みなさんは「適職」と聞いてどのような仕事を思い浮かべますか?自分に向いている仕事や、自分の強みが活かせる仕事などをイメージする方も多いかもしれません。しかし、実際は自分に向いている仕事が、必ずしも自分がやりたい仕事であるとは限らないでしょう。
自分にとっての適職とは一体どんな仕事なのか?適職を見つけるためにはどうしたらよいのか?――今回は「強み発掘コンサルタント」として数多くのビジネスパーソン向けにキャリア相談を行っている土谷 愛さんにお話をうかがいました。自分探しや今後のキャリアに悩みを抱えている方は、ぜひ最後までお読みください。
【プロフィール】土谷 愛
株式会社マイディアル代表取締役
1990年神奈川県生まれ。売上ビリの営業マン時代、ひょんなことから「自分の強み」を見つけて社内1位、最年少管理職に。広告業界で約600本の記事制作を担当し、多くの顧客や部下と接し「人の強みを見つける力」を磨く。
その後、大手IT企業などを経て、強み発掘コンサルタントとして独立。2021年、株式会社マイディアル設立、代表取締役に就任。
社会人が適職を見つけるための「自己分析」を始め、強みを活かす「転職」「副業」「起業」などキャリアをテーマに自社メディア・eラーニング講座を運営するほか、執筆・企業講演・講座開発・メディア出演等も精力的に行っている。著書に『自分だけの強みが遊ぶように見つかる 適職の地図』(かんき出版)、『自分を知る練習 人生から不安が消える魔法の自己分析』(青春出版社)、『特別なスキルがなくてもできる 月収+10万円 こっそり副業術』(日本能率協会マネジメントセンター)、『適職はどこにある?: 夢なしOLの「転職・休職・副業・起業」実践ストーリー』(大和出版)などがある。
1.「適職」とは「理想の人生をかなえるために必要な、納得感のある仕事」
――土谷さんは「適職」に関する書籍を複数執筆されています。まず、「適職」とはどのような仕事なのでしょうか?
「理想の人生をかなえる仕事」だと考えています。一般的に、「適職=自分に向いている仕事」といったイメージを持たれがちですが、自分に向いている仕事が、必ずしも自分がやりたい仕事であるとは言いきれないですよね。
私たちが仕事をする理由に目を向けてみてください。おそらく「こんな人生を送りたい」「こんな未来を手に入れたい」などの動機があり、仕事は"自分が欲しいもの"を得るための1つの手段であるはずです。ですから、「そのような理想の人生を歩むために必要だ」と自分で納得感を持てる仕事こそが適職だと言えるのではないでしょうか。
――なるほど。では、どうすれば「適職」を見つけることができるのでしょうか?
適職を見つけるうえで最も大切なのは「自己分析」です。「就職活動以来、自己分析なんてしたことがない」「転職活動のために自己分析をしなきゃ」といった社会人の方も多いかもしれません。私自身も自己分析に関する書籍をたくさん読んできましたが、就職活動や転職活動の"手段"として行う自己分析は、ときに理解しづらい内容だったり、形式的な自己分析で終わってしまい、自分の本音までは引き出せてはいない結果になりがちで、ともすると「自己分析=面倒なもの、難しいもの」というイメージを抱いてしまう可能性すら感じました。
でも本来、自己分析は楽しい作業なのです。自分はどういう人間なのか、何が好きなのか、どんな価値観を大切にしているかを知ることで、新しい発見が多々あるからです。一見するとネガティブに見える自分の一面も、見方を変えればポジティブになる。自分自身は何も変わっていないのに、とらえ方1つで「自分の色」が変わる感覚を味わえるのは、自己分析ならではです。ですから、「楽しいもの、ついやってしまうもの」というイメージで自己分析を進めることが、適職を見つけるための土台になるでしょう。
――「自己分析=楽しいもの」とポジティブにとらえることが大切なのですね。ちなみに、土谷さんがそのような考えに至ったのはなぜですか?
私自身の経験が影響しているかもしれません。というのも、私は大学卒業後の5年間で3社を経験し、最終的に独立をしました。会社員時代の5年間は本当にいろいろな葛藤(かっとう)がありました。営業としてまったく成果があがらなかったり、将来どうしたいのかが見えなかったり。独立をしたのも、実は会社員としての働き方が自分には向いていないのではないかと悩んだ末の選択でした。
特に明確な目標もなく独立してしまい、何を事業の柱にしていこうかと考えたときに、自分自身を深く分析する機会が訪れました。会社員時代に、一体自分は何に労力をかけてきたんだろうか。どんなことをして人に喜ばれてきたのだろうか、と思いをめぐらせた結果、「お客様や部下の話を聞いて、相手の良い部分を引き出す」強みがあることに気づいたのです。自分のなんてことのない特徴を「強み」としてとらえ直す作業をすると、それだけで自信につながる感覚があり、とても楽しかったんですよね。同時に、それが私にとって「理想の人生」をかなえる仕事だと思い、「強み発掘コンサルタント」としての活動を始めることにしました。
2.自己分析にポジティブなイメージを持ってほしい
――土谷さんの著書『自分だけの強みが遊ぶように見つかる 適職の地図』においても、自己分析の大切さや具体的な進め方に触れていらっしゃいますね。
そうですね。本書はゲーム形式で自己分析を進めていく構成になっており、7日間でゲームをクリアしていくと「適職」にたどり着く仕掛けが特徴です。先ほどのお話にもつながりますが、単なる就職活動や転職活動のノウハウやハウツーを紹介するのではなく、読者のみなさんに自己分析へのポジティブなイメージを持ってもらうことも目的としています。
――たしかに、デザインもカラフルで親しみがあり、すらすらと読める本だなと感じました。そして、ただ楽しいだけでなくストーリー性もあり、まさに「ゲーム」のような仕立てですよね。
はい。「人生ってゲームみたいだな」という感覚もどこかにあったので、そんな思いも込めています。昔の私のようにキャリアに悩む若手社会人の方々に、「自分を知るのは楽しいこと」「人生自体を遊ぶように楽しんでほしい」というメッセージを届けられればいいな、と。同時に、ベテラン社会人の方々にも、残りの人生やキャリアを意識するタイミングでぜひ本書を手に取っていただけたら嬉しいです。
――2025年1月に出版された『適職はどこにある? 夢なしOLの「転職・休職・副業・起業」実践ストーリー』も、「適職」をテーマとした書籍ですね。
そうですね。本書は『自分だけの強みが遊ぶように見つかる 適職の地図』の実践版のようなイメージで執筆をしました。前作がどちらかというとワークや理論が中心であったのに対し、近著では私自身がどんなふうに自己分析をしたのか、どのように転職や独立をしたのかといった具体的なエピソードを多数紹介しています。
特に『適職はどこにある? 夢なしOLの「転職・休職・副業・起業」実践ストーリー』では、リアルな葛藤や挫折、失敗談などを伝えたかったんです。理論が書かれたビジネス書はたくさんありますが、なかなかそのとおりに実践するのは難しい時があったり、必ずしも現実が本の通りに綺麗にうまくいかないケースもありますよね。私自身の人生を振り返っても、最初から綺麗に自己分析ができ、トントン拍子に転職や起業に成功したわけではなく、失敗してはやり直すことを繰り返していました。そういった「リアルな体験談」を等身大でお伝えすることで、同じような状況にある読者の方々に勇気を届けられたらいいですね。
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3.理想の未来から逆算し、実現に向けた手段を決める
――適職を見つけるためには、自己分析が大切だということがよく分かりました。具体的にはどのようなステップで進めていくとよいでしょうか?
はじめに自分自身が「どういう未来を目指したいか」「どんなスキルを身につけたいか」を考えてみることをお勧めします。何が適職か、どんな仕事をするかという目先の"手段"から考え始めるのではなく、理想の未来から逆算して手段を決めていくイメージです。
理想の未来は何でもかまいません。例えば、「●●がほしい」「●●に住みたい」といった物質的な欲求でもいいですし、「こういうライフスタイルを大切にしたい」「こういう人になれたらいいな」など精神的な欲求でもOKです。同じ人でも、年齢や置かれたフェーズによって価値観は変わります。ですから、そのときどきの「こうありたい」という理想を自由に見つけていくといいですね。
そして、理想の未来がある程度定まったら、今の仕事との「ギャップ」を考えてみてください。もし、今の仕事を続けることで理想の未来に近づけるなら、現在の仕事が1つの「適職」であるともいえます。一方で、今の仕事の延長線上に理想の未来がない場合は、転職や副業、起業、もしくは仕事以外の手段など、どういうルートに変更、または追加すれば理想の未来に近づけるかを考えていく必要があるでしょう。
――実際に「適職」を見つけた人にはどのような変化があったか、エピソードを教えていただけますか?
転職や副業など、より具体的な行動を起こしている方もいらっしゃれば、逆に今のお仕事に納得感を持って集中できるようになった方もいらっしゃいますね。以前私が相談を受けた方で、Webデザイナーの仕事をしていた会社員Aさんの例をご紹介します。Aさんは、同僚のデザイナーたちが次々に独立していく様子を見て、自分も独立を考えなくてはいけないのかなと悩んでいました。そこで、Aさんの人生において何を優先したいかを考えていただいたところ、自己実現や夢、収入などよりも「家族との安定した暮らしや時間」を重視されていることが分かりました。
その結果、独立して仕事中心の人生を送るよりも、自分には会社員としての働き方が合っていると納得し、Aさんは現職にとどまる選択をしました。傍(はた)から見るとAさんの状況は何も変わっていませんが、自分自身の仕事に納得感が高まると、"隣の芝生は青く見える"ようなことがなくなります。Aさん自身も、これでいいのかという迷いがなくなり、仕事と家族の時間に集中できるようになったそうです。その後は、仕事に対するモチベーションも高まり、以前から興味があったイラスト制作の副業もはじめたと聞いています。
――それは良かったですね!Aさんのように、現職を続けるべきか、または転職・独立すべきか悩んでいる方も多くいらっしゃると思います。そのような方にアドバイスはありますか?
悩みを感じる理由にもよりますが、やはり自分が目指す理想の未来を明確にすることが大切だと思います。特に数多くの情報が飛び交う現代においては、自分の本来の理想"ではないもの"を知らず知らずに追いかけている人も多いと感じます。例えば、転職が当たり前の風潮だから、自分も転職しておく必要があるのではといった焦りを感じるケースなどです。いわゆる「外からの刺激」に引っ張られて悩みや焦りを感じていることもあるため、本当に自分の中から湧き上がった理想の未来なのかを見極める必要がありますね。
4.世間体ではなく、自分を主役にキャリアを考える
――なかには「自分が本当にやりたいことが見つからない」と悩むビジネスパーソンの方もいます。
たしかにいらっしゃいますね。そのような方には、次の2つのうちどちらか合う方法を試してみてほしいと思います。1つが、繰り返しお伝えしているように「理想から逆算して考える」パターンです。どういう状態を目指したいかを考え、その実行手段を論理的に考えるイメージですね。より「安心感」や「納得感」を持ちたいと考える方にはこちらが向いていると思います。
もう1つが、今の「ワクワク」や「ときめき」を優先するパターンです。自分自身が何をしているときに楽しいのか、テンションが上がるのかを振り返り、興味のある事柄だけを洗い出してみる。そのうえで、自分が今この瞬間「やりたい」と思えることを素直にやっていけば、「やりたいことが見つからない」というモヤモヤは晴れるでしょう。そのために、自分のアンテナを磨くトレーニングを習慣化していくことをお勧めします。
――転職活動を進めるうえで、「自分の強みが見つからない」場合はどうしたらよいでしょうか?
まず、自分には必ず「強み」があるという前提に立つ必要があります。「自分には強みなんてあるはずがない」と思い込みすぎていると、なかなか見つからないものなんですよね。でも、強みというものは、見る角度や見る人によって変わります。私自身を例にとっても、実は自分が話すよりも、人の話を聞くほうが好きなんです。でも、自分は話すのが苦手だという部分にフォーカスしてしまうと、「弱み」が見つかるだけで終わってしまいます。そうではなく、その裏側で感じている「人の話を聞く楽しさ」や、「相談に乗ったら感謝された喜び」などに焦点を当ててみると、それが強みになりうるんです。自分にとって苦痛に感じないことや人に喜ばれたこと、ついやってしまうことなど、"ちょっとしたできていること"に目を向ける習慣を持つとよいのではないでしょうか。
転職活動では、応募先の企業が求める人材や、その求人の職種が求めるスキルを理解し、自分の特徴をどう活かせばそこにマッチするのか、といった点も大事です。「自分のスキルは活かせない」という思い込みは捨て、「自分の経験を転職先でも強みとして活かせるはず」という前提に立ち、自分の経験やスキルを見つめ直すと「自分の見え方」が少しずつ変わってくると思います。
――最後に、自身が納得できる転職活動を行うためのポイントを教えてください。
キャリアの主人公は自分だと考えることが大切です。世間的に良いキャリアだと認められるかどうかとか、周りの人が安心してくれるかなど、他者を主体に考えたキャリアには本当の意味で納得感が持てず、結局いつかは「このままでいいのだろうか」とモヤモヤにぶつかってしまいます。自己分析も企業選びも、常に自分が楽しく"ゲームをプレイ"できる状態を意識しながら、人生を遊ぶように楽しんでほしいですね。
(取材・執筆:金子 茉由/VALUE WORKS)
【書籍】自分だけの強みが遊ぶように見つかる 適職の地図
もし、
「欲しいだけのお金を稼げて、毎朝起きるのが楽しみなくらい
充実感とやりがいのある"あなたの適職"を教えます!」
と言われたら......あなたは知りたいですか?
この本は、
「自分の適職がわからない」
「やりたいことが見つからない」
「自分の強みって何だろう?」
と人生に迷っている人が、すべての問題を解決して、
迷わずに「適職」を手に入れるための「秘密の地図」です。
***
「やりたいこと」探しは、これで終わり!
「これからの人生、このままでいいのかな?」
「自分の強みってなんだろう」
「性格診断は当たっているけど、具体的にどう活かせばいいのかわからない」
「自己分析をしても、自分には大した強みがないと突き付けられただけ」
そんな「強み迷子」に陥っているみなさんに贈るのが、この『適職の地図』。
世の中には、強みとは「才能」や「大きな実績」であり、
一部の人だけが持っているものだと思い込んでいる人が多いようです。
でも、強みは「誰もが必ず持っているもの」。
誰でも書けるワークと問いに答えていくなかで、
自分の強みが見つかり、やりたいことが明確になり、
心からワクワクできる理想の未来を叶える方法がわかります。
ゲームをプレイするように気楽に楽しく、
自分の可能性を切り開いてみませんか?
(かんき出版書籍紹介より引用)
かんき出版刊
著者:土谷 愛
発行年月:2022年10月
定価:1,650円
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