共有が困難に」」

2.感染不安は全年代で増加するも、外出自粛には影響せず

自分自身が新型コロナウイルスに感染する不安の程度について、何らかの不安を感じる人の割合(「かなり不安を感じている」「やや不安を感じている」の合計)が75.6%と、この質問を新設した2021年1月以降、減少を続けていた不安を感じる人の割合が増加に転じました(図5)。

post649_img2.jpg

(【画像出典】日本生産性本部プレスリリース)

年代別では、全年代で何らかの不安を感じる割合(同上)が、前回10月調査より増加。高年齢層ほど不安を感じる割合が多く、50代以上では8割を超えました。「感染力の強いオミクロン株への警戒感が全年代で広がっていることが分かる」(日本生産性本部)。

一方、不要・不急の外出を「できるだけ避けるようにしている」割合は39.6%と、前回10月調査の38.3%からほとんど変わっていませんでした。

年代別で見ると、不要・不急の外出を「できるだけ避けるようにしている」の割合は、高年齢層ほど多い傾向は変わらず、外出自粛の割合は、前回10月調査と比べて30~40代で僅かに減少、他の年代では若干増えています。

3.雇用者の勤め先への信頼と最も関連性が高いのは「健康への配慮」

勤め先が健康に十分配慮をしてくれているかについては、肯定的な評価(「そう思う」「まずまずそう思う」の合計)は67.9%と、最多の2020年5月に次ぐ高い割合となりました。

勤め先の業績に、「不安を感じない」(「全く不安は感じない」「どちらかと言えば不安は感じない」の合計)割合は45.9%と、1年前と比較して10ポイント改善し、業績への不安は軽減の方向にあります。

また、今後の自身の雇用について、「不安を感じない」(同上)割合は、今回の調査を含め5回連続で好転しています。

今後の自身の収入について、「不安を感じない」(同上)割合は38.3%と、前回10月調査の38.4%より統計的有意差はないものの微減となりました。

日本生産性本部では、「業績と自身の雇用への不安感はこの1年間で好転しているが、収入への不安感には好転の兆しが見られない」としています。

勤め先への信頼の程度は、「信頼している」9.6%「まずまず信頼している」50.6%合わせて60.2%と、前回10月調査の60.8%から微減したものの、6割以上が肯定的となりました。

健康への配慮、業績・雇用・収入の3つの不安感と、勤め先への信頼の程度との関連性の強さについてクラメールの連関係数で数値化したところ、勤め先への信頼と最も関連性が強いのは健康配慮、次いで、雇用不安と収入不安が続き、最も関連性が弱いのは業績不安(図17)でした。

post649_img3.jpg

(【画像出典】日本生産性本部プレスリリース)

【関連記事】「【会社への不満】テレワーク実施企業への不満は約12%少ないことが判明」

4.まとめ

オミクロン株の感染拡大は、企業の従業員の景気の見通しを暗いものにしていることが分かりました。

また、企業への信頼感を左右する要素として、「健康への配慮」が最も関連性が高いことも判明。企業の経営者が、従業員の健康に配慮するかどうかで、従業員の勤務先への信頼感が大きく変わる可能性が高いことが分かりました。

就職・転職などにおいても、自身の健康に配慮してくれるかどうかを判断基準にする可能性があることも示唆する結果となりました。

(【記事出典】日本生産性本部プレスリリース「テレワーク実施率は過去最低の18.5%、中堅・大企業の実施率低下が影響新型コロナが働く人の意識に及ぼす影響を継続調査~第8回「働く人の意識調査」」)

この記事をシェアしよう!