全国の空き家は約850戸、過去20年で5割も増えており、深刻な問題となっています。そこで今、空き家を利用した再生ビジネスに注目が集まっています。働き方や生活スタイルが多様化した今、使い道のない空き家も、アイデア次第で商機が生まれる可能性が。大手企業もスタートアップとの連携や空き家に悩む自治体への働きかけも始めています。
増え続ける空き家の現状
人口減少や少子高齢化などの社会の変化に伴って、空き家は年々増え続けています。総務省統計局が行った「住宅・土地統計調査」(平成25年)では、全国の空き家率は 13.5%、空き家総数は約820万戸となっています。
放置されている空き家の大半のケースでは、相続の過程で空き家が生まれてしまい、居住地から遠いために適切に処理できなかったり、解体費用が高く取り壊しが難しかったりと、様々な理由で住居が使われないまま残されてしまっています。
空き家は防災・防犯の観点で問題があったり、周辺の衛生環境が悪化したりしてしまうため、トラブルを生むケースもあります。こうなってしまうと資産価値も落ちてしまって、譲渡もできずに余計にもてあましてしまうことになります。
(空き家の数は年々増え続けている)
クラウドワーカー向けオフィスやアトリエとして再利用
しかし、お金をかけて住居を解体したとしても、住宅用地に該当しなくなるため固定資産税の負担が3〜6倍に増えます。かつ、住居を放っておくと「特定空家等」に認定されてしまい、固定資産税の負担が増えるうえに行政措置が取られてしまう場合があるのです。最近では、こうした手に余る空き家を活用するために、様々な手法がとられています。
例えば、空き家をリノベーションして貸し出すケースがあります。仕事をするのに十分なインフラやオフィス環境を整えて提供したり、広いスペースを確保してシェアアトリエとして提供したりと、内容は様々。空き家の広さや間取りに応じて適した活用の仕方があります。最近では、クラウドワーカーなど働き方も多様化していて、ニーズのある利用者を見つけられれば空き家を活用できるのです。
空き家が盛り上がれば、地域が活性化したり新たなランドマークとなったりと、所有者だけでなく周囲の環境を引き上げることもできます。「人が住む」ということに囚われず、貸し出すなどしてうまく運用できれば収益も得られます。ただ税金を支払うだけでなく、こうした活用ができるとより良いでしょう。
ネット企業や住宅メーカーも空き家再生に乗り出す
空き家再生を支援する「ADDress(アドレス)」は、空き家を活用した住宅のサブスクリプションサービスを展開しています。ADDressが日本各地で運営する家に月額4万円で住めるサービスで、都市と地方の両方に拠点が欲しいユーザーや、リモートワークをしたいユーザーをうまく取り入れています。各家には家守と呼ばれる管理者が担当につき、情報提供や地域交流を取り仕切ってくれます。別荘のように利用したり、オフィスとして利用したりと、ユーザーによって様々な活用方法が考えられるでしょう。
不動産情報サイト運営のライフルは「空き家バンク」というサイトを運営。約570の自治体と連携し、自治体が持っている空き家情報をサイトに登録することで、空き家活用を促進しています。間取りや土地面積と価格、立地条件など詳細を知ることができるほか、「農地付きの空き家」「店舗付きの空き家」など探したい空き家の条件に合わせて候補を表示することもできます。
まとめ
実家の一軒家が空き家になってしまっている...何かに使えれば、とは思うけれど今一つ使い道が見つからないと思っている人も多いのではないでしょうか。活用方法に困ったら、これらの事例を参考にしてみるのも良いかもしれません。家の状態や立地によっては、有効な再生案が見つかるかもしれません。
プロフィール
回遊舎(かいゆうしゃ)
"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。
近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。