ある瞬間に分岐し、"本来の世界"に並行するかたちで存在する"全く別の世界"のことを「パラレルワールド」と呼びます。これはファンタジーの世界によく登場する天界や魔界などの"異世界"とは少し特性が違っていて、あくまでも実際に我々が住んでいる世界と同一の次元を持っている別世界という認識です。
SF映画では、この「パラレルワールド」がポピュラーなアイディアとして浸透していますが、実は量子力学や理論物理学などの分野でも「エヴェレットの多世界解釈」や「多元宇宙論」のように、その存在の可能性について語られています。
そんな「パラレルワールド」という並行世界の考え方を応用し、あなたが移り変わりの激しい現代社会を逞しく生き抜いていくために、実用的な武器となってくれるであろう『仮説思考』という思考法を紹介していきたいと思います。
現代社会は情報量が多すぎる
現代は、スマートフォンを通してあらゆる情報が私たちの人生に影響を与えています。つまり、キャッチする情報によって「良くも悪くも人生をコントロールされている」と言っても過言ではありません。
そもそも人間は情報に影響を受けやすいという特徴を持っており、キャッチした情報の影響を受けることによって、無意識的に行動が変化することが往々にしてあるのです。
こういった何気なく日々浴びている情報のシャワーの中から、自分にとってプラスになる情報を取捨選択する力を早いうちに養うことができるかどうかで、今後の人生が大きく変わることもあるのです。
上記のように、情報を選別する力を養って有意義な人生を歩む自分と、全ての情報を鵜呑みにしてしまうことによって不本意な人生を歩む自分。選択次第では、異なる運命を辿る二つの存在の可能性が考えられるのです。こんな世界の存在をパラレルワールドと呼びます。
「情報オーバーロード」の代償
ここで、ひとつ理解していただきたいのは、情報を取り入れた後の、判断した行動の積み重ねによってあなたの今後の人生が劇的に変わってくるということです。
日常生活において普段から無意識レベルで目にしている情報や、耳にしている情報が引き金となって人生の方向性が変わってくる可能性もあるので、決して軽視しない方が良いでしょう。
いつでも色々な情報や価値観に簡単にアクセスできるインターネットの恩恵は、我々の人生においてあらゆる可能性を見出してくれるようになりました。人と人をオンライン上でカテゴライズして繋げてくれる様々なSNSや、目的によって使い分けることで利便性が大幅に向上するアプリケーションの数々も、多くの人々にとっては日常生活に欠かせないものとなっています。
一方で、情報過多になっている現状を改めて俯瞰してみると、本当に必要な情報が埋もれてしまっている場合も多いでしょう。あなたの身の周りでも必要でない情報に埋もれ、課題の理解や、意思決定が困難になる経験はあるのではないでしょうか。
こういった現象を「情報オーバーロード」といいます。この代償として、入手すべき情報の全体像が把握できなくなってしまったり、複雑な情報によって混乱を招いてしまったりしていて、人々が決断するプロセスを狂わせている傾向が多くあります。
多くの選択肢が与えられるということは、多種多様な側面から最も素晴らしいものを選ぶことができるという反面、どれにすれば良いのかが分からなくなってしまい、本来の意思決定を惑わしてしまうといったリスクも考えられます。
例えば、知らない国に海外旅行する際に、魅力的な観光地が1つだけしかないのであれば迷うことはないでしょうが、その他にも数多くの素敵な観光地があるとしたら、多くの人は訪れる場所に迷ってしまうでしょう。
このように「情報オーバーロード」によって困惑してしまったが故に、決定そのものができなくなる。決定はできるが、必要以上の時間を要してしまう。これらは人生において大きなマイナスになるでしょう。
自分自身の意思で「決める」ことが、成功者ほどできているという統計もあります。一度きりの人生を他者に「決められる人生」や、無意識に「決まる人生」ではなく、自らの意思で「決める人生」を歩んでいくことが豊かな人生といえるのではないでしょうか。
より良い人生を生きるための「仮説思考」
人生を豊かにする方法は、あなたにとってそうなれる道を「間違えないようにしっかりと見極めて」歩んでいくことだと考えます。その為には、人生の選択肢の数々を最適なものに決定していかなければならないでしょう。
たくさんの情報を得ることで、広い視野で世界を捉えることはとても大切です。しかし、それらの情報に誘惑されても決して惑わされることなく、自分の人生にとってベストな道を見つけなければならないのです。
そこで、おすすめしたいのが「仮説を立てる」という習慣です。この道を選んだ場合、あの道を選んだ場合、その道を選んだ場合、その流れや結末はいったいどうなるのだろうか・・・と。現時点での情報収集や情報分析をベースにして、課題の全体像や流れを掴み、結論をイメージして導き出す思考法を『仮説思考』と呼びます。
ここで思い出してほしいのが前述したパラレルワールドの話です。もしも、異なる仮説を立てることによって変わってしまう世界を、これから実際に歩んでいくとしたならば、それぞれの自分の人生はどうなるのでしょうか。
もちろん選んだ道によって、各々のメリット・デメリットは生じるでしょうが、相対的に考えてどの道を進んでいくことがベストなのでしょうか。
その問いをこの『仮説思考』を利用することによって、解決に導いていただきたいです。実践するうちにイマジネーション力が向上し、未来の異なる自分の人生が、それぞれ明確に妄想できるようになることでしょう。
「仮説思考」はビジネスの成果を最大化させるカギにも
ビジネスの現場でも『仮説思考』は大いに役立ちます。あらかじめ可能な限りの完璧な答えを導きだしておこうと初期の段階で時間をかける『完璧思考』と対比して使われることも多いですが、目まぐるしく変化が激しい現代社会においては、実戦の中で仮説検証を通してブラッシュアップしていく『仮説思考』の方が、成果を最大化させるのに適しているでしょう。
「スピーディーな検証」と「間違った場合のスピーディーな軌道修正」を繰り返すことによって、問題解決や、望んだ結果を得ることを飛躍的に早くすることができます。
さらに、過去事象においての前提条件を元に仮説を導き出していく「アブダクション」を用いて、仮説を立てる力をトレーニングすることができれば、『仮説思考』の精度はより研ぎ澄まされ、実戦的なものとしていくことが可能です。
いま旬のロジカルシンキングなどの思考法に興味がある、向上心の高いビジネスパーソンには是非とも『仮説思考』にチャレンジしていただき、人生を豊かにすることやビジネスを発展させることに役立てていただけたら幸いです。
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※ 大坪伸氏が執筆の記事は以下からご覧ください。
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