スマホで確定申告が飛躍的に進化!<br>2019年度分からは副業も対象に

スマホで確定申告が飛躍的に進化!<br>2019年度分からは副業も対象に

12月に入り、2019年もそろそろ終わりを迎えようとしています。この時期になると思い出すのが確定申告です。領収書や必要書類を揃えるなど、何かと手続きが面倒な確定申告ですが、2018年度分からはスマートフォンで確定申告ができるようになりました。2018年度分は利用できるケースがとても限定的だったため、スマホから確定申告ができない人が多くいましたが、2019年度分では対象が広がります。どのようなケースがスマホからの電子申告の対象になるのか、調べてみました。

スマホによる確定申告の対象者はかなり限定的だった

これまでも、確定申告にはインターネット上から電子申告ができる「e-Tax」というシステムがありました。そのe-Taxで、2018年度分の申告から新たにスマートフォンで必要事項の入力から電子申告までが完結できるようになりました。

ただし、スマホから電子申告ができるのは年末調整済みの会社員だけで、さらに申告できるのは医療費控除と寄付金控除だけとかなり限定的でした。会社員でも、給与所得を2ヶ所以上から受け取っている、会社で年末調整を受けていない、医療費控除や寄附金控除以外に申請する控除があるなどのケースは対象外でした。つまり、副業などをしていない会社員が会社で年末調整を済ませたうえで、医療費控除やふるさと納税の手続きを行う場合のみスマホから確定申告ができたというわけです。

2019年度分は対象が拡大し、スマホ申告が大きく進化

2018年度分は対象がかなり限定的だったスマホでの確定申告ですが、2019年度分からは申告できる対象が拡大されます。

(スマホ専用画面のイメージ。開発中のため、実際の画面とは異なる場合がある)

所得の種類は、給与所得のほか、公的年金等、雑所得、一時所得も対象となります。これにより、自営業者やフリーランス、年金受給者などあらゆる職業の人がスマホひとつで確定申告を済ませられる可能性が広がります。また、2ヶ所以上から給与所得を受け取っている会社員や、副業で雑所得などがある会社員のケースでも、スマホで確定申告ができるようになります。

所得控除に関しても、医療費控除と寄附金控除だけではなく、全ての所得控除が申請できるようになります。例えば、会社で年末調整をする際に、生命保険料控除の手続きを忘れてしまったなどの場合にもスマホから確定申告ができることになります。

スマホ専用画面の利用対象者等





項目2018年度分2019年度分
収入 給与所得(年末調整済1ヵ所) 給与所得(年末調整済1ヵ所、年末調整未済、2ヵ所以上に対応)、公的年金等、その他雑所得、一時所得
所得控除 医療費控除、寄附金控除 全ての所得控除
税額控除 政党等寄附金等特別控除 政党等寄附金等特別控除、災害減免額
その他 予定納税額、本年分で差し引く繰越損失額、財産債務調書(案内のみ)
  • (※1 上記の場合も申告内容によってはパソコンと同様の画面での操作となる場合がある)
  • (※2 上記以外の場合もパソコンと同様の画面でスマートフォンでの申告書作成は可能)
  • (※3 2020年1月6日からサービス開始予定)

(出所)国税庁HPより一部改変

ただし、節税効果の高い住宅ローン控除については、所得控除ではなく税額控除であり、スマホから申告できる項目には含まれないので注意が必要です。

2種類ある申請方式も、どちらか選べるようになる

e-Taxの申請方式には「ID・パスワード方式」と「マイナンバーカード方式」の2種類あり、2018年度分のスマホによる確定申告では、このうちのID・パスワード方式しか選べませんでした。

ID・パスワード方式を利用する場合、事前手続きとして、税務署に出向いてID・パスワードを入手する必要があります。本人確認ができる運転免許証などを持って自宅や職場近くの税務署に行き、IDと暗証番号(パスワード)が書かれた「ID・パスワード方式の届出完了通知」を発行してもらう必要があります。手続き自体は簡単で、いずれの税務署でも発行できるのですが、税務署に出向くという手間がかかります。

それが、2019年度からは、スマホによる確定申告でも「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」のいずれかが選択できるようになります。

マイナンバーカード方式を利用する場合に必要となるのは、マイナンバーカードと、カードの情報を読み取るためのICカードリーダーです。

スマホだけで確定申告をする場合には、スマホ本体にICカードリーダーの機能が搭載されている機種でないと電子申告ができません。これまで、スマホをICカードリーダーとして利用する場合には、対応機種がAndroidスマホのGalaxy、AQUOS、Xperiaといった一部機種に限定されていましたが、2019年度分からはiPhoneも利用できるようになります。具体的には、iOS 13.1以上がインストールされたiPhone 7以降の機種です。

政府としてはID・パスワード方式を、マイナンバーカードが普及するまでの暫定的な措置としており、いずれID・パスワード方式は利用できなくなる可能性があります。スマホでマイナンバー方式が利用できるようになるこの機会に、まだマイナンバーカードを取得していないという方はカード発行の手続きをしてみてはいかがでしょうか。

2019年度分の確定申告は、スマホから手軽に済ませよう

2019年度分のスマホによる電子申告は、対象の拡大に加え、申請方式も選べるようになるため、利便性の向上が期待されます。

サービスの開始は、ID・パスワード方式が2020年1月6日、マイナンバーカード方式が同年1月31日を予定しています。ここで紹介した対象者や様式などは変更となる可能性があるので、国税庁のホームページや確定申告の時期が近づくと公開される確定申告書等作成コーナーなどで最新情報を確認して、スマホでの確定申告にトライしてください。

参考:国税庁HP「スマートフォン × マイナンバーカードでe-Tax!進化するスマート申告!」

プロフィール

回遊舎(かいゆうしゃ)

"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。
近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。

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