説明できる?<br> コンプライアンスの意味と本来の役割

説明できる?<br> コンプライアンスの意味と本来の役割

昨今、企業だけでなく、政治家や芸能人などの有名人による言動がコンプライアンスに反していると非難される、ペナルティを課されるなどの事例が急増しています。耳にする機会の多い「コンプライアンス」という言葉、正しく説明することができますか? (Misa)

コンプライアンスとは何か

一般的に「コンプライアンス」は、日本語では「法令遵守」の意味として使用されています。つまり「法令を守る」ことと捉えられますが、実際には法律として明文化されていない「社会的な規範」と認識されているルールまで、遵守の対象とされます。「法律に書かれていることさえ守ればよい」ということではなく、社会的責任を果たすことまで含まれているのです。

コンプライアンスが重視されるようになったのは、2000年以降です。1980年代から企業活動の規制緩和が進み、自由な競争が行われるようになりました。その後、国内外で不正隠しや偽装、粉飾決算による倒産などといった企業の不祥事が相次いで起こりました。そのため、2000年に政府による行政改革大綱で、「企業の自己責任体制」が打ち出され、各企業の自己責任体制の確立と徹底的な情報公開が要求されるようになったのです。

さらに、2002年にアメリカで監査の独立性や情報開示の強化などを規定した企業改革法(SOX法)が制定され、日本でも2006年に「J-SOX法(日本版SOX法)」が制定されました。この法令が企業における内部統制のルールとなり、コンプライアンスを企業経営に取り入れる考え方が本格的に定着しました。

コンプライアンスとCSR(企業の社会的責任)

法令とならんで企業が求められる「企業の社会的責任」は、CSR(Corporate Social Responsibility)と呼ばれます。CSRは株主、取引先、従業員、地域住民など、企業が関係する利害関係者すべてが対象となり、企業はそれらに対して社会的なルールを守ることが求められます。その範囲は人権や労働環境はもちろん、社会道徳などの法令以外のものも含まれます。最近では、CSRの基準としてSDGs(持続可能な開発目標)を掲げる企業も増えています。

たとえば、企業内でセクハラ、パワハラなどが起きた場合、法令に違反していない範囲であったとしても、CSRが遵守されていないと考えられる可能性があります。

企業活動や企業が発信するメッセージ(広告、情報開示など)に対する反響が、SNSなどで過熱するケースが増え、企業倫理に対する社会の視線は厳しくなっているといえるでしょう。その一方で、誠実な姿勢や対応が評価され、企業のブランドイメージが急上昇するといったケースもあります。

コンプライアンス経営とは

コンプライアンス違反は、法令による罰則以上に企業のイメージや事業に深刻なダメージをもたらし、企業活動の大きなリスクとなります。そのため、コンプライアンスを経営の根幹と捉えるコンプライアンス経営においては、コーポレートガバナンスや内部統制といったチェックを行うしくみを整えることが必須となります。

コンプライアンス経営ではリスクを避けるだけでなく、法令や社会的責任に対して公正な企業活動を継続することで企業のブランド力を維持し、健全で安定した企業経営へとつなげていくことや、自社の経営理念やSDGsなども含めたさまざまな理念を、理想として掲げて追求していくことも大切であるといえます。

原稿:Misa
ITベンチャーで企画、人材開発、広報などを経て独立。現在はコンサルタント、ときどきライター。ライターとしては、IT系以外、アニメ・マンガ、車から美容・健康まで何でもチャレンジ中。

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