"男性産休"制度が2022年10月1日開始--産後直後の母体ダメージに配慮

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「イクメン」という言葉もすっかり世間に浸透し、特に若い世代で男性の育児参加の機運が高まっています。今年6月に成立した改正育児・介護休業法で設けられた"男性産休"が2022年10月1日からスタートすることになりました。従来の「産休は女性だけが取得するもの」という時代が変わりつつあるようです。

【関連記事】「「男性従業員に育休を取らせてあげたいが、困り事が頭をよぎる」経営層が7割」

1.「産休」と「育休」の違いとは?

今回改正される「育児・介護救護法」は育児や介護に関わる労働者の扱いについて定めた法律です。

まず産休と育休の違いについて知っておきましょう。

産休とは、産前休業(出産予定日の6週間前)と産後休業(出産の翌日から8週間)のことです。

育休とは1年間の育児休業のことです。1歳に満たない子どもを養育する労働者は、子どもが1歳になるまでの間で希望する期間、育児休業を取得できます。1歳になっても保育園など預け先がみつからないなどの一定条件を満たした場合は、最長2歳までの育休の延長が可能です。

育休に関しては子どもを養育する労働者であれば、男女どちらが取得しなくてはならない、などの決まりはなく、男性が取得することも可能です。

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近年女性の社会進出を促すために、男性の育児参加は必須という考え方から、国主導での推進も行われています。男性の育児休業取得率について、「少子化社会対策大綱(2020年5月29日閣議決定)」において、2025年には取得率を30%にすることを政府目標に設定しています。

ですが、厚生労働省の「令和2年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得率は12.65%、前年は7.48%よりは上昇しているものの、まだ目標には程遠い数字です。女性の育児取得率の81.6%と比較すると、まだまだ男女の格差があるのが実情です。

2.男性が育休を取りやすくなった育児・介護休業法改正のポイントは?

今回の育児・介護休業法の改正では母体にダメージが残る出産直後の時期に父母が揃って育児と向き合えるようにするというのが主な狙いで、従来の育休とは別に取得をすることができます。具体的な改正のポイントをご紹介します。

(1)「男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設」(2022年10月施行予定)

子どもの生後8週間以内に最大4週間まで、父親が育休取得できます。妻の出産時と退院時に分けて休むケースも想定し、2回に分割して取得することも可能。

また事前に社内で労使協定を結んだうえで、働き手側が希望すれば、育休中に就業をすることも認めています。従来の育休では取得中の仕事は認められておらず、男性の育休取得のハードルとなっていました。

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(2)「雇用環境整備及び妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務化」(2022年4月施行)

自身や配偶者の出産や妊娠を届け出た社員に育休を取る意向があるかを確認することを企業側に義務付けます。これにより育休取得に向け、企業に対する義務も強化されます。

(3)「育児休業の分割取得、育児休業の取得の状況の公表義務付け、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和」

 ・育児休業は分割して2回まで取得可能。保育園に入所できないなどの理由により、1歳以降に延長する場合は、開始日を柔軟化することで各期間途中でも夫婦交代することが可能。

 ・従業員1000人超の企業を対象に、育児休業の取得状況について公表を義務付け。(2023年4月施行)

 ・「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件について、無期雇用労働者と同様の扱いに。(労使協定の凍結により除外可)

【関連記事】「育児・介護休業法の改正で男性の育休は増える? 総務の66.7%が「変わらない」」

3.産休・育休中の給料や社会保険料はどうなる?

産休・育休中の給料については、各企業の就業規則によりますが、給料の何割かを支払う企業もあれば、無給という企業も。現状は支払われないケースがほとんどです。ですが、雇用保険から「育児休業給付金」という形で手当が支給されます。女性の場合産後休業の翌日(産後57日目)から子どもの1歳の誕生日前日まで、一定の要件を満たす場合は2歳まで支給されます。父親が取得した場合は、出産日の当日から支給されます。

社会保険料に関しては、育児休業中の保険料免除要件が見直されています。短期の育児休業取得に対応し、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合、当該月の保険料を免除されます。さらに賞与に係る保険料に関しても「1月を超える育児休業を取得している場合に限り」免除の対象となります。

4.まとめ

最近では街でベビーカーを押していたり、抱っこひもで赤ちゃんを連れたりしている男性の姿も増え、珍しい光景ではなくなっています。男性が育児に積極的に参加することで、夫婦の絆が強くなる、また子育て経験を仕事に生かせるなどのメリットも多くあります。

少子化対策の解決策としても男性の育児参加は必須と考えられており、厚労省もイクメンプロジェクトを立ち上げ、オンラインセミナーなど、様々な情報発信などを行っています。気になる方は以下もチェックしてみてください。

『厚生労働省「開催予定のイクメンプロジェクト関連イベント」』

原稿:回遊舎(かいゆうしゃ)

"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。

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