育児・介護休業法が改正され、2022年4月1日から段階的に施行されることになり、男性の育児休業の促進が期待されています。では、企業ではそのための態勢は整っているのでしょうか。今回は、『月刊総務』を発行する株式会社月刊総務が全国の総務担当者を対象に実施した「男性育休に関する調査」をもとに、男性の育児休業の実情を紹介します。
育児・介護休業法は2021年6月に改正されました。厚生労働省によると、改正内容は以下の通りとなっています。
- 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設
- 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
- 育児休業の分割取得
- 育児休業の取得の状況の公表の義務付け
- 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
(【出典】厚生労働省「育児・介護休業法について」)
月刊総務では、『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者らを対象に、 2021年7月12日~7月19日に「男性育休に関する調査」をWebアンケートで実施。有効回答数は137件でした。
1.総務の3割以上が男性育休を取りやすい風土を作る施策を「何もしていない」
同調査でこれまで育休を取得した男性社員はいるか尋ねたところ、「いる」が48.9%、「いない」が47.4%で、ほぼ半々という結果になりました(n=137/全体)。
(【画像出典】月刊総務プレスリリース)
男性育休を取りやすい風土を作るために実施している施策について尋ねたところ、最多は「育休を取得できることの周知徹底」で42.3%、「何もしていない」が33.6%という結果になりました(n=137/全体)。
(【画像出典】月刊総務プレスリリース)
そのほかの回答結果については、以下の通りとなっています。
- 育児休業制度の整備・見直し:36.5%
- 人事部や上司との面談機会の設定:20.4%
- 社内報やwebサイトでの育休取得事例の広報:18.2%
- 管理職研修で扱う:11.7%
- 相談窓口の設置:10.9%
- 育休マニュアルの作成:10.2%
- 社員研修で扱う:7.3%
- 手当の充実:5.1%
- 育児中社員のネットワークづくり:2.2%
男性育休に積極的に取り組めない理由については、「企業規模が小さく、代替人員がいない」「ロールモデルがいない」「社内風土ができていない」「前例がない」「上長からの評価が下がる可能性がある」などを挙げた企業がありました。
2.約7割の総務が男性育休をもっと推進したいと回答
ただ、総務の本音として、男性育休の推進をどう思っているか尋ねたところ、「もっと推進したい」が67.9%、「あまり推進したくない」が27.7%、「全く推進したくない」が4.4%という結果になりました(n=137/全体)。
(【画像出典】月刊総務プレスリリース)
推進したい理由、推進したくない理由の回答の一部抜粋として、以下のものがありました。
●推進したい理由
- 育休に限らず、今までの働き方に固執することなく柔軟な働き方を推進したいと考えている
- 若手社員の傾向として家族を大切にしたいとの意向が強く、社員満足度を高めるためにも積極的に対応している
- 育休をとるのが当たり前になることで、仕事の属人化を防ぐことにつながり、効率化が進むから
- 男性が取得することにより、共に働く女性の業務範囲も広がり相乗効果があると認識
- 総務異動前に自身が育休(2週間程度)を取ろうとして当時の上司に「戻ってきたら席ないと思え」と言われ断念した後悔から、総務異動前から周囲に育休を取るよう声かけをしてきた
●推進したくない理由
- 小規模の会社にとっては、周囲の負担増が懸念
- 権利だけを主張して、仕事を考えずに休まれることが懸念される
- 育休は女性がとるものという固定観念がまだ強い
また、男性育休で総務の対応が大変なことについて、以下のような回答がありました。
- 女性の育休と若干手続きに違いがあることに戸惑った
- 従業員特に管理職以上の意識改善
- 手続等が煩雑だったけれど、ほぼ全員が2~4か月取得しているので慣れました
3.育児・介護休業法改正の対応は「社内規定の改正」が半数以上。何をすればいいかわからないとの声も
2021年6月に育児・介護休業法が改正されたことを知っているか尋ねたところ、「はい」が78.8%、「いいえ」が21.1%という結果になりました(n=137/全体)。
(【画像出典】月刊総務プレスリリース)
具体的に理解している改正項目について尋ねたところ、「対象期間、取得可能日数」が79.6%で最も多く、「休業の分割取得」が65.7%、「育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の義務化」が50.9%と続きました。(n=108/法改正を知っている方)。
法改正に際し、どのような対応をするか尋ねたところ、「社内規定の改正」が55.5%で最も多く、「社内報等による周知」が35.8%、「取得マニュアルの整備」が19.0%と続きました(n=137/全体)。
(【画像出典】月刊総務プレスリリース)
そのほかの対応としては以下の通りとなっています。
- 対象社員との面談の実施:17.5%
- 管理職研修の実施:10.9%
- 育休取得率の公表:7.3%
- 認証制度の取得:3.6%
- 手当の充実:1.5%
- すでに十分な対応ができている:2.2%
- 具体的に何をすればいいかわからない:15.3%
この法改正で男性育休の希望は増えると思うか尋ねたところ、「増える」が33.3%、「変わらない」が66.7%という結果になりました(n=108/法改正を知っている方)。
4.まとめ
月刊総務では、今回の調査結果に関し、「約半数の企業で男性育休の取得実績はあるもののまだ数は少なく、取得しやすい風土作りにも課題があることがわかりました」とし、「総務の立場から推進したいと思っても、「会社の方針と違う」「会社の風土として推進しにくい」などの障壁があるという声が多くありました」と指摘しています。
また、「若手社員は育休の取得に積極的な一方で中高年層の理解が進まないといった世代間ギャップもあるようです」(同社)。
同社では、「男性育休を取りやすい風土を作るための施策については、最も多かった「育休を取得できることの周知徹底」ですら半数以下という結果でした」とした上で、「総務担当及び経営者は、今回の育児・介護休業法の改正内容もしっかり理解し、必要な対策を講じることが求められます」と提言しています。
(【記事出典】月刊総務プレスリリース「約7割の総務が男性育休をもっと推進したいと回答する一方、3割以上が男性育休を取りやすい風土を作る施策を「何もしていない」」)