さまざまな企業が導入を進めている「ストレスチェック制度」をご存知ですか?第二新卒の方は、色々な業務を任されるようになり、仕事や職場でのストレスや不安が多くなると思います。企業は、ストレスチェック制度を導入し、社員のメンタルを管理・改善する必要あります。ストレスチェック制度の一連の流れや、高ストレス結果が出た場合、社員はどのように向き合うべきかを紹介します。
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ストレスチェック制度とは
ストレスチェック制度とは、2015年の6月に厚生労働省から「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が創設され、同年12月に義務化されました。内容は、50人以上の従業員を抱える企業に対して、毎年最低1回ストレスチェックをするというものです。
それに伴い、労働者のストレスチェックの結果を医師などが把握し、メンタルヘルスに不調がある人に対して医師の面接指導を行ったり、事業者に対して、労働状況の改善などを促したりする制度となっています。
ストレスチェック制度の目的と労働者の3つのメリット
ストレスチェック制度の目的は、「労働者自身のメンタルヘルスを未然防止」「労働者自身のストレスへの気づきを与える」「職場環境の改善に繋げる」などが上げられます。
労働者がストレスを抱えながら仕事をしていると、心身の問題から仕事を誤ったり、やる気が下がるなど、悪循環に陥ってしまう場合があります。このような問題をなるべく早く発見し、より良い職場環境へ導くために、ストレスチェックを受けることが望ましいです。
①自身のメンタル状態を未然防止できる
ストレスチェックを行うことで、自らのストレスがどの程度高まっているか、どのような事柄が、ストレスの原因になっているか、などを把握することができます。
早期にメンタルヘルスの問題を発見することで、うつなどの症状を回避できる可能性があります。
②自身のストレスを客観視できる
初期段階やストレスが溜まっている状態でも、労働者自身がストレスに気づいていない場合も多くあります。しかし、ストレスチェックを受け、データが出ることにより、自身の心ストレス状態に客観的に気づくことができます。
③医師の面接指導を受けることで、業務改善に繋げることができる
医師からの適切なアドバイスを受けることで、自身のストレスを軽減するきっかけができます。
また、事業者へ自身のストレス度合いを伝えることで、職場環境の調整や改善に結びつきます。
ストレスチェック制度の全体の流れ
ストレスチェック制度の全体の流れはどのようになっているのでしょうか?
以下に、おおまかな流れを挙げて確認していきましょう。
1:ストレスチェックを実施する者は、事業者に指定された医師や特定の研修を修了した看護師などによって行われます。
2:ストレスチェック結果が出たら、医師などの実施者が直接その結果を本人に通知します。
3:ストレスチェック結果で、高ストレス反応が出ており、医師の面接指導が必要だと通知された対象者は、自らが希望すれば医師との面接をすることができます。
4: 医師への面接を労働者が事業者へ申し込めば、事業者はその旨を医師に伝え、面接指導の用意を整える必要があります。
5:医師は労働者へ心身の不調を詳しく尋ねたり、職場で悩んでいることに対して助言などを行います。
6:医師の面接を受けた労働者がどのようなことで、心身に不調をきたしているのかを、事業者は医師から聞く必要があります。
7:医師から聞いた情報や指導をもとに、事業者は労働者のストレスを軽減するために、仕事量や職場環境、就業時間などの改善を行います。
ストレスチェック制度はどのように実行される?
ストレスチェック制度の実行には、さまざまな用意や手順があります。しっかりとした取り組みがなされてこそ、より的確な結果や対策を導くことが可能となります。
①衛生委員会が調査審議する
まず、ストレスチェックを行うには、ストレスについて調査や審議をし、事業者に意見を述べる役割を担う「衛生委員会」を設置しなければなりません。衛生委員会のメンバーは、事業者が指名することになっています。
衛生委員会のメンバーに加わることができる人は、議長にあたる総括安全衛生管理者やそれに準ずる者を筆頭に、1名以上の衛生管理者と1名以上の産業医。事業所の労働者でありながら、衛生に関する経験を持つ者1名以上で編成されます。
また、ストレスチェックを実施する「時期」「頻度」「高いストレス反応の基準はどうするか」「面接指導希望者の問い合わせ窓口はどこにするのか」なども話し合います。
②労働者に対してストレスチェックをおこなう
衛生委員会が審議し、決定した方法でストレスチェックを労働者に対して行います。実施者は、ストレスに関して博識があり、衛生委員会から選任された「医師」「保健師」研修を受けた「看護師」などが担います。また使用するストレスチェックの調査票には、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域を含んでいることが望ましいです。
厚生労働省は「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を使用することを推奨しています。
③結果を直接本人に通知させる
労働者へのストレスチェックが終了したら、実施事務従事者によって、直接本人に通知されます。
ストレスチェックの結果は、本人の同意なしでは事業者に伝えることはできないという規定があります。
ストレスチェックの結果はどう利用されるの?
ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルスの状態を把握するだけではなく、高いストレス反応が出た場合、医師からのカウンセリングを受け、早期に不調の改善をする役割も担います。また、必要な場合は、労働環境を整えるなどの事業者への指導が行われます。
①ストレス結果が高い労働者は医師の指導を受ける
ストレスチェックの結果、ストレス反応が高い労働者がおり、労働者が医師への面接指導を希望した場合、事業者は希望に応える義務があります。面接指導を行う医師は、当該事業所の産業医などが担当し、面接者に対して医師は以下のような流れで面談を行います。
①現在の労働状況
医師は、対象の労働者に対して、労働時間や仕事内容などについて詳しく尋ねます。その他にも、人間関係によるストレスや無理のある業務体型であるかどうかなどを把握していきます。
②現在抱えている心理的ストレスの確認
ストレスチェックの結果から、うつ状態の傾向であるかを判断します。それと同時に、うつ病のスクリーニング検査や面接が行われることもあります。
③身体的問題や環境問題の把握など
心理的問題だけではなく、身体的問題や生活環境に問題がないかも確認していきます。その後、これらの面談内容を総合的に判断したうえで、労働者に対してストレス対処法の指導や専門機関への受診指導が行われます。
②事業者は医師から労働者の勤務改善が必要か確認する
該当の労働者に対して面接が行われた後、事業者はすみやかに担当医師に労働者の勤務改善や対策が必要かどうかの意見を求めなくてはなりません。そして、必要に応じて労働者の「仕事内容」や「配置転換」などを考慮し、就業しやすい措置を取ることが必要です。
③事業者は労働時間の短縮などが必要な場合は対応する
事業者は、医師からの意見を聞き、労働者へ適切な処置が必要と判断した場合は、「部署変更」や「労働時間の短縮」などの改善策を行ないます。
また、改善策は医師からの意見を聞いた、1カ月後を目安に遅延することなく実行します。適切な措置を行った後は、衛生委員会などへ報告する必要があります。
④事業者はストレスチェックの結果を5年間保存する
事業者は、医師から聞いた内容やストレス結果などを、5年間保存する必要があります。
ただし、労働者から保存する同意が得られていない場合は、「保存場所の指定」「保存期間」「セキュリティの強化」など適切な措置をおこなってから保存する必要があります。
また、ストレスチェックの結果の保存は、基本的に実施者が行うことが望ましいです。
⑤事業者は結果を集計し、集団・個人分析をおこなう
ストレスチェックの結果を、事業者は集計しなければなりませんが、その前に実施者がストレスチェックの結果に対して、集団分析と個人分析を行う必要があります。
その方法としては、以下のとおりです。
集団分析
集団分析は、基本的に職場や部署ごとを対象とした分析です。
集団分析を行う場合は、部署内での仕事のコントロールや仕事量の負担、上司や同僚が仕事に協力してくれているか、という項目に焦点を当てて集計をします。
また、他の企業のストレスチェック結果と比較して、ストレスの高低を把握することも可能です。
個人分析
個人分析は、集団分析とは異なり、ストレスチェックを受けた個人を対象とした分析です。ひとりひとりが、どのようなストレスを抱えているのかをチェックし、高いストレス反応を示した労働者を把握することが可能です。
ストレスチェック制度の注意点とは?
ストレスチェック制度の結果がどうであれ、事業者は労働者へ不利益な取り扱いを行うことは、「労働安全衛生法」によって禁止されています。
労働者への具体的な不利益の内容は下記になります。
- 1:労働者がストレスチェックを受けなかったことに対して不利益を行わない
- 2:労働者がストレスチェック結果の提供に同意しない場合に不利益を行わない
- 3:高ストレス結果の労働者が面接指導を断ったことに対して不利益を行わない
- 4:面接指導の結果から解雇や退職勧奨など不当な措置を行わない
- 5:事業者が医師の意見と著しく異なる措置を行ない、労働者を不利益な状態にしない
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まとめ
生産性や機能性を求められる職場が多い現代だからこそ、メンタルの不調が生じやすい状態になることもあります。ストレスチェック制度は、メンタルの不調を早期に発見し、必要な措置を講じることで、ストレスと上手に付き合いながら、職場の環境を改善していくことが期待されているのです。
労働者はこの制度を有効活用し、少しでも調子が悪い、職場の環境に疑問がある場合は、きちんと自分の状況を把握しましょう。そして、事業者に改善を求めるよう、伝えることも重要です。
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監修者プロフィール
工藤倫子
CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)
国家資格キャリアコンサルタント
産業カウンセラー
全米NLP協会認定プラクティショナー
1993年大手化粧品メーカー入社。営業全般にわたる経験と知識を習得。その後3年間の専業主婦期間を経て、キャリアカウンセラーとして2004年人材開発会社入社。
年間100校以上の学校で講演活動をするなど、若者の就職支援に携わる。
2010年キャリアカウンセラーとして独立。教育現場を対象としたキャリア教育事業を国内外で精力的に展開。キャリアカウンセラーの育成、企業や行政機関での講演・研修など業務は多岐にわたる。これまでの講演・セミナー受講者は5万人を超える。
2012年青森県総合計画審議会委員「教育・人づくり部門」就任。
電子書籍「何も持っていない」と思っているあなたへ出版。二児の母でもある。