田中圭さんのブレイクの秘密は、<br>「今の環境に自身を合わせ、求められる仕事に取り組む」<br>適応力

田中圭さんのブレイクの秘密は、<br>「今の環境に自身を合わせ、求められる仕事に取り組む」<br>適応力

『おっさんずラブ -in the sky-』も好調、「これはこれで最高」と称賛の声

2019年も残すところあと一ヵ月あまり。今年は亥年でしたね。

その亥年らしく「猪突猛進」でこの一年を走り続けたと言える芸能人は数多くいらっしゃいますが、その中の一人として挙げられるのは、やはり田中圭さんなのではないでしょうか。
昨年に放映されて一躍人気ドラマとなった「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)は、年が明けた1月2日の朝から全部一挙放送され、話題沸騰のスタートを切り、4月からは原田知世さんとのダブル主演で注目された「あなたの番です」(日本テレビ系)が、異例の2クール放送(半年ドラマ)として、視聴率も評価も後半になるにつれて上昇していきました。

そして、8月に公開された主演映画「劇場版 おっさんずラブ~LOVE or DEAD~」が、観客動員数186万8869人、興行収入が25億円を突破し、今夏の話題作となりました。現在放送中の『おっさんずラブ -in the sky-』(テレビ朝日系)も好調です。

今回のドラマは、これまでのキャストや設定の変更があり、始まる前は不安視する声も少なくなかったのですが、実際に11月にドラマがスタートすると、ネットでは、「これはこれで最高」「新たなキャラがいい」といった称賛の声があがっていました。

田中さんが演じる主人公のCA、春田創一のキャラクターは相変わらずで、まっすぐで不器用で情に厚く、少しおバカさんです。

「どちらかといえばいじられキャラだが、格好いい芝居をすると相当に格好いい」

今秋に公開された映画「記憶にございません」でも、田中さんはまっすぐでちょっとおバカな警官役を演じていました。この役柄を演じた田中さんについて三谷幸喜監督は、「当初は冒頭だけの登場のはずだったが、熱いけど不満だらけのこの警官、田中さんが演じることを前提に考えたら、もっと活躍させたくなってきた。そこで後半、再登場させることに」とブログの中で語っています。

また、昨年に三谷監督が作・演出した舞台「江戸は燃えているか」で田中さんを初起用した際、

「骨太な中に、ほど良くブレンドされたチャラさ。それが第一印象。一見、格好いいのか、よくないのか、よく分からない人で、稽古場でもどちらかといえば、いじられキャラ。ところが、格好いい芝居をすると、相当に格好いいので、やっぱり格好いいのだろう。前日のお酒がたたって、ぱんぱんにむくんだ顔で、皆の前に現れたことがあった。さんざん共演者にいじられた揚げ句、稽古が終わる頃には見違えるようにすっきりし、涼しい二枚目顔で帰って行った田中圭。つまりはそんな人だ」

と田中さんの魅力について綴っています。

確かに、田中さんは正統派からコメディタッチのダメ男に至るまで、枠にはまることなくその役柄になりきり、その都度、役(仕事)と向き合う力を発揮させてきています。

なので、観ている私たちは、田中さんはカッコいいのかそうでないのかよくわからなくなってしまう...。ただそういったもの全てが仕事人・田中圭そのものの魅力になっているのではないでしょうか。

9年前に、「僕には僕なりの進み方があると思う」

実は今から9年前、田中さんが25歳の頃に単独インタビューさせていただいたことがあり、仕事と向き合う姿勢について、次のように語って下さっていました。

「今後どのような俳優さんを目指していきたいか」という質問に対し、当時から仲の良かった小栗旬さんの名前を出して次のように答えています。

「(すでにドラマや映画に主演している)旬君の活躍には背中を押されます。友達の活躍に励まされながらも、僕には僕なりの進み方があると思うので、今、与えられた役、仕事に向き合っていくことが一番で、自分はこうでなくちゃとか決めずに目の前にあることに真剣に向き合っていきたいです。そうするなかで自分の俳優としての存在価値も高まってくると思います」。

若手俳優として正統派の道を進みそうであった当時の田中さんにしてみれば、9年後に「おっさんずラブ」のような時代が求める異例のドラマで人気を得るとは思いもしなかったことでしょう。

自分が置かれた場所で、求められている仕事に取り組む

ですが、今の田中さんは確実に独自性を築き上げました。

自分が置かれた場所で、今の環境に自身を上手に合わせ、求められている仕事に取り組むというこの姿勢は、一般の若手ビジネスパーソンにも必要なことなのではないでしょうか。
仮に、皆さんが今、取り組んでいる仕事に対してやりがいを感じられなくとも、その場に必要な自身の役割は何かを考え、上手に適応する力を身に付けておけば、いつか自分が打ち込みたい仕事と出合えた時に、その適応力が必ずや発揮されることと思います。

田中さんもその場に合わせた花を咲かせる作業の継続が、大輪の花を咲かせるまでに至ったように感じます。

今年、猪突猛進した田中圭さんですが、来年は「子は繁栄」と言われる子年ですので、さらにどのように進化し、私たちを楽しませてくれるのか...今から期待も膨らみますね。

プロフィール

鈴木ともみ

経済キャスター・MC。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所 招聘研究員。
ファイナンシャル・プランナー、日本記者クラブ会員記者、多様性キャリア研究所副所長
和洋サウンドシアターユニット『未来香音』(津軽三味線・清水まなみ、ピアノ・斎藤タカヤ、パーカッション・宮本仁、語り部・平山八重、ストーリーテラー・鈴木ともみ)として、ラジオやライブで活動中。
ラジオドラマにおけるデビュー作が「日本民間放送連盟賞」エンターテインメント部門出品作品となる。
来日する各国大統領や首相、閣僚、ハリウッドスター等を含む取材・インタビューは3000人を超える。
キャスターとしてTV、ラジオ、各種シンポジウムへの出演の他、雑誌やニュースサイトにてコラムを連載中。
主な著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。

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