今や生活になくてはならないIT(Information Technology、情報技術)。内閣にはIT総合戦略本部が設置され、経済産業省も「IT産業の競争力強化」などに取り組むなど、国が注力している分野のひとつでもあります。
その施策の一環として、現在、様々なIT関連の国家試験が実施されています。これらの試験に合格することで、IT関連の会社への就活や転職の際、知識ややる気のアピールに繋がるなどの効果が期待できるでしょう。以下、試験の種類やレベル、オンライン受験の可否など、各試験について詳しく紹介します。
まずは、ITに関連する国家試験を、IT知識全般を問う試験、エンジニアとしての知識やスキルを問う試験、マネージャーとしての知識やスキルを問う試験の3つに大きく分けて、それぞれ具体的な試験を見ていきます。
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【関連記事】「エンジニアの種類と仕事内容は?キャリアチェンジにも役立つ知識を徹底解説」
1.IT知識全般をカバーする試験
・ITパスポート試験
IT関連の国家試験の中でも入門的な位置付けなのがITパスポート。ITを利用する人全員が持っておくべき知識を問う試験です。出題内容はテクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の3領域にわかれており、企業活動や法律、経営戦略、システム企画、システム開発技術、アルゴリズム、データベース、セキュリティなど幅広く出題されます。
試験は随時開催されているため、決まった試験日はありません。試験時間は120分間です。
・基本情報技術者試験
システムの設計・開発に必要な基礎知識から、情報技術を活用した戦略立案に役立つ基礎知識まで、IT関連の仕事に就く人の基本となる試験です。ITパスポートと同じくテクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の3領域から幅広く出題されますが、より専門的なITの基礎知識を問うものとなっています。
試験は年2回、午前150分と午後150分に分かれており、複数の選択肢からの選択問題で構成されています。
【参考】情報処理推進機構(IPA)「基本情報技術者試験(FE) ~ ITエンジニアの登竜門 ~」
・応用情報技術者試験
IT関連の仕事においてさらなるレベルアップを目指す人におすすめの試験です。テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の3領域に関して、より応用的かつ幅広い知識を問う内容になっています。具体的には、経営戦略や情報戦略、戦略立案、システムアーキテクチャ、システム監査など、よりマネジメント層に近い内容が目立つ点が特徴です。
試験は年2回、午前は150分と午後150分に分かれています。複数の選択肢からの選択問題と記述式の問題が出題されます。
応用情報技術者試験は広く知られている上に、スキルレベル3の高度な資格であることから、取得することで転職の際も有利にはたらくでしょう。
【参考】情報処理推進機構(IPA)「応用情報技術者試験(AP) ~ ワンランク上のITエンジニア ~」
【関連記事】「社会人におすすめの資格16選! キャリアアップや若いうちに取るべき資格を紹介」
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2.エンジニアとして働く&目指す人に
・システムアーキテクト試験
システムのグランドデザインを描き、開発の上流をリードする上級エンジニアを目指す人におすすめの試験です。大きく分けて情報システムと組込みシステム・IoT を利用したシステムについて出題され、契約から要件定義、仕様決定、開発、運用・保守などシステム開発に必要な知識とスキルが幅広く深く問われます。
試験は年1回実施され、午前にそれぞれ50分・40分の選択問題形式の試験、午後にそれぞれ90分・120分の記述形式の試験の計4つの試験で構成されています。
【参考】情報処理推進機構(IPA)「システムアーキテクト試験(SA) ~ 業務とITのグランドデザイナー ~」
・情報セキュリティスペシャリスト試験
益々重要性を増していく情報セキュリティのスペシャリストを目指す人におすすめの試験です。セキュリティ対策や実装技術の専門知識、セキュリティに関わる法的知識などはもちろん、システム構成要素やデータベース、プロジェクトマネジメント、システム戦略など情報セキュリティ専門家として働く上で必要となる幅広い内容が出題されます。
年2回、午前90分と午後90分の選択問題形式の試験です。
【参考】情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティスペシャリスト試験(SC) ~ ITの安全・安心を支えるセキュリティの番人 ~」
・ネットワークスペシャリスト試験
ネットワークエンジニアやインフラ系エンジニアを目指す人におすすめの試験です。大きく情報システムと組込みシステム・IoT を利用したシステムに関して出題され、合格することで情報システムの企画・要件定義・設計・構築・運用・保守までカバーできる知識やスキルがあると示すことができます。
年1回、午前にそれぞれ50分・40分の選択問題形式の試験、午後にそれぞれ90分・120分の記述形式の試験の計4つの試験を受けます。
【参考】情報処理推進機構(IPA)「ネットワークスペシャリスト試験(NW) ~ ネットワーク社会を担う花形エンジニア ~」
・データベーススペシャリスト試験
データベース管理者やインフラ系エンジニアを目指す人におすすめの試験です。データベース技術や、データベースシステムの企画、要件定義、開発、運用、保守に必要な知識やスキルなどが問われます。膨大なデータを管理し活用するためのデータベースシステムはその重要性を益々増しており、データベースに関する知識やスキルはきっと役立つことでしょう。
試験は年1回実施され、午前にそれぞれ50分・40分の選択問題形式の試験、午後にそれぞれ90分・120分の記述形式の試験の計4つの試験から成っています。
【参考】情報処理推進機構(IPA)「データベーススペシャリスト試験(DB) ~ ビッグデータ時代に求められる、データ志向の担い手 ~」
・エンベデッドシステムスペシャリスト試験
IoTの推進などでより一層求められる機会が増えるだろう組込みエンジニアやIoT系エンジニアを目指す人におすすめです。組込みシステムのソフトウェアとハードウェア両面の詳細な設計や、システム全体の設計、保守などに必要な知識やスキルが出題範囲となっています。
試験は年1回、午前にそれぞれ50分・40分の選択問題形式の試験、午後にそれぞれ90分・120分の記述形式の試験の計4つに合格する必要があります。
今後需要が見込まれる分野なので、ぜひ取得して転職を目指しましょう。
【参考】情報処理推進機構(IPA)「エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES) ~ IoT時代に欠かせない組込みシステムの腕利きエンジニア ~」
3.ITマネジメントを極めたい人に
・ITストラテジスト試験
ITコンサルタントやCIO、CTOなど、経営戦略に基づくIT戦略策定やIT活用などを主導する立場を目指す人におすすめの試験です。戦略・計画の策定や実行管理、評価など、プロジェクト全体の方向を定め、プロジェクトを円滑に実現するための知識やスキルを問う問題が出題されます。
試験は年1回、午前にそれぞれ50分・40分の選択問題形式の試験、午後にそれぞれ90分・120分の記述形式の試験の計4つの試験が用意されています。
【参考】情報処理推進機構(IPA)「ITストラテジスト試験(ST) ~ 経営とITを結びつける戦略家 ~」
・プロジェクトマネージャ試験
システム開発プロジェクトの計画作成からリソースの確保、スケジュール管理などプロジェクト全体の責任者としてマネジメントに携わる立場を目指す人におすすめです。プロジェクトの立ち上げ・計画、実行・管理、終結と各工程をスムーズに進めプロジェクトを成功させる知識とスキルが求められます。
年1回の試験では、午前にそれぞれ50分・40分の選択問題形式の試験、午後にそれぞれ90分・120分の記述形式の試験の計4つの試験を受験します。
【参考】情報処理推進機構(IPA)「プロジェクトマネージャ試験(PM) ~ ITプロジェクトの成功請負人 ~」
・ITサービスマネージャ試験
ITサービスの継続的な改善と安定した提供を主導するITサービスマネージャを目指す人におすすめの試験です。サービスマネジメント全般や、サービスマネジメントシステムの計画・運用、パフォーマンス評価・改善などサービスマネジメントに特化した内容が中心となっています。
試験は年1回、午前にそれぞれ50分・40分の選択問題形式の試験、午後にそれぞれ90分・120分の記述形式の試験の計4つの試験から成ります。
【参考】情報処理推進機構(IPA)「ITサービスマネージャ試験(SM) ~ ITサービスの安定提供を約束する仕事人 ~」
・システム監査技術者試験
独立した専門的視点から、情報システムや組込みシステムのリスクの分析、コントロールの点検・評価・検証、監査の実施・報告などを行う立場を目指す人におすすめです。システムやネットワークについての知識・スキルはもちろん、監査の仕方や監査人の規範、監査に関連する法律などが出題範囲となっています。
試験は年1回です。午前にそれぞれ50分・40分の選択問題形式の試験、午後にそれぞれ90分・120分の記述形式の試験の計4つの試験に合格しなくてはなりません。
各試験の出題範囲や試験方法は随時変更されています。受験する際は、必ず公式サイトなどで最新の情報を調べた上で準備しましょう。
【参考】情報処理推進機構(IPA)「システム監査技術者試験(AU) ~ 独立した立場でITを監査する御意見番 ~」
4.オンラインで受験できる試験は?
IT関連の国家試験のうち、ITパスポート試験、情報セキュリティマネジメント試験、基本情報技術者試験はCBT(Computer Based Testing)方式で実施されています。CBT方式とは試験会場に設置されたコンピュータを使用して実施する試験で、オンラインで受験するとはいえ好きな場所で好きな時に受けられるわけではありません。
CBT方式の3つの試験のうち、IT関連の国家試験の入門的位置付けのITパスポート試験は、全国にある試験会場で随時実施されています。自分の都合に合わせて比較的柔軟に受験することができるため、その点でもまず初めに挑戦しやすい試験と言えます。それ以外の試験は試験会場で紙に記入していく方式です。
5.IT国家試験は転職に役立つ!?
ITエンジニアの世界は技術力が優先されることから、「資格はいらない」「取っても意味ない」というネガティブな声も聞かれます。
しかし、紹介した上記の国家試験はどれも知名度が高く、履歴書に記載することで「ITのスキルがある人」「ITに関して勉強をしてきた人」という評価を受けることはほぼ間違いないでしょう。
取得すれば活躍できる場所も広がり、さらなるキャリアアップも目指せるため、ぜひ取得することをおすすめします。
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6.転職でIT国家資格を生かす方法
最後に、転職の際にIT国家資格を生かす方法を解説します。
転職のために国家試験を受けようと考えている方はぜひ参考にして、取得したIT国家資格を最大限に生かしてください。
・就きたい職業に合う資格を選ぶ
仕事探しをする上で最も大切なのが自分に合うかどうかです。
自分に合う仕事を見つけるためには、これまでの仕事経験、得意不得意なことを振り返り、自己分析を行いましょう。
自己分析を行うことで、自分の強みや弱みが見えてきます。その上で、自分が就きたい職業に合う資格は何かを考えることが大切です。
難易度や勉強のしやすさだけを理由に資格を選ぶと、いざ自分が就きたい職業ではあまり役に立たなかったということもあります。
・知識だけではなく技術も高める
国家資格を保有していることに加えて、スキルが伴っていることがアピールできれば、転職の際かなり有利になります。
もちろん、国家資格はそれだけでも差を付けられる大きなプラスポイントですが、IT業界は知識以上に技術が求められる世界でもあります。
そのため、「実務ではその資格をどのように生かせるのか」「資格取得のためにこういった技術を身につけた」ということを、具体的にアピールしましょう。
実務経験が無い場合でも、「これから実務経験を経て学んでいきたい」という前向きな姿勢を示すことが大切です。
・自信がない場合は転職のプロに相談する
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7.まとめ
ITの知識やスキルは持っていて損がありません。ここで紹介した国家試験の他にも、合格すれば情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)の国家資格を申請できる国家試験や、マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)などの民間試験があります。
IT関連の仕事にこれから挑戦したい人や、今働いていてより一層活躍していきたい人などは、目的に合った試験合格を目指してみてはいかがでしょうか。
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