酔って楽しむのはもう古い? 「ソーバーキュリアス」で脱アルコールを楽しむ

ライフ・マネー

新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で、「オンライン飲み会」など、自宅でお酒を楽しむ人が増えています。その一方で、イギリスやアメリカのミレニアム世代を中心に、「飲めるけれども、あえて飲まない」派がトレンドになっているそうです。

「ソーバーキュリアス」や、「モクテル」という造語も誕生している、「脱アルコール」のムーブメントには、日本のメーカーや飲食店も注目し、さまざまな楽しみ方を提案しています。

イギリス・アメリカで始まった"脱アルコール"。飲まない派の増加は日本でも?

イギリスやアメリカの若者を中心に、トレンドになっているのが「ソーバーキュリアス」。「Sober(しらふ)」「Curious(ふりをする)」を組み合わせた造語で、「お酒は飲めるけれども、あえて飲まない選択をする」というスタンスを意味する言葉だそうです。数年前からこの「あえてお酒をのまない、ソーバーキュリアス」が、世界の若者の潮流になっているとのこと。

若者のアルコール離れは、日本も例外ではありません。厚生労働省が実施した「国民健康・栄養調査(2018年)」によると、「飲酒習慣」がある人は40代で25.4%に対して、20代では9.9%程度。そして、お酒を「ほとんど飲まない」「飲まない(飲めない)」「やめた」と答えた20代の割合は56.5%。日本の若者の半分以上は、ソーバーキュリアス的なライフスタイルを選択していると言えるでしょう。

●飲酒の頻度(20〜29歳)

(出所:平成29年国民健康・栄養調査(厚労省))

アルコールで酔うのはかっこわるい?

なぜ、若者世代は、"脱アルコール"を選ぶのでしょう? アメリカのアルコール中毒・薬物中毒のリハビリ支援団体、Mountainsideのサイトには、「健康的で生産的な生活したいと思う若者が、二日酔いのない生活を選択している」と書かれています。

デジタルネイティブなミレニアム世代は、健康に関する情報も豊富で、ヘルシーなイメージを重視する傾向にあります。

日本でも、「若い世代は飲みニュケーションを敬遠する」、といったことを耳にしますが、若者世代にとっては、お酒を飲んだあとの不快感、酔った際の失敗、健康面への悪い影響よりも、飲まずに健康でいるライフスタイルのほうが、よりクールであると支持されているのでしょう。

ノンアルコール市場は拡大傾向に

お酒を飲まないで楽しむ会「ゲコノミスト」の提唱者である、レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役社長の藤野英人さんは、著書「ゲコノミクス 巨大市場を開拓せよ!」(発行:日経BP 日本経済新聞出版本部)で「嫌いだから飲まないという真正の下戸以外に、体質の問題、育児、車の運転など、お酒を飲まない理由もさまざま。こうした下戸に注目したマーケット開発で、飲食業界は1〜2%程度は成長できる可能性がある」と述べています。

サントリーが実施した「ノンアルコール飲料に関する消費者飲用実態・意識調査 2018年リポート」を見ると、ビール市場の売り上げは減退しているのに対して、ノンアルコール飲料は市場が拡大していることがわかります。実際に、ノンアルコールドリンクを選ぶ人は増えてきているのです。

ノンアルコールドリンクの新しいアプローチ

「ソーバーキュリアス」の流れを受けて、ビールやチューハイといった、これまでのノンアルコールドリンクとは違う、新しいノンアルコールの楽しみ方も誕生しています。それが、イギリス発の「モクテル」。Mock(偽)とCocktail(カクテル)を組み合わせた新しいノンアルコールカクテルの呼び方で、ジュースやお茶などのソフトドリンクに、フルーツ、シロップ、割材などを組み合わせて作る、まさに「カクテル」のような複雑な味わいと、おしゃれさが特徴です。

飲料メーカーや飲食店も「モクテル」に注目。「コカ・コーラボトラーズジャパン」は、自社のサイト「モクテル、シッテル?」で、コカ・コーラ+ブルーベリーのシロップ+レモン、ウーロン茶+ジンジャーエール+レモンなど、初心者でも簡単に作れるおすすめの「モクテル」レシピを動画で紹介。イタリアンファミリーレストランの「サイゼリヤ」では、ドリンクバーで「モクテル」作りが楽しめるなど、「ソーバーキュリアス」に向けたさまざまなアプローチがうまれています。

(【出典】「モクテル、シッテル?」)

さらに、「日東紅茶」からは、紅茶をベースにしたノンアルコールのサングリア、ティープロデュースを手掛ける「ロイヤルブルーティージャパン」はワインボトルに入った高級茶など、ユニークな商品が登場しています。

ノンアルコールの波はバーにも。今年3月には、世界でも珍しいロー&ノンアルコール専門のバー「Low-Non-Bar(ロウ ノン バー)」(東京・日本橋)がオープン。

他にも、フルーツトマトのノンアルコールカクテルがテレビで話題になったショットバー「vitaminG(バーバイタミンジー)」(東京・銀座)、モクテルと美味しい料理が味わえるビストロ「Bistro&Bar After Taste(アフターテイスト)」(東京・新宿)など。「The SG Club(ザ エスジー クラブ」(東京・渋谷)では、昼から、モクテルやバリスタが淹れたコーヒーが楽しめます。

まとめ

「あえてアルコールを飲まない」ソーバーキュリアスというトレンド。筆者のようにお酒が大好きな人には、ピンとこないかもしれませんが、禁酒でも断酒でもない、「しらふ」でも楽しめる新しい選択肢として、今後も注目を集めそうです。

回遊舎(かいゆうしゃ)

回遊舎(かいゆうしゃ)

"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。
近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。

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