テレワーク推進でみえてきた「ニューノーマル」とは

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5月25日に緊急事態宣言が解除されて2か月半以上が経った中でコロナ禍の働き方も変わってきているのではないでしょうか。

「今、月の半分はテレワークかな」「ウチはもう"通常勤務"だよ」といったような声も聞こえてきます。

ここでいう"通常勤務"とはコロナウイルス蔓延前に週5日間オフィスに勤務していたことを指しているのですが、緊急事態宣言解除後の現在では、月の半分がテレワーク、会社によっては原則すべてテレワークといったケースも少なくありません。

コロナ前と後で"通常"の定義が変わりつつあるのです。

テレワークを「やれない企業」と「やらない企業」

テレワークが進められない理由にセキュリティとコストの問題があります。

30名の従業員を雇用する田中さん(仮名)は、映像制作の事業を営んでいる経営者です。テレワークをさせるにあたりパソコンをひとり1台支給したうえで、さらに専用ソフトやセキュリティシステムを導入することを考えると、コストがかかりすぎてとても無理だと頭を抱えていました。

令和2年5月11日に発表された東京都のテレワーク導入率調査の結果でも30人から99人の小規模企業については、5割弱の企業がテレワークを導入していないといった統計も出ています。

テレワークの導入についてはコストの一部は助成金により補助されるものの、すべて一から始める場合、特に資金に余裕のない中小企業においてはやりたいけどやれないといった企業も少なくないようです。

また、業務の性質上、テレワークのできない業種もあります。

例えば「運輸・郵便業」「建設・製造業」「医療・福祉業」「小売業」といった現場を中心として行う業種や対人サービスを行う業種がこれにあたります。

これらの業種の中でも実際に現場に入って作業する仕事や接客を行う仕事ついてはテレワークを導入することができません。

ただし、同じ会社であってもバックオフィスなど現場に出ない職種であればテレワークが可能であるものの、できる仕事とできない仕事の不公平感が出てしまうといった事情もあり、テレワークを推進することができないといった企業も見受けられます。

やらない企業の理由としては「生産性が低下した」としてコロナ前のオフィス勤務に戻したケースがあります。

緊急事態宣言下ではやむを得ず、テレワークを導入したもの、WEB会議をしたら通信状況による音飛びやフリーズでうまくコミュニケーションが図れない。さらにはWEB会議中に子どもが泣き出す。家族が会議中の映ってしまい気になって集中できないなどオンラインならではのやむを得ない弊害もでてきています。

また、「これだけやったのにちゃんと評価してくれないの」「結果は結果だけどプロセスは見てくれないのか」など適切に評価されていないといった声も現場からは寄せられてきています。

オフィスで仕事ができなくなったことによりマネジメントをする側も仕事のプロセスが見えず、マネジメントが難しいという課題も出てきており、緊急事態宣言が解除されたタイミングでオフィス勤務に戻す企業もでてきています。

テレワークを推進している企業の特徴

テレワークが進んでいる企業であってもすべての業務をテレワークで行える企業ばかりではありません。

接客など必然的に対面が必要な業務や、機密性が高い業務、郵送物対応や「ハンコ」が必要なものなどペーパーレスにならない限りどうしても出社しなければならない事情があるわけです。

このような中でもテレワークを推進している企業にはどのような特徴があるのでしょうか。

都内に勤務する青木さん(仮名)の会社(出版業)では、会議は原則すべてWEB会議としつつも新しい企画を考えるような比較的抽象度の高い会議はオフィスに集まり対面で行うといったように会議の内容によって同僚とのちょっとした会話の中で発見があることや個々の意見がコラボすることにより新たな発想が生まれやすいといった理由で対面とWEBとを効率よく使い分けしているようです。

また、発想を生まれやすくするということからあえて社員同士が対面で雑談できるようにインフォーマルな場を設けているといったこともテレワークが推進された中で工夫された取組みといえるでしょう。

なお、機密性の高い書類は出社する日にまとめて事務処理を行うなどきちんと業務の切り分けをすることで効率よく在宅勤務ができるようになったといいます。

仕事内容をきちんと分析した上でテレワーク、オフィス勤務それぞれのメリットを最大限に活かせる使い方をしている特徴があるといえるでしょう。

テレワークのすすめ

テレワークの大きなメリットは「通勤がなくなった」ことではないでしょうか。

コロナ禍で推進されたことですので感染リスクが低くなるということを除外すると通勤がなくなることはかなりのメリットといえます。

私が知っている中でも片道2時間、往復4時間の通勤がなくなった人がいます。

「朝、ゆっくり読書をする時間ができた」「自己研鑽する時間ができた」など朝の時間を有効に使えるようになったといった声も聞き、満員電車に乗る必要もなく肉体的にも精神的にもまた時間の面でもゆとりを持てるようになったというメリットが出ています。

また、上にも書いた通り、「テレワークを推進せざるを得なかった事情により業務を切り分けられ効率があがった」ことや「在宅勤務をすることで同僚や上司からの"呼び出し"が減り業務に集中できるようになった」といった声も聞きます。

なお、子育て世帯では「保育園や学校からの呼び出しにも対応しやすくなった」介護者を抱える世帯でも「家族の世話がしやすくなった」「遅刻や早退をすることがなくなり助かった」といった声も上げられ、「会社をやめざるを得ない大きな要因がなくなった」ことは非常に大きなメリットといえるでしょう。

その他にも「体調が悪い時に休むまでいかず在宅勤務なら耐えられる」「宅配の荷物を受取りやすい」といったメリットも出ているようです。

緊急事態宣言が解除された現在、企業でテレワークを常態として取入れるかどうかは生産性がカギといえます。

生産性を考えるうえでの懸念事項として評価制度があげられます。

「評価は結果だけで一生懸命やったプロセスは全く評価してもらえないのか」など既存の評価制度がテレワークという働き方にマッチせず見直しが必要なケースもでてくるでしょう。

また、評価制度と関連して成果を見える化することも社員のモチベーションの観点から重要となってきます。

今までと違ってマネジメントする側からも仕事のプロセスが見えにくくなっていることから現在の仕事の状況を見える化、個々の目標を見える化、状況と目標の乖離を見える化して社員がどう努力すれば評価されるのかを明らかにしておくことで社員の納得度も高まりモチベーションアップにもつながっていくことでしょう。

このような取組みを会社、社員双方でチャレンジ&トライを繰り返すことにより生産性が上がっていけばその状態がそれぞれの企業のニューノーマルとなるでしょう。

執筆者プロフィール

土井 裕介(どい ゆうすけ)

特定社会保険労務士/大槻経営労務管理事務所所属
数名規模から数千人規模の事業規模、業種ともさまざまなクライアントを担当し、サテライト勤務や在宅勤務をはじめとしたテレワークを生かした働き方のアドバイスを得意とする。また、M&Aの案件も数多く担当し、クライアントのニーズに応えたサービスを提供する。

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