最近、メディアやスーパーマーケット、コンビニの店頭などで目にすることの多い「エシカル」「エシカル消費」という言葉。漠然と「環境によい」などのイメージはあるけれど、具体的にどんな意味なのか説明できないという方も多いのではないでしょうか。そこで、「エシカル」や「エシカル消費」について解説します。
「エシカル」「エシカル消費」とは?
「エシカル」は英語で書くと「Ethical」で、「倫理的な」「道徳上の」といった意味を持つ言葉です。現在ではとりわけ、人や地域、社会、地球環境などに配慮していることを示すようになり、「エシカル〇〇」という形で使われることも多くなっています。「エシカル消費」もそのひとつで、消費者庁によると、「消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援したりしながら消費活動を行うこと」を指すとされています。2015年に開催された国連の「持続可能な開発サミット」では、2030年までの国際目標「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。この目標を果たすため推進されている施策のひとつでもあります。
具体的に「エシカル消費」とはどんな消費のこと?
では、具体的に「エシカル消費」とはどのような消費をすることなのでしょうか。例として次のようなものが挙げられます。
・寄付付きの商品を選ぶ
「売上の〇〇%を寄付」「チャリティ」と謳う商品を一度は見たことがあるのではないでしょうか。これらの商品を買うことで、私たちは商品を手に入れると同時に、特定の団体などに寄付をすることができます。寄付先は様々で、自分の関心に合わせて手軽にエコ消費を実践することができます。
・地元産の商品を選ぶ
スーパーマーケットにある地産地消コーナーから野菜を買うこともエシカル消費と言えます。地産地消とは、ある地域で生産された農林水産物をその地域内で消費する取組のことで、流通にかかるコストや環境への負荷を軽くするなどの効果があります。顔の見える生産者から食物を買うことで、安心感を覚える方もいることでしょう。
・認証ラベルのある商品を選ぶ
将来、乱獲や自然環境の破壊などにより、自分の大好物の魚介類が食べられなくなると聞いたら、どのように感じるでしょうか。海洋の自然環境や水産資源を守って獲られた水産物に与えられるMSC認証ラベルの付いた商品を選ぶことは、そのような未来を防ぐことに繋がります。
・福祉施設で作られた商品を選ぶ
障がいのある方が作った小物やお菓子などを販売している施設やオンラインショップがあります。それらの商品を買うことで、例えば働きたいけれど働けない方などの自立や社会参加をサポートすることができます。ハンドメイドや人の手のぬくもりが感じられるものが好きな方などにぴったりなエシカル消費です。
・エシカルファッション
オーガニックコットンの独特な風合いを活かした服を購入したことがある方は、既にエコ消費をしていると言えるかもしれません。環境破壊や劣悪な労働環境に支えられたファッションではなく、環境にも労働者にも無理を強いることなく生産されたファッションをエシカルファッションと呼びます。服ではありませんが、パッケージに「アニマルフレンドリー」「オーガニック」などと記された化粧品を選ぶこともエシカル消費です。おしゃれにエシカル消費を実践するよい例と言えるでしょう。
「エシカル」や「エシカル消費」という言葉から、「自分とは関係ないこと」「実践するのが難しいこと」「我慢を強いられること」などを連想した方の中には、思ったよりも身近で、手軽で、楽しく実践できることに驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。「エシカル」であることを、小難しく考える必要は全くありません。
「エシカル」「エシカル消費」で作る未来
「エシカル」や「エシカル消費」を実践することは、未来にどのような影響を与えることができるのでしょうか。
例えば企業の視点から見ると、「エシカル」の実践は、その企業のイメージアップに繋がるかもしれません。また、競合他社との差別化ができ、より消費者に選んでもらいやすくなるということもあるでしょう。行政の視点から見ると、「エシカル」を推進することが地域の活性化や持続可能な社会作りの助けになるはずです。
そして消費者の視点から見ると、「エシカル」は商品やサービスを選ぶ新たな尺度と言えます。私たちの商品やサービスを選択する尺度が変わると、企業が生み出すものもその尺度に合わせて変化していくでしょう。つまり、「エシカル消費」は人や地域、社会、地球環境に配慮した商品やサービスを増やしていく一歩になります。言い換えれば、私たちの日常的な消費行動で「エシカル」な選択を積み重ねることが、社会的課題を解決するとも言えるのです。
まとめ
人や地域、社会、地球環境などに配慮していることを示す「エシカル」という言葉は、今後も重要度を増していくことでしょう。堅苦しく考えず、まずは気軽に日常生活の中で「エシカル消費」を実践してみてはいかがでしょうか。確かに、ひとつひとつの実践は社会に対して小さな影響しか与えられないかもしれません。しかしその積み重ねが、社会的課題の解決した未来を作ることに繋がります。
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回遊舎(かいゆうしゃ)
回遊舎(かいゆうしゃ)
"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。
近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。