1年以上にわたるコロナ禍によって、一部の職種ではリモートワークが定着しています。一方でリモートワークへの移行が難しい職種もあります。リモートワークの定着によって、会社や仕事に対する考え方にも変化が生じはじめています。(Misa)
1.ニューノーマルと働き方改革
ニューノーマル、すなわち「新しい生活様式」は、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議によって提言されたウイルスの感染拡大防止に軸をおいた「行動変容」の指標です。新型コロナウイルスとともに生きていく社会を前提とし、飛沫感染や接触感染などへの対策を日常生活に取り入れた生活様式を、実践例として明示しています。
政府は企業に対しても、職場で「新しい生活様式」を実践、定着させる取り組みを求め、経団連では参加企業に対して周知徹底を促しています。
2020年4月の緊急事態宣言による外出自粛要請で、首都圏の企業を中心に在宅勤務(リモートワーク)の導入が一気に加速しました。それまで働き方改革の一環として推奨されていたテレワークには積極的にならない企業が多かったのですが、緊急事態宣言が追い風となった形です。
実際に導入してみると、企業にとっても従業員にとってもメリットが感じられ、業務への支障も懸念していたほどはなかったというのが一般的な実感のようです。コロナ禍は終わりが見えない状況ですが、アフターコロナにおいても、働き方改革の一環として、一定の割合でリモートワークは定着していくと考えられます。
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2.リモートワークしやすい職種
実際には、すべての業務がリモートワークに対応できるわけではありません。自宅などオフィス以外の場所で業務を行えることが前提となります。そういった点ではパソコンでの業務が中心になっているデスクワークは、全般的にリモートワークに移行しやすい職種といえます。
ITエンジニアの中でも、開発系のシステムエンジニア、プログラマーはリモートワークに適していますが、ハードウェアに直接触れる必要が生じるインフラ系のエンジニアは、比較的リモートワークに移行しづらいといえます。
デザイナー、Webデザイナー、ライターなどのクリエイティブ系職種は、作業自体を単独で進められ、成果物という明確な結果が出せるため、もっともリモートワークに適した職種のひとつといってよいでしょう。
同様にリモートワークしやすいのが営業職です。オンラインでの商談やミーティングが可能になり、リモートで事務処理を行える環境が用意されれば、オフィスに出社する必要性はほとんどありません。受注や売上という成果が明確な点もリモートワークに向いています。
人事、経理、総務などの事務系職種も、作業自体はリモートワークで問題ないのですが、クリエイティブ系職種や営業職のように明確な成果が少ないため、業務管理や人事評価などへの配慮が必要になります。
3.リモートワークの条件
ひとりで業務を完遂する、もしくは作業分担しやすい職種で、リモートワークが定着しはじめているのに対し、接客サービスや製造・メンテナンスなど人やモノに接する必要がある仕事は、リモートワークが難しい傾向があります。リモートワークのために、これまでとは違う形でセキュリティを担保する必要はありますが、多くの場合はITの利活用やルールの整備で対応することができます。
リモートワークを経験した人や企業の一定数は、従来の勤務形態に戻ることを望まなくなっています。実際にリモートワークを前提に、オフィスの縮小や地方移転を行う企業、地方や郊外への移住者が増えています。
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また、仕事やライフスタイルの価値観の変化にあわせて、転職する人も出てきています。これらのニューノーマル時代の転職者ともいえる人には、仕事とプライベートのバランス感覚の変化、会社以外にも仕事をもつ"複業"という考え方が見られます。リモートワークが定着するにつれ、社会全体で、会社員という概念が変化していくのかもしれません。
原稿:Misa
ITベンチャーで企画、人材開発、広報などを経て独立。現在はコンサルタント、ときどきライター。ライターとしては、IT系以外、アニメ・マンガ、車から美容・健康まで何でもチャレンジ中。