コロナ以降、東京都から他県への転出者が増加を続けています。近年、地方移住への関心は高まっていましたが、本当にトレンドになったといえるのでしょうか。コロナ禍の影響で変わってきた、地方と都市部の関係から考えてみましょう。(Misa)
コロナ禍で地方移住が増えている?
2020年9月29日に、総務省が発表した住民基本台帳人口移動報告 によると、8月の東京都の転出者数は3万2038人(前年同月比16.7%)と大幅に増加しています。これは2ヵ月連続の転出が転入を上回る「転出超過」であり、新型コロナウイルスの感染拡大が影響しているとみられています。特に神奈川、埼玉、千葉への転出が大きく増えているということです。首都圏内での転出のほかに地方移住といえる転出も増えているようです。地方移住にはいくつかのタイプがあります。
・都市近郊への移住
首都圏などの都市部で働く人が近県に転出する移住で、東京から神奈川、埼玉、千葉への転出はこれに該当します。従来はマイホーム購入がこうした転出の理由となっていましたが、今回の転出超過はマイホーム購入だけではないようです。
・二拠点型の半移住(二拠点生活 )
フリーランスや自営業者などを中心に、仕事の軸足は都市部に置いた状態で地方移住する人もいます。都市部と地方の両方に自宅があって行き来する人もいますが、仕事のスケジュールにあわせて都市部のシェアハウスなどに滞在するというスタイルもあるようです。アドレスホッパーという、家を持たないライフスタイルも生まれています。
・完全移住
これまでは、通勤不可能な地域に移住する場合は転職を余儀なくされていました。しかし、企業のワークスタイルに選択肢が増え、同じ仕事を続けながら通勤圏とはいえない地域に住むことも可能になりつつあります。
地方移住が増えた理由
地方移住が増加した背景には、新型コロナによる外出自粛で、都市部の企業を中心としたテレワークの普及があります。緊急事態宣言によってテレワークに消極的だった企業も対応せざるをえず、働き方や生活様式の変化を余儀なくされました。その結果、企業も、従業員もテレワークのメリットを実感できたことも事実です。そして、現在に至っても、コロナ以前の社会活動に戻る見通しは立っていません。終わりが見えないwithコロナの生活様式が人々の価値観や働き方に大きな影響をもたらしました。
実際にコロナ終息後もテレワークを継続するという方針の企業は多く、テレワークによって通勤回数が減少することで、職住接近の必然性が薄らぎました。家賃や物価が安く、暮らしやすい地域へと目が向くのは自然なことです。
さらに、多くの地方自治体が移住者へのさまざまな補助を用意していることも大きいでしょう。特に子供のいる世帯には手厚い補助があり、子育てのしやすさで地方移住を選択する家庭もあります。
コロナ禍で変わった地方と都市部の関係
これまでの地方移住者は、退職後のセカンドライフとして移住する60代以上が中心で、子育てを終えた熟年夫婦が主流でした。しかし、コロナ以降、地方移住者の傾向に変化が起こり、現役世代が移住する時代になりつつあります。これまで、地方暮らしを望んでいても仕事の都合などで断念していた人、コロナによる生活やワークスタイルの変化で地方の暮らしに興味をもった人などが、移住へと踏み出しているようです。
仕事を変えず、都市部の仕事を地方で行うことは経済的にもメリットがあります。都市部と地方では給与水準に違いがあり、都市部の仕事で収入を得ながら、家賃相場や物価が安い地方で暮らせば、同じ収入でもより暮らしやすくなります。
一方で、不用意な地方移住にはリスクもあります。地域にとけこめない、収入が下がる、車がないと不便など、都市部とのギャップで移住生活が立ちいかなくなる人もいるようです。こうしたリスクを避けるため、二段階移住 など、一定の準備期間を経て移住することが奨められています。
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プロフィール
原稿:Misa
ITベンチャーで企画、人材開発、広報などを経て独立。現在はコンサルタント、ときどきライター。ライターとしては、IT系以外、アニメ・マンガ、車から美容・健康まで何でもチャレンジ中。